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美術に関するレビュー/プレビュー

ポーラ美術館コレクション モネからピカソ、シャガールへ

会期:2016/09/17~2016/11/13

宮城県美術館[宮城県]

ポーラ美術館のコレクションで構成されており、日本人が大好きな印象派とその直後を扱う。これもやはり教科書的なセレクションだが、作品の解説がちゃんと書かれているので、学習にはいいかもしれない。常設のエリアでは、具体美術協会の作家たちを特集している。前半のアクションペインティング系の絵画を壁に掛けず、床置きで鑑賞すると面白いかもしれない。

2016/10/02(日)(五十嵐太郎)

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第3回代官山フォトフェア

会期:2016/09/30~2016/10/02

代官山ヒルサイドフォーラムほか[東京都]

写真作品を扱うギャラリー、書店・出版社から成る日本芸術写真協会(FAPA)が主催する「代官山フォトフェア」も3回目を迎えた。今年の目玉は、写真史家の金子隆一のコレクションから厳選して展示した「The Photobook」展(ヒルサイドプラザ)。「1960年代以降、世界の中でも独自の変遷を遂げてきた日本の写真集を、総合的に紹介する」展覧会である。たしかにこのところ、日本の写真集に対する関心は世界的に高まりを見せており、時宜を得た好企画といえる。
会場には、小石清『初夏神経』(1933)、川田喜久治『地図』(1965)、荒木経惟『センチメンタルな旅』(1971)などの極めつきの名作写真集のほか、元村和彦が主宰していた邑元社から刊行されたロバート・フランク『私の手の詩』(1972)などの写真集のコーナー(装丁・デザインは杉浦康平)、コロタイプ、グラビア、オフセットなど、印刷システムの違いによる視覚的効果を比較するコーナーなどがあり、充実した内容だった。この展示に限らず、「写真集の展覧会」は、もっといろいろな角度から企画できるのではないだろうか。
代官山フォトフェアでは、FAPA bookとして毎回写真集を刊行している。石内都『Belongings 遺されたもの』、荒木経惟『去年の写真』に続いて、今年は川田喜久治『遠い場所の記憶:1951-1966』が出版された。それに合わせた企画展には、なかなか見ることができない川田の1950~60年代の初期作品が展示されており、東松照明の同時代の作品との比較も含めて興味深い内容だった。川田の旺盛な実験精神が、この時期からすでに芽生えていたことがわかる。ほかに横田大輔、小林健太、志賀理江子らによるトークセッションなど、多彩な催しが行なわれた。天候不順で、観客数は期待されたほどは伸びなかったようだが、昨年と比較しても意欲的な展示・イベントが多かった。東京都写真美術館もリニューアル・オープンしたこともあり、代官山・恵比寿地区全体を巻き込んで、より規模の大きな写真フェスティバルとして展開していけるといいと思う。

2016/10/01(土)(飯沢耕太郎)

動き出す!絵画 ペール北山の夢 ─モネ、ゴッホ、ピカソらと大正の若き洋画家たち─

会期:2016/09/17~2016/11/06

東京ステーションギャラリー[東京都]

美術雑誌や翻訳本の出版や展示などメディアの側面から、日本の近代美術の発展を支えたペール北山を中心に据えながら、日本における印象派の受容をたどる。教科書的とも言える流れだが、知らない作家も多くいて勉強になった。なによりも、数年間、集中的に美術にかかわった北山が、今度は国産初のアニメに着手し(展覧会のタイトルはこれに由来する)、およそ100年前に制作した3つの短編映像を鑑賞できたのが最大の収穫だった。

2016/10/01(土)(五十嵐太郎)

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それぞれの時「大阪」~森山大道・入江泰吉・百々俊二展~

会期:2016/09/03~2016/10/30

入江泰吉記念奈良市写真美術館[奈良県]

奈良市写真美術館には「入江泰吉記念」という冠がついているので、各展覧会には入江泰吉作品の展示が必須になる。今回の「それぞれの時「大阪」」展でも、森山大道と百々俊二の「大阪」の写真と入江の写真をどう組み合わせるかに、相当苦労したのではないかと思う。
入江は戦後、生まれ故郷の奈良で暮らし、「大和路」を中心に写真を撮影・発表してきたが、戦前は大阪で「光藝社」という看板を掲げて活動していた。ところが、1945年3月の大空襲で自宅と店が全焼し、撮りためたネガや写真機材のほとんどが灰燼に帰してしまった。そのとき、唯一焼け残ったのが、今回展示された「文楽」のネガとコンタクト・プリントである。名人が一斉に輩出した、昭和10年代の人形遣い、囃子方らのポートレートと、のちに空襲で焼失する文楽人形をクローズアップで撮影した写真は、とても面白い。コンタクト・プリントには「おおいやき」、「やや明るく」などの書き込みがあり、写真家の息遣いが生々しく伝わってくる。戦後の風景や仏像の写真とはかなり趣が違う、若々しい雰囲気の写真群である。
百々俊二と森山大道の「大阪」もそれぞれ面白かった。百々は九州産業大学の卒業制作だった「新世界劇場」(1969~71)を皮切りに、「大阪・天王寺」(1975~78)、「新世界むかしも今も」(1979~86)、「大阪」(2005~10)と、40年以上にわたって撮影し続けた150点以上の写真を展示していた。一方、大阪・池田市出身の森山大道は、1990年代に撮影された路上スナップを中心に、64点をニュープリントで出品した。彼らの写真を見ていると、街と人とのあり方が、東京と大阪では違っていることに気がつく。路上の人々が、街から遊離しているように見える東京と比較して、大阪では街と分かちがたく一体化した人々の姿を見ることができる。百々も森山も、群衆に紛れ込み、時に彼らを見返しつつシャッターを切るなかで、次第にエキサイトしていく様子が写真から伝わってくる。大阪という空間そのものが、写真家たちにとって魅力的なカオスとなっているのだ。この街から、路上スナップの名作が次々に生まれてくるのも当然というべきだろう。

2016/09/30(金)(飯沢耕太郎)

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さいたまトリエンナーレ 2016

会期:2016/09/24~2016/12/11

[埼玉県]

さいたまトリエンナーレの大宮エリアを歩く。あいちトリエンナーレの長者町に比べると、期間限定の作品が多く、結構それぞれの位置が分散し、密度が薄い。区役所の地下の閉鎖された食堂における岡田利規のキャベツの千切りと半開きのドアの朗読劇の映像はいずれも印象に残る。彼はこうした日常の延長にあるズレを題材にすると、さすがのクオリティだ。長島確のこれから増えるであろう展開型の作品もあって、このエリアでは演劇系の活躍が目立つ。そして公園では、内部に入ることができる磯辺行久のエアドームが膨らんでいた。

写真:上から、岡田利規のキャベツの千切り、磯辺行久のエアドーム

2016/09/30(金)(五十嵐太郎)

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