artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

ノスタルジー&ファンタジー 現代美術の想像力とその源泉

会期:2014/05/27~2014/09/15

国立国際美術館[大阪府]

故郷や昔の思い出を懐かしむノスタルジー(郷愁)という感情から空想をひろげ、ファンタジーを紡いで独自のイメージ世界をつくりだしていく。そんな創造活動を行なっている日本の現代美術作家10組を紹介する展覧会。出品作家は横尾忠則、北辻良央、柄澤齊、棚田康司、淀川テクニック、須藤由希子、山本桂輔、小西紀行、小橋陽介、橋爪彩。私が今展で特に興味をもった作家は下町の家並みや古びた民家の玄関先に置かれた鉢植え、駐車場のある風景などを鉛筆と絵の具で描いていた須藤由希子。昭和の時代を思わせるモチーフ、その空気感、微妙な構図も印象に残り、何度も同じ作品の前に立って眺めた。出品作家たちの年齢層も随分広く、作品総数も458点とすごいボリュームだった今展。実際に展示を見るまでは「ノスタルジー」という今展のテーマはブレないのだろうかと気になったが、全部をゆっくりと見てもあまり疲れず、満足感を覚える充実した内容だった。「理論武装で語るのではなく、作品そのものの”力”を感じるものを選んだ。」という担当学芸員の安来正博氏の言葉を思い出し、なるほどと納得。9月まで開催されているので、チャンスがあればまた訪れたい。



須藤由希子《鉢植えと家ー月島》





展示風景 小橋陽介《こばしの図(ハロー)》



2014/05/26(月)(酒井千穂)

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京都国立博物館 初夏のプレスセミナー in TOKYO

会期:2014/05/26

学士会館[東京都]

京博にこの秋、谷口吉生設計の平成知新館が完成し、館蔵品および京都の寺社からお宝を借りて、9月13日から「京へのいざない」でお披露目される。《伝源頼朝像》や《餓鬼草紙》や雪舟の《天橋立図》など教科書で見たことある作品がごっそり登場。これで常設展の料金(一般520円)で見られるからうれしい。キャッチフレーズは、ズラリ国宝、ずらり重文。また10月7日からは修理完成記念として「国宝 鳥獣戯画と高山寺」も開かれる。こちらは特別展なので一般1,500円とられるが。

2014/05/26(月)(村田真)

「INTERSECTION POINT」岡村多佳夫企画と13のアーティスト

会期:2014/05/23~2014/05/28

アユミギャラリー[東京都]

サブタイトルに「岡村多佳夫企画と13のアーティスト」とあるように、13組の出品者は、今年東京造形大を退任した岡村氏がこれまでアユミギャラリーの企画展に取り上げてきたアーティストたち。小さめのギャラリーに13組も出品するので小品ばかりだが、小品だけに思わず買ってみたくなる作品もいくつかあった。文庫本を並べた背表紙や、壁に飾られた絵と絵の隙間らしきものを描いた末永史尚、木枠に張ったキャンバス布の余りを動物の耳に見立てた原游、各国のコインの裏側にレリーフされた建物をフロッタージュして額装した高田安規子・政子、つやつやの豆腐を陶でつくった大槻あかね(その角に頭をぶつける人物像は蛇足)などだ。どれも脱力系を装いつつ絵画の根源に迫っている。残念ながら買う余裕はないけどね。

2014/05/26(月)(村田真)

ムラギしマナヴ個展「NO SHELTER」

会期:2014/05/25

IDギャラリー[京都府]

一日だけの展示だったが、京都のギャラリーでムラギしマナヴが久しぶりに個展を開いていた。今回はドローイングや油彩画、コラージュなどの平面作品が中心。「NO SHELTER」というタイトルには、東日本大震災後の社会の有り様や世間と自身との関係性を見つめる作家の陰鬱な想い、また政治的批判が込められていた。ただ、展示された作品群は悲観的で重々しいイメージばかりというわけでもない。テクニックやコンセプト重視ではなく、身体的な衝動から描いたという印象のものが多かったが、どれにもムラギしならではのユーモア、アイロニーが潜んでおり、ひとつひとつの制作エピソードを聞くのも楽しかった。色の塗り方など、新たな手法への試みも見られた個展。今後の活動にも注目したい。



展示風景



2014/05/25(日)(酒井千穂)

村上文生「植物記号─Plant Characters 2014─」

会期:2014/05/20~2014/06/01

Gallery はねうさぎ[京都府]

村上文生の作品を私は初めて今展で知った。カリグラフィーを思わせる躍動感ある記号がリズミカルに配されたエッチング。どの作品にも画面の一部に、ファッション雑誌の切り抜きのようなお洒落な洋服や、樹木のモノクロ写真のイメージが合わせてある。洋服などは情報の氾濫する社会を象徴するのだろうか。示唆するものはいろいろと考えられるが、それにしても知らない国の言語で書かれた美しい本の1ページを眺めているよう。連なる記号が装飾紋様のようにも見えてくる魅力的な作品で引き込まれた。

2014/05/25(日)(酒井千穂)