artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
寺崎百合子 図書館
会期:2017/01/21~2017/02/24
ギャラリー小柳[東京都]
図書館を描いた鉛筆画が6点。薄暗いなかに古びた本たちがかすかに浮かび上がる。本だけでなく地球儀も描いている。が、よく見たら天球儀(月球儀も?)だった。天球儀も丸い本(宇宙誌)だからね。これはほしくなる。入口付近に箱が置かれていてなにかと思ったら、数十本、いや数百本のちびた鉛筆が上向きにぎっしり詰められていた。これも売ってるのだろうか。
2017/01/25(水)(村田真)
太田三郎「Print works」
会期:2017/01/12~2017/01/31
ギャラリーなつか&Cross View Arts[東京都]
壁に5段の棚をとりつけ、その上にさまざまな色紙を並べている。その数200種類。一見ランダムに並んでいるように見えるが、色名(英語名)をアルファベット順に配置したものであることがわかる。例えばAsh greyとかBurnt umberとかCerulean blueといったように。ずっと見ていくと、色名の頭文字にならないアルファベットもあった。QとXだ。さらにそれらの色を使ってアルファベットの色名を表わしたりもしている。例えば「RED」の3文字を、それぞれRose pinkとEmerald greenとDelft blueで塗ることで、赤くないREDを成立させるとか。色彩と記号のあいだを往還させているわけだ。
2017/01/25(水)(村田真)
菅野由美子展
会期:2017/01/23~2017/02/10
ギャルリー東京ユマニテ[東京都]
もう10年ほどになるだろうか、器や皿が並んだ静謐な静物画を発表している。前は横に器を並べただけのシンプルな画面だったが、新作ではまるでエッシャーの位相空間のように、複雑に入り組んだ棚の上に配置したり、背景をなくして宙に浮かせたような器もある。器を入れるより大きな器=空間を描こうとしているともいえるが、器の中身は「うつ=空」だから描けないし見えないので、また器に戻っていく。背景は変わってもそこは揺るぎない。
2017/01/25(水)(村田真)
現代美術実験展示『パースペクティヴ(1)』
会期:2017/01/24~2017/03/26
JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク[東京都]
どこでやってるのかわからず、スタッフに聞いてようやく判明したほど片隅でひっそりと行なわれていた。やっぱり「現代美術」の「実験展示」はこうでなくちゃね。100年前に建設された赤門倉庫から移設した重厚な鉄製キャビネット内で、藤原彩人、高木大地、今井紫緒、今井俊介、冨井大裕、今津景、菊池敏正という7人のアーティストに作品を発表してもらう試み。藤原は天地逆にした首像の陶器で、首に花を差せるようになっている。今津はキャビネットに合わせた縦長の画面に、モアやドードーなど絶滅した鳥類を丁寧に描き、古代エジプトの半獣神を線描し、さらにたっぷりの絵具をストロークで載せるというトリプルイメージ。冨井は赤と黄色の細長い水準器を2台ずつT字型に組んで垂直に立てている。それぞれインターメディアテクのコレクションからインスピレーションを得たとおぼしき作品。古いキャビネットも悪くないけど、この広い展示室の厖大なコレクションのなかに現代美術を紛れさせるのも一興かも。
2017/01/25(水)(村田真)
特別展示 医家の風貌
会期:2016/12/03
JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク[東京都]
東京駅前に「驚異の部屋」があるとは、なんと贅沢な! その一隅で、東大医学部附属病院から管理換となった肖像画と肖像彫刻の一部が展示されている。これらは病院内科講堂の大壁面に掛け継がれてきた歴代教授の肖像画で、医師でも医学者でもなく「医家」と称するところがイカにもイカめしい。作者に和田英作や中村研一らの名前も見えるなか、おや? っと首をひねってしまったのが黒田清輝作の《三浦謹之助》の肖像。ヘタというか、ハンパ感が尋常ではない。制作年を見ると1920年というから画家の晩年だ。近代洋画の父ともいわれる黒田だが、彼が日本美術史に残る作品を生み出したのは19世紀の最後の10年間だけで、以後は教授や審査員など多くの役職を担い多忙をきわめたため、制作がおろそかになっていく。特に1920年というと貴族院議員に当選した年であり、なんとか描き始めたものの続かず、未完成のまま放棄されたようだ。三浦教授も困ったに違いない。
2017/01/25(水)(村田真)