artscapeレビュー
ノスタルジー&ファンタジー 現代美術の想像力とその源泉
2014年06月15日号
会期:2014/05/27~2014/09/15
国立国際美術館[大阪府]
故郷や昔の思い出を懐かしむノスタルジー(郷愁)という感情から空想をひろげ、ファンタジーを紡いで独自のイメージ世界をつくりだしていく。そんな創造活動を行なっている日本の現代美術作家10組を紹介する展覧会。出品作家は横尾忠則、北辻良央、柄澤齊、棚田康司、淀川テクニック、須藤由希子、山本桂輔、小西紀行、小橋陽介、橋爪彩。私が今展で特に興味をもった作家は下町の家並みや古びた民家の玄関先に置かれた鉢植え、駐車場のある風景などを鉛筆と絵の具で描いていた須藤由希子。昭和の時代を思わせるモチーフ、その空気感、微妙な構図も印象に残り、何度も同じ作品の前に立って眺めた。出品作家たちの年齢層も随分広く、作品総数も458点とすごいボリュームだった今展。実際に展示を見るまでは「ノスタルジー」という今展のテーマはブレないのだろうかと気になったが、全部をゆっくりと見てもあまり疲れず、満足感を覚える充実した内容だった。「理論武装で語るのではなく、作品そのものの”力”を感じるものを選んだ。」という担当学芸員の安来正博氏の言葉を思い出し、なるほどと納得。9月まで開催されているので、チャンスがあればまた訪れたい。
須藤由希子《鉢植えと家ー月島》
展示風景 小橋陽介《こばしの図(ハロー)》
2014/05/26(月)(酒井千穂)