artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
和田礼治郎/アリエル・シュレジンガー
会期:2017/01/27~2017/02/25
SCAI THE BATHHOUSE[東京都]
久しぶりのSCAI THE BATHHOUSEへ。和田礼治郎・アリエル・シュレジンガー展を見る。2人とも筆者が芸術監督をつとめた「あいちトリエンナーレ2013」に参加した作家だ。和田は、ガラスに挟まれた果実が腐り、落下していく作品から、巨大な真鍮板を果物の酸が腐食させる《VANITAS》に展開する。その表現は日本画のようにも見え、興味深い。アリエルのガスバーナーが自らガスボンベを焼く作品《Gas Loop》は、トリエンナーレへの出品を依頼するきかっけになった作品だ。
2017/02/14(火)(五十嵐太郎)
鋤田正義「SUKITA/M BLOWS UP David Bowie & Iggy Pop」
会期:2017/01/19~2017/03/06
キヤノンギャラリーS[東京都]
鋤田正義といえば、デヴィッド・ボウイをモデルとした数々のポートレートの名作が思い浮かぶ。昨年のボウイの突然の死去もあって、ベルリン時代の傑作『HEROES(英雄夢語り)』(1977)のレコードジャケットに使われた、あのミステリアスな雰囲気のポートレートをはじめ、1970~80年代の鋤田の写真を目にする機会も多くなった。今回の展示では、ボウイとともに、彼の盟友と言ってよいロック・ミュージシャンのイギー・ポップのポートレートがフィーチャーされている。
イギー・ポップは1977年に、ボウイがプロデュースしていた彼のアルバム『The Idiot』のプロモーションのために初来日した。その時、鋤田は「原宿の小さな貸しスタジオで、デヴィット・ボウイを一時間、イギー・ポップを一時間、フォトセッションすることができた」のだという。今回の展示では、このときの写真をはじめとして、2人のミュージシャンのそれぞれの軌跡に寄り添った写真が並んでいた。
音楽関係の写真展では、会場構成に凝ることが多いのだが、本展ではあえて「ザ・写真展」を目指したのだという。大判に引き伸ばされたモノクロームのポートレートが淡々と並び、写真家とモデルたちとの緊張感あふれる「セッション」のプロセスが鮮やかに浮かび上がってくる。鋤田の、ポートレート写真家としての技量とテクニックを、充分に堪能することができた。それにしても、70年代のポップ・カルチャー・シーンを撮影した写真には、独特の生命感が息づいているように感じる。スターが、スターとしての輝きを放っていた最後の時代だったということなのだろうか。
2017/02/14(火)(飯沢耕太郎)
筆塚稔尚展
会期:2017/02/11~2017/02/26
アートゾーン神楽岡[京都府]
1980年代から活躍し、確かなテクニックを持つことで知られる版画家、筆塚稔尚。本展では、近年彼が取り組んでいる、雨をモチーフにした銅版画が見られた。雨といってもいろいろあるが、彼が選んだのは水面に落ちる雨粒とその波紋である。特に波紋の表現は秀逸で、まるで機械で描いたかのように正確な同心円がフリーハンドで描かれている。作品には描き込みが多いものと少ないものがあったが、筆者自身は余白を大きくもうけた後者のほうが、余韻が感じられて好きである。また、会場の画廊は2フロアから成るが、上の階では雲をモチーフにした旧作の油性木版画が展示されていた。上の階で雲、下の階で雨という物語的な構成だ。画廊主の発案らしいが、小粋な演出だと思った。
2017/02/14(火)(小吹隆文)
Unknown Sculpture series No.7 ♯3 大西伸明「かけがえのないかけかえ」
会期:2017/01/29~2017/02/13
ギャラリー21yo-j[東京都]
たわんだブルーシート、天井から吊り下がった錘、錆びついた鉄のポールなど、つまらないものが2点ずつ並んでいる。ん? 2点ずつ? しかも2点ともシワもサビもキズもまったく同じ。もちろんホンモノ(オリジナル)が2つあるわけないし、ホンモノとニセモノ(コピー)でもない。どちらもニセモノ、というと聞こえが悪いので、ホンモノから型どりしてFRPで固め、着色したレプリカなのだ。2点ずつあるのはおそらく、1点だけだと「つまらないホンモノ」があるだけだと思われて、スルーされてしまうからだろう。でもシワやキズまでまったく同じブルーシートが2点もあれば「おや?」となるはず。これはやはり版画出身のアーティストならではの発想かもしれない。それにしても見事な仕上げ。
2017/02/13(月)(村田真)
平田晃久建築展
会期:2017/02/07~2017/03/05
太田市美術館・図書館[群馬県]
平田晃久が設計した太田市美術館・図書館を見学する。美術、建築、絵本など、ビジュアル系本が充実した図書館+都心回帰の美術館+おしゃれなカフェという最強コンテンツが空間的に融合しつつ、駅前に出現した。彼らしい複雑な立体構成をもち、図面では理解しにくいが、実際にぐるぐる歩いて体感することで身体化される。太田市美術館では、平田晃久展を開催中だった。2つのキューブには、それぞれ模型群と映像・細部検討を展示し、スロープに沿った大きな壁面を使い、ワークショップを経て、いかに建築が変化したかを紹介する。なお、図書館はまだ整理中で4月にオープンとのこと。開館後、実際に人の動線がどのように絡まりあうかを見たい。
2017/02/10(金)(五十嵐太郎)