artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
日常/オフレコ
会期:2014/01/11~2014/01/30
神奈川芸術劇場・中スタジオ[神奈川県]
いつもは神奈川県民ホールギャラリーで開いてきた企画展が、なぜか今年はKAAT(神奈川芸術劇場)でやることに。そもそも神奈川県民ホールとKAATって同じ県がやってるのに、こんな近くにつくっちゃってどうすんだ? って大きなお世話ですね。いま調べたら、県民ホールが改修工事で休館中のためKAATを借りたってことらしい。県民ホールのギャラリーもだだっ広いだけで使いにくそうだが、こちらはパフォーミングアーツ用のがらんとしたスタジオだけにもっと使いにくかったと思う。裏返せばチャレンジャブルな空間ともいえるのだが。出品作家は、グランドピアノの表面を削った青田真也、天井から数十枚のドアを吊り下げて開閉した安藤由佳子、黒い日本画を立方体に立てた梶岡俊幸、被災したカマボコ工場のアニメを流す佐藤雅晴、磁気テープを球状に巻いて天体のように見立てた八木良太の5人。作品はそれぞれ力作ながら、間仕切りもないのに各作家のテリトリーが守られていてケンカがないし、相乗効果も感じられなかった。もっと火花を散らせてほしかったなあ。
2014/01/28(火)(村田真)
トラがぐるぐるまわってバターになる。
会期:2014/01/21~2014/01/30
黄金町高架下スタジオ・サイトAギャラリー[神奈川県]
池田拓馬、小林孝一郎、坂裕子、山根一晃という30歳前後の4人展。このうち池田と小林は知ってるが、以前見た作品ほどのインパクトはなかった。坂はさまざまな色彩の糸を使った平面と立体の刺繍作品で、フェミニンな志向があるのかもしれないが、いずれも余った糸が何十本も垂れて滴り落ちる絵具を想起させる点で絵画的だ。山根はアメリカの消費文化に触発されて、価値あるものと無価値なものの境界を曖昧にしようとしている。たとえば1ドル紙幣に9.99ドルのシールを貼って壁にピンで留めただけの作品とか見ると、類似品はありそうだけどついうれしくなってしまう。これ、いったいいくらで売るんだろう?
2014/01/28(火)(村田真)
ガタロ絵画展 ヒロシマ 美しき清掃の具
会期:2014/01/14~2014/01/27
ギャラリー古藤[東京都]
ガタロは広島生まれの今年65歳。ショッピングセンターを掃除する仕事をしながら雑巾やモップといった清掃用具などの絵を30年にわたって描き続けてきた。これまであまり知られることはなかったが、2013年に放送されたNHKによる番組「ETV特集ガタロさんが描く町」で大きな注目を集め、この度都内と横浜市の2カ所で相次いで個展が催された。本展では絵画やオブジェなど60点あまりが展示された。
ガタロの絵の特徴は、力強く太い描線とていねいで繊細な画面構成。双方は相矛盾するように思われがちだが、ガタロの絵にはそれらがみごとに統合されている。同じ画材で原爆ドームの剥き出しの鉄骨と水に濡れたモップの繊維を描き分けるほど描写力も高い。そのため汚れを落とす道具や廃れたもの、周縁化された人を神々しく描くというコンセプトがありありと伝わってくる。村山槐多やケート・コルヴィッツを連想させる画風だ。
本展の白眉は《豚児の村》(1985)。ベニヤ板を3枚並べた大きな画面に、原爆ドームと平和大橋、福島第一原発から流れ出る汚染水、そして豚が描かれている。豚が人間の強欲を表わしていることは理解できるにしても、80年代からすでに原爆と原発をめぐる核の問題を絵画の主題としていたことには新鮮な驚きを感じた。この絵には、私たちの過去と現在が凝縮しているのである。
かつて美学者の中井正一は、「利潤を求めて技術が、その盲目の発展をするとき、それは鼻の先に肉を下げられた豚が真直ぐに突っ込むように、それは盲目である」と指摘したうえで、「芸術家とは20年も先んじて人びとの憂いに先んじて憂い、人びとの喜びに先んじて微笑むのである」と書いた(「文化のたたかい」)。おのれが豚であることを心の奥底で感じている者は、おそらく少なくない。ガタロの絵には、現代の人間像がはっきりと描き出されているのである。
2014/01/27(木)(福住廉)
シンポジウム「震災後の芸術と環境、東北の未来」
早稲田大学文学部33号館3階第1会議室[東京都]
早稲田大学のシンポジウム「震災後の芸術と環境、東北の未来」に登壇する。第一部の基調講演は、東北学の赤坂憲雄が、岡本太郎による太陽の塔を事例に挙げながら、妄想をキーワードに、無用・無償であるがゆえのアートの可能性を指摘し、震災後に行なわれるみちのくアート巡礼88ヶ所の夢を語る。第二部では、五十嵐が震災後の芸術と建築、あいちトリエンナーレ、相馬千秋が震災後の3回のフェスティバル・トーキョーの内容を紹介した。第三部のディスカッションでは、宗教的なものの可能性が話題になった。
2014/01/26(日)(五十嵐太郎)
sense of nonsense
会期:2014/01/13~2014/01/25
2kw GALLERY[大阪府]
個展やグループ展など、精力的に発表活動を行なっているしまだそうが企画した3人展。一見無骨だが絶妙な彫り具合があちこちに感じられる北浦和也の木彫り作品、マジックペンで描いたストーリー性のある田辺朋宣のドローイング、しまだの荒唐無稽な絵画世界が賑やかに散りばめられた展示だったが、それぞれの表現の持ち味や魅力をバランスの良い展示構成で見せていて、目にも愉しい空間が出来上がっていた。しまだは2月25日より、京都のKUNST ARZTでも個展を開催予定(しまだそう個展「NO PLAN -脳腐乱-」)。こちらも見に行きたい。
2014/01/25(木)(酒井千穂)