artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
高橋匡太「ぼくとひかりと夏休み」
会期:2013/07/20~2013/08/18
豊田市美術館[愛知県]
豊田市美術館で夏休み期間中開催されている高橋匡太のワークショッププロジェクト「ぼくとひかりと夏休み」。色とりどりに光が変化する照明の空間に用意された大量の粘土で、会場を訪れた子ども達が自由に遊び、日々会場の様子も変化していく。そのありさまを記録した編集映像が毎日更新され公開されているのだが、それも見ているとクレイアニメーションのようでなかなか楽しい。私が訪れた日は、粘土で巨大なロールケーキか巻き寿司のような立体を参加者がみんなで制作し、展示してみるという「ねんどとひかりのウルトラ・ワークショップ」が開催され、多くの親子で賑わっていた。意外にもねん土が固そうで、「たたく、のばす」といった作業に誰もが苦戦していた感のあるワークショップだったが、子ども達とアーティストの高橋のやり取りや一所懸命な姿が微笑ましかった。同館では「フランシス・ベーコン」展も同時開催中。こちらは9月1日まで。
2013/07/27(土)(酒井千穂)
アートがあればII──9人のコレクターによる個人コレクションの場合
会期:2013/07/13~2013/09/23
東京オペラシティアートギャラリー[東京都]
9人のプチコレクターの作品を集めたコレクション展の第2弾。9年前の第1弾のときは、「これはいくらで買ったんだろう」とか「これはあの画廊で買ったんだろう」とかゲスの勘ぐりに終始したもんだ。そもそ個人のプチコレクションを天井の高いホワイトキューブの巨大空間で見せていいわけ? という疑問もあった。でも今回、意外と素直に見られたのは、作品の持つ力ゆえかもしれない。力といっても作品自体が大きくなったわけじゃなく、相変わらず小品が多いのだが、しかし限られた予算のなかから選ばれた作品だけあって、個々に輝いて見えるのだ。そう、ここにあるのはどんなに小さくても、どんなに安くても、金銭トレードで勝ち抜いてきた作品なのだから。
2013/07/26(金)(村田真)
“開発も”新世代への視点2013
会期:2013/07/22~2013/08/03
ギャラリーなつか[東京都]
かつて「新世代への視点」に選ばれた開発好明が20代の若手作家12人を選んだ、いわば「開発からの発言 もっと新世代への視点」。同展に参加する12画廊の展示室を20分の1のマケットにして、そこに地主林太郎、寺井絢香、灰原千晶、吉野ももらが作品を発表している(女性が大半を占めるのは近年の傾向だが、開発の趣味もあるだろう)。この企画が今日見たなかで一番おもしろかった。これはOB開発の「新世代への視点」に対するエールともいえる反面、狭い貸し画廊に対する痛烈な批評と見ることもできる。作品は20分の1のマケットにつくるという縛りがあるため、必ずしも各作家の持ち味が発揮されてるわけではないが、彼らにとっては「新世代への視点」に選ばれるためのトレーニングにもなるはず。別に選ばれなくてもいい?
2013/07/25(木)(村田真)
画廊からの発言 新世代への視点2013
会期:2013/07/22~2013/08/03
ギャラリイK+ギャラリーQ+ギャラリー現+コバヤシ画廊+ギャラリー58+ガルリソル+なびす画廊+藍画廊+ギャラリーなつか+ギャラリー川船+ギャルリー東京ユマニテ[東京都]
銀座・京橋界隈の12軒の画廊が、それぞれ推薦する若手作家の個展を同時開催する毎年恒例のサバイバルゲーム。作家にとっても画廊にとってもサバイバルであると同時に、見る側にとっても猛暑のなかコンクリートジャングルを巡り歩く過酷なサバイバルゲームなのだ。年を重ねるにつれますますツラくなる。そんな命を賭してまで見る価値があったかといえば、そんなものはない。というより、そんなことを期待すべきではないといっておこう。そもそも価値のないものに命を賭すのがアートの流儀というもんだし。今日見たのは計11軒。作品をジャンル分けすれば、絵画(タブロー)が6、版画が1、彫刻が3、インスタレーションが1という内訳。ほどよく分かれておるな。一色映理子(ギャラリーQ)は赤ちゃんばかり大まかなタッチでサラリと描き、庄子和宏(コバヤシ画廊)は大画面に身近な風景を暗い色調で表わし、鈴木俊輔(なびす画廊)は絵具を塗り重ねてクレーを思わせる抽象風景に仕上げている。谷口嘉(ギャラリー現)は旗のようにガラス片をつけたガラス棒を50本くらい床に立て、上根拓馬(ガルリ ソル)は古今東西出自不明の甲冑姿のフィギュアを公開し、村上佳奈子(ギャラリー川船)は1本の木からウネウネ渦巻く棒を彫り出している。各画廊の趣味が反映された人選といえる。
2013/07/25(木)(村田真)
片山博文「Facts in Flatness」
会期:2013/07/05~2013/08/03
タロウナス[東京都]
つまらない日常風景を撮った退屈なスナップ写真。のように見えるけど、かすかにどこかが変だと感じる。この違和感、巧妙なスーパーリアリズム絵画を見たときに感じる「ズレ」に近い。写真そっくりなんだけど線や面がきれいすぎて「ひょっとしてニセモノ?」と疑う感じ。実際、片山はCGで「ニセモノ」の写真をつくり出している。解説によると、画素で構成されるペイント系ソフトではなく、ベクトルデータで構成されるドロー系ソフトを用いてデータ化されているため、拡大し続けても画素(ドット)が現われず、イメージが失われないという。理論はさっぱりわからないが、その効果は見ればわかる。線や面の不自然なほどのなめらかさは、ベクトルデータの集合体として再現されているからなのだ。しかしそんな高度なテクノロジーを用いながら、描かれているのがありふれた都市風景である点に新たな違和感を覚える。でも実はそこに作者の問題意識があるはずだ。つまりどこにでも見られる風景にこそ現実と非現実との見えないミゾを感じるべきだと。その意味でこれらの作品は写真でもCGでもなく、都市論に属するのかもしれない。ちょうどスーパーリアリズム絵画がいわゆる具象画の範疇に入れられず、主題の選び方からポップアートに分類されるのと似ている。
2013/07/25(木)(村田真)