artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
プレビュー:永井博 作品展 サマー・マッドネス
会期:2013/08/07~2013/08/27
DMO ARTS、digmeout ART & DINER[大阪府]
1980年代に青春時代を過ごした人なら誰もが知っている、大瀧詠一の名盤『ロング・バケーション』。そのジャケットワークで知られる永井博が、大阪のキタとミナミで大規模な個展を行なう。プール、白いパラソル、ヤシの木、どこまでも青い空……。永井が描き出した楽園風景を、21世紀のいま改めて見直してみるのも一興だ。もちろん旧作だけでなく、最新作も展示される予定。また、本人によるトークとDJパーティーも予定されており(8/10)、夏の夜を華やかに彩ってくれるだろう。
2013/07/20(土)(小吹隆文)
プレビュー:dreamscape──うたかたの扉
会期:2013/08/03~2013/09/16
京都芸術センター[京都府]
毎年夏休みに、子どもから大人までを対象にした啓蒙的な企画展を行なう京都芸術センター。しかし、夏休み企画だからといってわかりやすさ一辺倒に走るわけではない。今回は大西康明(画像上)と松澤有子(画像下)の2人を選出し、展示空間全体を飲み込んでしまうようなインスタレーションの世界を紹介する。大西はポリエチレンシートを用いて日常のなかで起こる目に見えない現象を可視化し、松澤は土地や風土の性質を生かしてその場に生命が宿ったかのような非日常空間をつくり出す。公開制作や子ども向けワークショップなど多彩なイベントも予定されており、美術ビギナーが現代美術の面白さを体感できる機会になりそうだ。
2013/07/20(土)(小吹隆文)
ART OSAKA 2013
会期:2013/07/20~2013/07/21
ホテルグランヴィア大阪 26階[大阪府]
関西を代表する現代美術のアートフェアとして知られる「ART OSAKA」。今年は国内外の52画廊が参加し、例年どおりビギナーからコレクターまでをフォローする過不足のない仕上がりとなった。また今年は、具体美術協会の第2世代の作家たちに迫るグループ展や、フランスの歴史ある公募展から選抜された若手作家のグループ展、ホテルグランヴィア大阪と京都市立芸術大学によるプロジェクトなどの企画展も充実しており、催しに深みを持たせることにも成功していた。こうした積極的な展開は、実行委員の世代交代(若返り)が上手く機能している何よりの証拠であろう。関西のアートマーケットは首都圏に比べると小さいが、国内でアートフェアが成立する数少ない地域のひとつである。地元の芸術文化の灯を絶やさぬためにも、「ART OSAKA」には今後も励んでほしい。
2013/07/20(土)(小吹隆文)
ART OSAKA 2013
会期:2013/07/20~2013/07/21
ホテルグランヴィア大阪 26階[大阪府]
毎年開催されているホテルでのアートフェア、今年も26階という客室階全フロアが会場。今回は52のギャラリーが出展していた。さまざまな作品の表現や知らないアーティストを知るチャンスでもあるのだが、数が多いため客室という狭い空間で譲り合いながら、くまなく見て回るのにも体力が要ると毎回感じる。今回もいろいろなアーティストの作品を楽しめたが、個人的に特に印象に残ったのは大阪のFUKUGAN GALLERY(大阪)から紹介されていた上田よう。ドローイング作品が多く展示されていたのだが一連の作品の奇妙な場面やモチーフ、模様のような色彩パターンにインパクトがある。またGallery OUT of PLACE(奈良)から出品していた中島麦が新しい表現の試みとして発表していたペインティングも気になった。これまでの作風ともずいぶん異なるイメージで今後の展開も楽しみ。ほかに、テヅカヤマギャラリーから紹介されていた築山有城のインスタレーションは面白かった。もともと客室にかかっていたミラーやベッド、椅子など、室内のあらゆるものをすべて15℃の角度で傾けてあったのだが、この会場であるホテルの従業員のマニュアルに記載されている“お辞儀”の角度からインスパイアされたのだという。アートフェアでそんなことをやるなんて!と作家とギャラリーのユーモアのセンスにも感心した。
2013/07/19(金)、7/20(土)(酒井千穂)
ルーヴル美術館展──地中海 四千年のものがたり
会期:2013/07/20~2013/09/23
東京都美術館[東京都]
ルーヴル美術館の厖大なコレクションのなかから「地中海」をテーマに作品を選び、展覧会を組み立てたもの。地中海といえば古代エジプトやギリシャ・ローマ文明を育んだ地であり、また、ユダヤ教やキリスト教の発祥の地でもあり、ついでにいえば、ヨーロッパの語源であるエウロペ神話が生まれた地でもあり、つまりはヨーロッパの母体となった海なのだ。だが、地図を見れば明らかなように、地中海の文明・文化の中心となった地域は、現在の西洋文明の中心地より南東に位置している。このさらに東からイスラム勢力が押し寄せて北西部に追いやられたのが現在の「ヨーロッパ」というわけだ。そうして見ると、ここに展示されている古代の文物から近世のオリエンタリズム絵画まで、すべてが地中海への憧憬の念に貫かれているように感じられるのだ。ミロのヴィーナスもサモトラケのニケもないけど、西洋人の地中海に寄せる思いが伝わってくる展覧会。
2013/07/19(金)(村田真)