artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
レインボー喜寿 靉嘔 ~版画作品を中心に~

会期:1/6~2/11
三鷹市美術ギャラリー[東京都]
なんでもかんでもレインボーカラーに還元してしまう作風で知られる靉嘔の回顧展。とにかく何を見てもすべて虹色なので、色だけ見ていても面白くもなんともない。なんとかして楽しむためにも、見る者はおのずとそこに線とかたちの痕跡を見出し、何が描かれているのか、思いを巡らすことになる。結局、人は線とかたちと色の要素からは逃れられないのではないかと思っていたら、最後の最後でモノクロームの作品が登場して、びっくりした。
2009/01/12(月)(福住廉)
TARO賞の作家I

会期:10/11~1/12
川崎市岡本太郎美術館[神奈川県]
岡本太郎現代芸術賞、通称TARO賞の歴代受賞者のなかから、今井紀彰、えぐちりか、開発好明、風間サチコ、棚田康司、横井山泰の6名による新作を発表する展覧会。ここでも飛びぬけていたのは、開発好明。発泡スチロールと蛍光灯を組み合わせたインスタレーション、洗濯機のなかに植物を植え込んだ作品、さらにはコカコーラやお茶、そしてネクターなどの飲料を口に含んですぐ吐き出す映像作品などを見せた。
2009/01/12(月)(福住廉)
20世紀のはじまり──ピカソとクレーの生きた時代

会期:1/2~3/22
Bunkamuraザ・ミュージアム[東京都]
たまたま渋谷に用事があり、たまたま時間があき、たまたま招待状を持っていたので見に行く。このような条件が重ならなければ見に行かなかったかもしれない。そもそもぼくはこの展覧会をピカソとクレーの2人展だと早とちりしていた。つまりこのふたりの巨匠の交流とか影響関係(あるのか?)を探る展覧会だと思い込んでいたのだ。ところが入ってみたら、いきなりマティスに始まり、フォーヴィスムやドイツ表現主義が続き、ようやくピカソが現われたかと思ったらシュルレアリスムに移り、最後はクレーで終わる構成なのだ。作品はすべてノルトライン・ヴェストファーレン州立美術館(通称K20)からの出品で、しかも計64点のうちピカソ6点、クレー27点だから、ふたり合わせてようやく半分といったところ。でもまあぼく的には、ピカソとクレーよりベックマンやエルンストを見られてよかったっす。
2009/01/11(日)(村田真)
未来を担う美術家たち DOMANI・明日展2008

会期:12/13~1/26
国立新美術館[東京都]
文化庁の芸術家在外研修(新進芸術家海外留学制度)の成果発表展。田中信太郎や舟越桂、開発好明など15名の作家による作品が発表された。絵画から彫刻、染織、写真など異なるジャンルが集結しているとはいえ、群を抜いていたのは開発好明。365日、毎朝自分の顔を撮影した写真を一挙に発表し、そのうちのいくつかを編集して映像化することで、時間の経過とともに老いていく肉体の変遷を要約して見せた。世界のどこで朝を迎えようとも、つねに同じ作業を自分に課すという規則性に、生活とアートを決して分けない、アーティストとしての矜持を見た。
2009/01/11(日)(福住廉)
山下清 展 放浪の軌跡

会期:1/10~2/22
伊丹市立美術館・伊丹市立工芸センター[兵庫県]
山下清の展覧会は珍しいが、大混雑している伊丹市立美術館もまた珍しい。テレビ番組の影響力に改めて感心する。私自身、彼の作品を見るのは初めてだが、貼り絵の中でも戦後の作品は確かに質が高い。また、鉛筆画とペン画もたいへん魅力的だ。昭和12、13年頃の作品に戦場や軍隊を描いたものがあることにも驚かされた。出品数が多く、愛用品や衣服、リュックサックなど資料類も充実しておりサービス満点。普段は美術館に来ない「裸の大将」ファンも十分満足したのでは。
2009/01/11(日)(小吹隆文)


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