artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

アート&テクノロジー展 高橋匡太/疋田淳喜/吉岡俊直

会期:2009/10/23~2009/12/04

京都工芸繊維大学美術工芸資料館[京都府]

普段は建築やデザインの企画が多い京都工芸繊維大学美術工芸資料館で、珍しくアートの展覧会が登場。光を自在に操る作品で知られる高橋匡太と、マッドサイエンティスト風の世界観が持ち味で、少年少女科学クラブの活動でも知られる疋田淳喜、そして近年はCGを活用した映像や立体を制作している吉岡俊直という、理系心を刺激する(?)3作家が選ばれている。本展のもう一つの注目点は、キュレーターが平芳幸浩(元・国立国際美術館)だということ。彼が同大学に移籍して約1年半。ようやくお目見えする企画なのだから、期待も高まろうというものだ。

2009/09/20(日)(小吹隆文)

神戸ビエンナーレ2009

会期:2009/10/03~2009/11/23

メリケンパーク、神戸港会場、兵庫県立美術館、三宮・元町商店街[兵庫県]

2007年に第1回が開催された神戸ビエンナーレ。その売りは、貨物コンテナを大量に持ち込んで展示会場に流用するという、港町・神戸を意識したプランだった。しかし、引きが取れず照明設備が劣るコンテナでは、インスタレーションや映像ならともかく、絵画や立体をまともに見ることは難しい。そうした設備面での悪条件と、さまざまなレベルの作品が混在した配置もあって、多くの課題を残す結果となった。今秋の第2回では、招待作家を兵庫県立美術館に集中させ、主会場のメリケンパークと連絡船で結ぶ方式を採用。さらに海上でも作品展示を行ない、スケールとグレードの向上を図っている。メリケンパーク会場で昨年同様コンテナが用いられるのは、筆者としては残念。しかし、兵庫県立美術館と海上で質の高い展示が行なわれるなら、前回以上の成果が期待できる。また、街中の三宮・元町商店街と美大生・専門学生による共同企画も予定されており、地元との密着が強く意識されている点にも好感が持てる。主催者の構想が額面通りに機能して、見応えのある催しになることを期待する。

2009/09/20(日)(小吹隆文)

水内義人 展

会期:2009/08/18~2009/09/19

複眼ギャラリー[大阪府]

薄暗い会場は足の踏み場もない部屋のように、さまざまなモノで溢れている。モーターが作動すると、シートの下に仕込まれた巨大な風船が膨らみ床が盛り上がる。定期的にスイッチが入って騒々しくAMラジオの放送が流れ出し、おもりが上下して、栽培されているネギに水がかけられたり時計が動き出したりする。ギャラリーのオーナー村田さんが「汚いピタゴラスイッチみたいだ」と言っていたがまさにそんな印象。私が初めて見た水内の個展は2年前。当然かもしれないが、空間全体をつかった作品はその時よりもうんとパワーアップしている。汚い見た目と面白さも抜群だが、なぜかそれがチャーミングで今回も笑いっぱなしだった。

2009/09/19(土)(酒井千穂)

UNEASINESS IX

会期:2009/09/14~2009/09/19

信濃橋画廊、信濃橋画廊5[大阪府]

芦谷正人、岩澤有徑、大澤辰男の3名のアーティストによって2001年から継続して開催されているというグループ展。今回はゲストとして西村郁子が出品していた。西村はこれまで、わざとシミのように染めを施した布や、細かい模様をシルクスクリーンプリントした布を用いたインスタレーション作品や版画を発表してきた。今展では、シルクスクリーンのレース模様が重なる写真作品や、紫色のヴェルヴェット生地を使った平面作品を発表。葛藤、戸惑い、後悔、もどかしさなど、言葉ではなかなか伝わりづらい心の襞のような、繊細な感情や感覚を表現するその作品は、ネガティヴな思いもまるごと包み込む柔らかな印象がありいつもどこかホッとさせられる。本展の作品もまた一見スマートなのだが、かといってクールではない。心地よい温度を感じるところが魅力的だ(写真は同展会場風景)。

2009/09/19(土)(酒井千穂)

サンテリ・トゥオリ展「命のすみか──森、赤いシャツ、東京」

会期:2009/09/09~2009/09/27

スパイラル[東京都]

森を写したスチル写真に動画を重ねて見せたり、幼児が服を着る動作を延々と映したり。こういう作品を好きになれないのは、森とか幼児とかだれも文句を言えない素材に頼るだけで中身がなく、思わせぶりでウザイからだ。時間のムダ。

2009/09/19(土)(村田真)