artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
MAMプロジェクト020 ガブリエル・アセベド・ベラルデ
会期:2014/02/01~2014/05/06
森美術館[東京都]
ペルー出身のアーティストで、2本の映像作品を上映している。1本は、たくさんの子どもたちからひとりが選ばれて舞台に上げられ、ボンッとフラッシュを当てられて舞台を下りるということを繰り返すアニメ。これはまさにいま見てきたばかりの、「だれでも15分は世界的な有名人になれる」というウォーホルの言葉をアニメ化したものだろう。もう1本は自然史博物館を舞台にしたもので、画面中央にティラノザウルスの再現模型を置き、周囲が動いたり光ったりするのに恐竜だけは動かないという映像作品。どちらも哲学的だ。
2014/01/31(金)(村田真)
アンディ・ウォーホル展:永遠の15分
会期:2014/02/01~2014/05/06
森美術館[東京都]
ピッツバーグのウォーホル美術館のコレクションを中心に、絵画、版画、立体、写真、映画など約400点を出品する大規模な回顧展。いま絵画、版画、立体……と羅列したが、ウォーホルの絵画は初期のものを除いて大半がシルクスクリーンを用いているので、版画との境界が曖昧だ。同じく立体も箱の表面に「Brillo」とか「HEINZ」とか商標を印刷しただけのものが多く、むしろ立体版画というべきかもしれない。でも絵画の場合、図こそシルクスクリーンで刷ってるけど、地にはブラッシュストロークを効かせたものが多く、必ずしもコピーに徹しようとしていたわけではないようだ。このへんの曖昧さがウォーホルらしいといえばウォーホルらしい。ほかにも、ポップアート以前のブロッテド・ラインを多用したイラストはベン・シャーンの線描画とそっくりなこと、地塗りの上にシルクで刷るだけでなく、シルクの上に透明系の絵具をかぶせた絵もあることなど、いろいろ気づかされることが多かった。また、初めて見る作品もいくつかあった。とくに下端の欠けた太陽を画面中央に置いた《夕陽》にはびっくり。沈みゆく「日の丸」の皮肉か、モネの《印象─日の出》のパロディか。
2014/01/31(金)(村田真)
ミュシャ展 パリの夢 モラヴィアの祈り
会期:2014/01/18~2014/03/23
宮城県美術館[宮城県]
宮城県美のミュシャ展へ。東京で見逃したが、想像以上に面白かった。やはり、ファイン・アートとして凄いわけではないが、今日の大衆的な商業主義(ポスターや広告、アイドルの図像、あるいは映画的な絵づくり)、大文字の歴史とナショナリズムとアート(晩年のスラヴ叙事詩)を考えるうえで、ミュシャは実に興味深い作家である。またアール・ヌーヴォーの時代における人物を囲むアーチ型のフレームも様式化され、建築的だった。
2014/01/30(木)(五十嵐太郎)
森山大道「終わらない旅 北/南」
会期:2014/01/23~2014/03/23
沖縄県那覇市の沖縄県立博物館・美術館で開催された森山大道展は、まず総出品点数922点という数に度肝を抜かれた。もっとも、そのうち400点あまりは2002年刊行の写真集『新宿』(月曜社)の印刷原稿のプリントで、それらは4期に分けて展示された。それでも600点以上の作品が常時展示されるというのは、これまで開催された森山の写真展では最大規模だ。2012~13年のテート・モダン(イギリス・ロンドン)でもウィリアム・クラインとの二人展に見るように、彼の写真の影響力は海外にも広く浸透しつつある。その自信が隅々にまでみなぎった展示と言えるだろう。
展示は「起点」「犬の記憶」「破壊と創造」「光を求めて」「終わらない旅」の5部構成。名作がずらりと並ぶ前半部分も圧巻だが、今回の見所は最終章の「終わりのない旅」である。このパートは、展覧会のタイトルが示すように「北/南」、すなわち北海道と沖縄の写真で構成されている。北海道は写真表現の極限まで突き進んだ『写真よさようなら』(写真評論社、1972)刊行後の虚脱感を埋め合わせようと道内を彷徨して撮影した写真群、沖縄は1974年に「ワークショップ写真学校」のイベントのため東松照明、荒木経惟らと初めて沖縄を訪れた時に撮影した路上スナップが展示されている。それに加えて、どちらも最近撮影されたデジタル・カラー作品も並置してあった。つまり、「北/南」「モのクローム/カラー」という対立軸を設定することで、森山の作品世界を立体的に浮かび上がらせようというもくろみで、それはとてもうまくいっているのではないだろうか。森山大道の現在を見通すには、必見の展覧会と言えそうだ。
2014/01/30(木)(飯沢耕太郎)
松尾竜平個展「TOBIRA」
会期:2014/01/18~2014/02/08
MATSUO MEGUMI +VOICE GALLERY pfs/w[京都府]
京都では初個展という松尾竜平。私は今展で初めて知る作家だった。アーティストのプロフィールなど詳細も知らずに見に行ったのだが、描かれた自然の風景にもどことなく不可思議な雰囲気と違和感を覚える作品や人々の顔を描いた一連の作品は、謎めいた物語の魅力にも溢れていて印象に残る。ドアの手前にリンゴが置かれた作品《りんご》をはじめ、《赤い家》《扉》《SEEING》など、タイトルと作品のやや暗い趣きがともに記憶に焼きつき、会場を出てからも気持ちが引き摺られた。作品もさることながら作家自身に興味が掻き立てられた個展。
2014/01/30(木)(酒井千穂)