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美術に関するレビュー/プレビュー

エリザベス ペイトン:Still life  静/生

会期:2017/01/21~2017/05/07

原美術館[東京都]

3年前のミヒャエル・ボレマンスに続く待望の絵画展。そういえばボレマンスとペイトンの絵は似てないけど似てなくもない(どっちや!)。どちらも人物が中心で、ペインタリーで、部分的に薄塗りで、小さめの作品が多く(原美術館が会場だからか?)、そして追従者が多いからだ(来年の卒展にはますますペイトン風の絵が増えるはず)。でも違いも大きい。ペイトンのほうがプリミティヴで、色彩が美しく、絵画としてより自律しているように見える。ドラクロワやクールベのよく知られた絵画、あるいはジョージア・オキーフ、カート・コバーン、ヨナス・カウフマンの肖像など、彼女にとって身近で愛すべきモチーフが採り上げられるのも特徴だ。この親密さと小ぶりのサイズがコレクターにはたまらないのよ。出品作品の大半は個人の所蔵だという。

2017/01/20(金)(村田真)

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吉岡徳仁 スペクトル ─ プリズムから放たれる虹の光線

会期:2017/01/13~2017/03/26

資生堂ギャラリー[東京都]

いつものように資生堂ビルの階段を降りていくと、地下中2階に受付が移動している。ひょっとして入場料をとられるのではとアセったが、そんなことはない。移動した理由は階下に降りてみるとわかる。地下空間でスモークをたいているのだ(だからエレベータも使えない)。資生堂ギャラリーは奥の小さめの部屋と手前の大きめの部屋に分かれるが、奥の部屋に大きなパネルを立て、そこに透明な三角柱(プリズム)を3つ組み合わせたユニットを数十個並べ、裏から光を当てている。プリズムを通過した光は大きな空間の床や壁に小さな虹をたくさん生み出す。光源はわずかに動いているので虹も少しずつ動くという仕掛け。たいへんな装置だし、美しい光景を現出させるが、それだけ?

2017/01/20(金)(村田真)

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プレビュー:キュレーター公募企画展 大いなる日常

会期:2017/02/18~2017/03/20

ボーダレス・アートミュージアムNO-MA[滋賀県]

キュレーター公募で選ばれた、田中みゆき(21_21 DESIGN SIGHT、山口情報芸術センター[YCAM]、日本科学未来館で展覧会やパフォーマンス、書籍や印刷物などの企画に携わった経験あり)の企画展。「人はなぜ表現するのか」という根本的な問いかけを軸に、表現のはじまり、他者との関係等を探る。出展作家は、AKI INOMATA、杉浦篤、銅金裕司、戸來貴規、やんツー、吉本篤史、トーマス・リバティニーの7組。アール・ブリュット、昆虫や植物を用いたバイオアート、デジタルテクノロジーを駆使したメディア・アートなど、さまざまな分野の表現が集まっており、その多様性を通じて、表現のはじまりや他者との関係性について考えてみたい。

2017/01/20(金)(小吹隆文)

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プレビュー:Exhibition as media 2016-2017「とりのゆめ/bird's-eye」

会期:2017/02/18~2017/03/05

神戸アートビレッジセンター[兵庫県]

神戸アートビレッジセンター(以下、KAVC)が2007年から行なっている企画展「Exhibition as media」。その特徴は、KAVCとアーティストが企画立案から実施までを協働する点にある。昨年の同展では美術家の井上明彦とヒスロムが新開地(KAVCが立地する場所)をテーマにしたが、今年は、「建築物ウクレレ化保存計画」で知られる美術家の伊達伸明と、建築・まち・空間の調査と提案を行なっているRADのメンバー、榊原充大と木村慎弥が、やはり新開地をテーマに展覧会をつくり上げる。彼らの切り口は「しらんけど考古術」というもの。これは関西人が根拠のない噂話などをする際に、責任逃れの意味で語尾につける「知らんけど」から着想したものだ。本展では、根拠が曖昧な伝承や都市伝説をもとに、空想力を働かせて今の都市と向き合おうと試みる。筆者はRADの2人については知らないが、伊達の作品は1990年代からずっと見ている。彼のアーティストとしての力量に疑いはなく、その軽やかで飄々とした物腰も信頼しているので、きっと斬新な展覧会をつくり上げてくれるだろう。

2017/01/20(金)(小吹隆文)

大阪版画百景

会期:2017/01/18~2017/02/11

大阪府立江之子島文化芸術創造センター[大阪府]

大阪府立江之子島文化芸術創造センターと大阪新美術館建設準備室の共同企画。大阪府と大阪市の所蔵品から、大阪を描いた風景や大阪出身の作家など、大阪とゆかりの深い20世紀以降の版画作品約140点および関連資料を展示した。出展作家は、明治から昭和にかけて活躍した織田一磨に始まり、浅野竹二、川西英、前田藤四郎、赤松麟作の戦前の作品を経て、戦後の瑛九や泉茂らによるデモクラート美術協会、前田藤四郎や久保晃らが在籍した版画8(会場だった画廊みやざきの紹介も含む)、そして1970年代以降の作家達へと進む。作品のクオリティ、作家のバラエティ、作品点数のいずれも不足がなく、非常に見応えがある展覧会だった。関西の版画史を知るうえでも勉強になるので、学生たちにおすすめしたい。

2017/01/20(金)(小吹隆文)

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