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美術に関するレビュー/プレビュー

プレビュー:江之子島芸術の日々2017「他の方法」

会期:2017/03/10~2017/03/19

大阪府立江之子島文化芸術創造センター、フラッグスタジオ、マークスタジオ[大阪府]

いまや日本全国に波及した感のある「地域アート」。それを肯定も否定もせず、しかし「他の方法」もあるのではないかと提案するのが本展である。会場は、公立のアートセンターと2棟のマンション。少なからぬ日本人が住処とする住宅環境に作品を配し、日常を新たな視点から見つめ直すきっかけにしようというのだ。参加作家は、佃弘樹、木村充伯、彦坂敏昭、村田宗一郎、杉山卓朗など、東西の若手作家10名。彼らが制作したさまざまなジャンル、傾向の作品を生活の場に挿入することにより、従来の地域アートが標榜してきた「町おこし」や「観客参加」とは異なるアートと日常の関係を問い直そうというのだ。展覧会自体はもちろん、会場ツアーやワークショップなど関連イベントも充実しており、新タイプの都市型アートプロジェクトとして注目したい。

2017/02/20(月)(小吹隆文)

プレビュー:The Legacy of EXPO’70 建築の記憶─大阪万博の建築

会期:2017/03/25~2017/07/04

EXPO’70パビリオン[大阪府]

高度成長が頂点を迎える時期に開催され、戦後日本の記念碑というべき一大イベントだった1970年大阪万博(日本万国博覧会)。数々のパビリオンが立ち並び、さながら未来都市のようだった会場は、現在は公園となり(万博記念公園)、往時をしのぶ建築は《太陽の塔》などわずかしか残っていない。そのうちのひとつ《EXPO’70パビリオン》(元・鉄鋼館)で、大阪万博の建築をテーマにした企画展が行なわれる。展示物は、パビリオンの設計図、構想模型の写真、約14年の月日をかけて完成したエキスポタワー模型の初披露と、同タワーが解体される過程を記録した写真225点など。大阪万博は建築史的にも重要で、エアドームや吊構造などの新技術がふんだんに導入された。また、建築の価値観が重厚長大から軽く、小さく、動くものへとシフトするきっかけになったともいう。本展は、そうしたパビリオン建築の記憶をたどるとともに、現在に引き継がれているものを確認する機会となるだろう。

2017/02/20(月)(小吹隆文)

プレビュー:風と水の彫刻家「新宮 普の宇宙船」

会期:2017/03/18~2017/05/07

兵庫県立美術館[兵庫県]

兵庫県三田市にアトリエを構え、風や水などの自然エネルギーで動く彫刻作品で国際的に活躍する新宮晋(1937~)。世界各地の公共空間に約160点の作品を設置し、欧米の諸都市を回る野外彫刻展「ウインドサーカス」や、作品設置を通して世界各地の先住民と交流するプロジェクト「ウインドキャラバン」でも知られる彼が、過去最大規模の個展を開催する。安藤忠雄が設計した兵庫県立美術館をひとつの宇宙船に見立てた本展では、新作約15点を中心に、映像、彫刻模型、絵本などを展示。また、自然の力で自立する未来の村「ブリージング・アース」のプランも紹介される。彼の新作を大量に見られるのはもちろん、建築との共演も非常に楽しみだ。

2017/02/20(月)(小吹隆文)

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プレビュー:小出麻代 うまれくるもの

会期:2017/03/10~2017/04/09

あまらぶアートラボ A─Lab[兵庫県]

2015年に開館した兵庫県尼崎市のアートセンター「あまらぶアートラボ A─Lab」。そのオープニング展として行なわれた「まちの中の時間」では、出展作家のヤマガミユキヒロ、小出麻代、田中健作が展覧会終了後に1年間かけて尼崎市でフィールドワークを行ない、その成果を2016~17年に順次個展として発表するプロジェクトが組まれていた。すでに昨年にはヤマガミが個展を行ない、2人目として登場するのが小出麻代である。小出は、糸、紐、紙、セロファン、鏡、鉛筆、版画、照明などの小ぶりな素材を組み合わせたインスタレーションで知られる作家だ。展示空間の特性や、自身の記憶、感性を自然なかたちで融合させる術に長けており、繊細でしなやかな作風には定評がある。「うまれくるもの」と題した本展で、彼女が尼崎で見つけ、感じたものに思いを馳せたい。

2017/02/20(月)(小吹隆文)

プレビュー:額装の日本画

会期:2017/02/25~2017/04/02

栃木県立美術館[栃木県]

現代団体展や公募展の日本画、百貨店美術画廊の日本画コーナーを覗いてみると、洋画と同様に額装された作品が多く見られる。しかし、美術館や博物館で見る近代以前の日本画は、掛軸や屏風、絵巻物といった仕立てが中心だ。額装し、床の間以外の壁面に飾る日本画はいつ、どのようにして現われたのか。そこには、建築の洋風化、団体展、公募展の開催など、作品が展示される空間の変化が影響していることは想像に難くない。この展覧会では日本画額装の歴史を、日本画の見せ方をめぐる議論、抄紙技術の改良と和紙の大判化、団体展の興隆や出品規定の変遷、技法や画材の変化などを通じて辿るという。栃木県立美術館のコレクションによる企画だが、昨年の「学芸員を展示する」展(2016/1/9~3/21)がコレクションの見せ方としてとても工夫されていて面白かったので、今回の企画も楽しみにしている。[新川徳彦]

2017/02/20(月)(SYNK)

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