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美術に関するレビュー/プレビュー

越野潤 eight white rectangles

会期:2014/01/25~2014/02/16

ギャラリーあしやシューレ[兵庫県]

会場の壁面には、8点の白い長方形の絵画が点在している。それらはリシツキーのロシア・アヴァンギャルド絵画を3次元空間に解き放ったかのようであり、厳密に設計された配置が空間に美しい均衡をもたらしていた。素人目には判別し難いが、8点はすべて異なる種類の白で着色されているとのこと。着色はカゼインテンペラ技法が用いられている。また、展示室の奥にある細長い回廊状の空間では、8点の白い小品が展示されていた。こちらの特徴は、支持体が半透明の樹脂板であることと、シルクスクリーンで着色されていることだ。これにより作品が内側から鈍く発光するような効果が得られ、平面表現の新たな可能性に気付かされた。

2014/02/06(木)(小吹隆文)

ザ・ビューティフル──英国の唯美主義1860-1900

会期:2014/01/30~2014/05/06

三菱一号館美術館[東京都]

19世紀後半の美術というとフランスの印象派ばかりが注目されがちだが、イギリスではアーツ・アンド・クラフツ運動、ラファエル前派、唯美主義といったフランスとはまったく異なる流れがあった。その唯美主義に焦点を当てた展示。唯美主義とは産業革命によっていち早く工業化したイギリスで、粗悪な機械製品に抗い芸術と生活に美をもたらそうとした運動。いわば「芸術のための芸術」だが、作品そのものは甘ったるい表現が多く、印象派に比べればはるかに保守的でアカデミックな気がする。まあそこに退廃的な魅力を感じるんだけどね。レイトン、ホイッスラー、ムーア、アルマ・タデマといった日本ではあまり知られてない画家が紹介されているのがうれしい。ほかにビアズリーのイラスト、キャメロンらの写真、家具や陶器まで幅広く集めている。

2014/02/05(水)(村田真)

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アンディ・ウォーホル展 永遠の15分

会期:2014/02/01~2014/05/06

森美術館[東京都]

400点以上という「国内史上最大」の出品点数、ニューヨーク東47丁目の伝説のアートスタジオ「ファクトリー」の再現など、多面的かつ包括的なアンディ・ウォーホルの大回顧展である。だが、それを「写真展」として読み解くのも面白いのではないだろうか。
言うまでもなく、ウォーホルの制作活動は写真という表現メディアに多くを負ってきた。彼のシルクスクリーン作品のほとんどが、写真製版による既製のイメージの複写・反復をもとにしたものである。それだけではなく、ウォーホルは一種のカメラ狂であり、彼が出会ったセレブや身の回りの人物や出来事を写真におさめて続けてきた。それらの大部分は、彼自身の有名人崇拝、スノッブ趣味を満足させるために撮影されたスナップ写真の類だが、大判ポラロイドを用いたポートレートや、一枚の写真を複数焼き増しして縫い合わせた「縫合写真」(1970~80年代)など、写真作品としてのクオリティを感じさせるものも多数ある。
もうひとつ重要なのは、彼がセルフ・イメージを拡張・増幅・変容させるために、写真を徹底して利用していることだ。1960年代に「ポップ・アートの帝王」としての地位を確立してから以降、ウォーホルは最新流行のファッションを身につけ、鬘やメーキャップなどにも頼って、それらしいセルフ・イメージを流布し続けようとした。時には痛々しくも感じられるほどの、そのこだわりが、セルフ・ポートレート作品やスティーブン・ショアやビリー・ネームなど身近にいた写真家たちによるスナップ写真に刻みつけられている。
ウォーホルは1987年に亡くなっているので、90年代以降の写真のデジタル化に対応することはできなかった。ゆえに、もし彼がもう少し長く生きたならば、デジタルカメラとパソコンを使ってどんな写真作品を制作したのかというのは、とても興味深い設問だ。だが逆に、ウォーホルの奇妙に生々しい写真作品を見ていると、彼こそが、銀塩写真の時代の最後の輝きを体現した「写真家」だったのではないかとも思えてくる。

2014/02/04(火)(飯沢耕太郎)

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クリスチャン・ボヌフォワ展

会期:2013/12/13~2014/02/28

メゾンエルメス8階フォーラム[東京都]

メゾン・エルメスのクリスチャン・ボヌフォワ展を見る。マティスの作品との出会いを契機に、美術史の研究からアーティストに転身した作家だ。彼は、フランスの現代美術運動シュルファスに影響を受けつつ、キャンパスの枠組を解体し、コラージュと透明性の操作を行う立体絵画を追求する。仮設壁がジグザグしながら、そこに開口部を設ける会場構成を中山英之が担当しているが、作品との相性が抜群によい。

2014/02/03(月)(五十嵐太郎)

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あなたの肖像──工藤哲巳回顧展

会期:2013/02/04~2014/03/30

東京国立近代美術館[東京都]

大阪の国立国際美術館からの巡回。工藤哲巳というと、ペニスとか脳とか眼球とか作品のモチーフはいたずらにセンセーショナルだし、「インポ哲学」や「腹切り」などのハプニングもあざとさを感じてしまい、ちょっと腰が引けていた。でもこうして年代順に並べられた展示を見ると、50年代のアンフォルメルに触発された渦巻くような抽象絵画に始まり、その線描が立体化して糸やヒモがからみついたオブジェとなり、そのヒモの結び目からペニス状の突起がぶら下がり、やがて身体の部分模型を箱や椅子や鳥カゴなどに収めた作品に発展し、最後は再び糸が渦巻く作品に戻っていくという変遷をたどると、けっしてセンセーションを狙ったものではなく、必然的な展開だったことがわかる。また彼特有の鼻につく泥臭さも、パリを活動拠点に選んだ工藤にとって西洋モダニズムへのアンチテーゼとして必要な行為だったことが納得できるのだ。そして驚くべきは、ほとんどの作品が美術館所蔵か個人コレクションに入っていること。とりわけ大作やインスタレーションはポンピドゥー・センター、アムステルダム市立美術館、ウォーカー・アート・センターといった海外の主要美術館に収まっているのだ。近年の戦後日本の前衛美術の再評価の機運もあるが、ここまで高く評価されていたとは正直いって意外。

2014/02/03(月)(村田真)

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