artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
ベ・サンスン展 関係の形 ‘結び目’

会期:1/10~31
イムラアートギャラリー[京都府]
新作と、ここ1、2年の近作9点を出品。彼女の作品は、白いキャンバスに木炭をすり込むようにして描いたものと、黒いベルベットに細筆で白い線を無数に描いたものが対をなしている。前者は確信に満ちた強い存在感を放ち、後者は深遠な中にも柔らかな気配を感じさせるのが特徴だ。白地に黒線の作品では「結び目」がモチーフになっている。これは人間同士の関係性を示しているのだが、彼女が一児の母になったことで、より説得力が増したように感じられた。
2009/01/10(土)(小吹隆文)
新人画会展
会期:11/22~1/12
板橋区立美術館[東京都]
戦中の1943年、靉光、麻生三郎、井上長三郎、鶴岡政男、松本俊介ら8人の画家により結成された新人画会。彼らが戦中に開いた3回のグループ展の出品作品を中心に、戦前・戦後の作品もあわせて展示している。別に戦中だからって、体制翼賛的な作品がないのはもちろんのこと、反戦的な表現もなく、淡々とふだんどおりの絵を描こうとしている。それが彼らの意図だったのだろう。ただ全体に暗い印象は否めない。興味深いのは、戦前は明るい絵を描いていた人も、戦争を機に戦後も暗い絵を引きずった(または引き受けた)ことだ。そこが彼らと同世代の岡本太郎との違いかもしれない。どっちがいい悪いということではなく。ちなみに、8人のなかでは靉光が図抜けている。
2009/01/09(金)(村田真)
新人画会展 戦時下の画家たち
会期:11/22~1/12
板橋区立美術館[東京都]
戦中の1943年、靉光、麻生三郎、糸園和三郎、井上長三郎、大野五郎、鶴岡政男、寺田政明、松本竣介の8人の画家によって結成された新人画会。本展はその全貌に迫る好企画。現存する資料が少ないなか、当時の展覧会を見た者の証言を聞き取り、出品作品を特定ないしは推測するなど、学芸員の堅実な調査研究の成果が現われている。しかも、かつての展覧会の会場だった資生堂画廊の一部を美術館の中に再現してそこで当時のまま絵を見せたり、「画布購入票」や「絵画慰問行動計画」を展示することで戦時下の絵描きの暮らしを浮き彫りにするなど、展示の仕方にも工夫が凝らされている。麻生三郎夫人へのインタビューをまとめた記事やメンバーの動向と当時の美術界、政治社会の動きをまとめた年表を収めた図録も、充実した内容。こうした地道な研究の成果が存分に現われた展覧会は、もっと評価されるべきだし、もっと見てみたい。
2009/01/09(金)(福住廉)
放浪の天才画家 山下清

会期:1/2~1/7
東急東横店西館8階特設会場[東京都]
「裸の大将」としていまも高い人気を誇る、山下清の大々的な回顧展。初期の「ちぎり紙細工」から、日本全国を放浪して描いた「貼絵」、さらには句読点が一切ない日記、ヨーロッパを描いたペン画、陶器、記録映像などを網羅的に展示した。なかでも興味深かったのは、ゴッホの墓を訪ねたとき、その隣の墓のほうが格好良かったにもかかわらず、ゴッホの墓を描けといわれて、仕方なく描いたというエピソード。「天才」という神話が、決して純度100%であるわけではなく、ある程度は人為的に作られたものであることを、山下清自身が物語る、貴重な証言だった。
2009/01/06(火)(福住廉)
ウィーン美術史美術館所蔵 静物画の秘密展

会期:1/6~3/29
兵庫県立美術館[兵庫県]
静物画展といいつつも、静物画的な要素を含む風俗画や肖像画も含めて紹介されていた。この手の作品は絵解きになっていることが多く、モチーフの意味を理解している方がより楽しめる。でも、日本にそんな知識を持つ人がどれぐらいいるのだろう。もちろん私も詳しくないので、寓意よりもテクニックに注目することが多かった。ギョッとしたのは市場の様子を描いた幾つかの作品。解体された牛がドーンと描かれている。ダミアン・ハーストの作品も案外ルーツはこの辺なのかも。そういえば高橋由一の新巻鮭に似た絵もあった。新年早々変な所ばかりに目が行く。困ったものだ。
2009/01/06(火)(小吹隆文)


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