artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

聴竹居との出会い 栗本夏樹 漆芸展

会期:2009/05/22~2009/05/31

聴竹居[京都府]

聴竹居とは、建築家の藤井厚二が昭和3(1928)年に京都府大山崎町に建てた自宅兼実験住宅。西洋のモダニズムと日本の伝統が絶妙に調和したデザインで評価が高く、近年は通風と採光に対する工夫からエコ建築の先駆としても注目されている。この建築遺産を舞台に、漆芸家の栗本夏樹が個展(というより建築とのコラボ展)を開催した。作品は、客室、居間、読書室、寝室、縁側等に配置されたが、出色だったのは縁側の隅に置かれた2点の作品。竹の根を素材にしたオブジェで、まるで最初からそこに置かれていたかのように空間と馴染んでいた。作家が声高に個性を主張するのではなく、空間に寄り添うことで、むしろ互いの魅力が際立ったのだ。そこには理想的なコラボレーションの姿が凛として感じられた。

2009/05/27(水)(小吹隆文)

山本太郎 展~ニッポン画物見遊山~

会期:2009/05/22~2009/06/14

美術館「えき」KYOTO[京都府]

日本画ならぬ“ニッポン画”を提唱し、伝統的画題と現代の風俗がハイブリッドした独自の絵画世界を創造する山本太郎が、30代にして活動10周年を記念した回顧展を開催。といっても大上段に構えたものではなく、「歌手がベストアルバムを出すような感覚」(本人談)らしい。とはいえ、過去の代表作が一堂に会した現場を見て、思う所が幾つかあった。まず画題の変化。パロディ色が前面に出た初期作品に対し、近年の作品では謡曲に題材を取るなど、作風に渋みが増している。次に技量。私が言うのも僭越だが、新旧作品を見比べると明らかに腕前が向上している。そしてホスピタリティ。残念ながら私は見られなかったが、会期中に数々のイベントが催され、何度も自身の言葉で作品が説明された。山本は以前から、芸術家ではなく“絵師”として生きることを意識的に選択した旨語っていたが、本展により初めてその言葉をリアルに受け止められた。百貨店の美術館という微妙なロケーションも、彼にとっては格好の場と言うべきである。

2009/05/26(火)(小吹隆文)

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放課後の展覧会

会期:2009/05/23~2009/05/31

元立誠小学校[京都府]

キュレーター主導によるものではなく、アーティストが主体となって企画・運営された展覧会。元小学校の校舎という会場の特性を踏まえ、発起人である作家の木内貴志が声をかけた11名の参加作家が放課後をテーマに作品を展示した。初日のオープニングイベントをはじめ、会期中にはほぼ毎日「放課後居残り補習授業」と題した出品作家による日替わりのワークショップやトークショーなども開催。作家たちが集って運営開催する展覧会というと、内輪のノリになりやすかったり、そうでなければ、それぞれの作家のモチベーションやその温度差が目についてしまうものもあるのだが、今展は総じて充実した内容で、各々の努力の成果がうかがえるものだった。図書室で本によるインスタレーションを発表していた宮永甲太郎をはじめ、森田麻祐子、木藤純子、笹倉洋平らの作品は特に、学校空間や放課後というイメージとともに、嗅覚や視覚、聴覚などの身体的な記憶も遡らせていく。夕暮れ時に訪れたのは良かった。
放課後の展覧会:http://houkagoten.org/

2009/05/24(日)、2009/05/27(水)(酒井千穂)

栗田咲子「インストール」

会期:2009/05/19~2009/06/07

ギャラリーモーニング[京都府]

オープンしたばかりのギャラリーモーニングで栗田咲子の個展。展示された新作は3点だが、《川中鳥の朝ごはん》など、あいかわらず言葉遊びのような微妙なタイトルが想像を掻き立てて、絵とともに記憶に焼きついてしまうインパクト。会場の外から見ることができる初期の作品はオーナーのコレクションだった。展示点数は少ないが、ドローイング作品を含め、旧作から最新作まで栗田の作品世界をちょっとずつ楽しめる個展だった。

2009/05/24(日)(酒井千穂)

After School:放課後の展覧会

会期:2009/05/23~2009/05/31

元立誠小学校[京都府]

1+1が2でなく5や10になるのがグループ展の魅力だとすれば、本展はまさにそれを地で行く展覧会だった。言いだしっぺの木内貴志以下11人の美術家が、元小学校の教室や講堂などをひとり一部屋ずつ使ってハイパフォーマンスを披露。なかでも碓井ゆい、木藤純子、宮永甲太郎の作品は非常に見応えがあったことを強調しておきたい。キュレーター主導の企画展ではなく、意識の高いアーティストが集えばそれだけで質の高い展覧会ができるはず。本展にはそんな隠れテーマもあったのだが、彼らは見事にそれを実証した。

2009/05/23(土)(小吹隆文)