artscapeレビュー

大舩真言「Principle」

2009年03月15日号

会期:2009.2.17~2009.3.1

neutron[京都府]

東京に続く京都での個展。偶然、友人が展示の記録撮影をしていたところに訪れた。入口から向かって正面の壁面に1点の絵画作品、左の壁面から飛び出るように設置された大きな半円形の作品が1点、そして高い位置に小作品が3点。会場は薄暗く、岩絵具独特の色合いの平面作品が闇のように深く沈んで見える。じっくりよく見ようと近づいたり離れてみたりしているうちに、見ている側の自分が、空間のなかで客体化していくような感覚を意識させられる。美しくて、極めて静謐な印象なのだが、それとは裏腹に、見つめているとなぜか胸騒ぎのように気持ちが動かされる。大舩の作品は見ているうちに印象やイメージがどんどん変化していくのだ。それに気持ちが共振するんだろうか。意外と落ち着かない、という不思議な魅力に満ちた作品だ。撮影をしていた友人に、撮るのが難しそうだと言ったら「でも大舩さんの作品を撮る時は三脚は立てないんですよ。空気が濁るから」という答えが返ってきた。それもよく解る。

2009/02/26(木)(酒井千穂)

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