artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
透明な奥のほう──wks.←→C. A. P.
会期:2013/06/23~2013/07/13
gallery wks.[大阪府]
大阪と神戸で同時開催されている展覧会。人と作品が二つの場所を行き来することにより、新たな出会いをつくりたいと企画されたもので、上村亮太、浅野夕起、田岡和也、桜井類の4名の作家が出展している。会期中、関連イベントもいくつか企画されている展覧会なのだが、この日は「聴くコト←→見るコト」と題した、おもに神戸を拠点に活動している“リコーダー部”(下田勝久、上村良太、金井和歌子、伊藤まゆみ、神谷千晶、小阪真由)の演奏ライブが大阪の会場、gallery wks.で開催された。有名な曲のカバーだけでなく、オリジナル曲も数曲披露されたライブ。もちろん演奏もだが、なにより出演メンバーが皆とても楽しそうだったのが印象的で羨ましい。展覧会はこちらの会場では上村が映像作品を発表。その他の作家は、平面の作品を展示していた。神戸の会場(CAP STUDIO Y3)はまだ見ていないが、また異なる雰囲気のようで楽しみだ。
2013/06/29(土)(酒井千穂)
TWSエマージング 196/197/198/199
会期:2013/06/08~2013/06/30
トーキョーワンダーサイト本郷[東京都]
これは「トーキョーワンダーウォール公募」の入選作から選ばれた若手作家の展示だが、今回は都現美の「公募」と同じくパッとしないなあ。齋悠記(シャレた名前!)は不定形の抽象画だが、それより角にアールをつけたパネルを使用しているのが目を引く。残念ながらそれが内部の図像と関連しているようには見えない。笠見康大は100号と130号の大作10点の展示で、どれも一貫してピンクとグレーを基調にしているが、裏返せばどれも似たり寄ったりで、どこか時代遅れの抽象画といった印象は否めない。ふたりとも抽象画だからダメなのかといえば、そうでないことはあとのふたりを見ればわかる。風間雄飛は珍しく版画で、和紙にシルクスクリーンか木版で刷っているが、描かれている図像は興味を惹くものではない。桑田まゆこは下塗りした上に小動物や植物や装飾品などをサラリと描いているが、特筆すべき点はない。なんだろ、この停滞感は。
2013/06/28(金)(村田真)
大細密 展
会期:2013/06/25~2013/06/30
アートコンプレックス・センター[東京都]
2階では「大細密展」ってのをやってたんで見に行ったら、約30人が出品する大規模な展示。といってもいわゆる「細密画」は半分くらいで、イラストみたいな小品も少なくない。目を引くのは、アウトサイダーアート顔負けの細かい線描で画面を覆い尽くしたペン画。細い線で花とか動物とか描いているのだが、その全体像より線の集積に目が行ってしまう。一線を越えると細密画というのは「なにか」を表わす手段ではなくなり、線描そのものが目的化していくのかもしれない。
2013/06/28(金)(村田真)
小山利枝子 展
会期:2013/06/25~2013/07/07
アートコンプレックス・センター[東京都]
住宅地に建つこのスペースには以前、夜のパフォーマンス公演を見に来たことはあるけど、昼間来るのは初めて。ずいぶん奇抜な外観だ。内部も奥が深い。その地下全室を使っての個展。150号を3点つないだ大画面3点を中心に、100号以上の大作が並ぶさまは壮観。奥には花を描いた水彩などの小品もある。小山は花の絵から徐々にかたちを崩して流動化させ、色彩とストロークを強調した抽象画に近づいていたが、今回、中央に鎮座する幅5メートル近い大作には、ぼやけているとはいえ明らかに花とわかる形象が描かれている。しかもそれがほかならぬ蓮の花である点に、なにか作者の心境の変化を感じずにはいられない。もちろん大震災と原発事故が響いていることは間違いないだろうけど、これが過去への揺り戻しなのか、それとも新たな方向性を示しているのか。
2013/06/28(金)(村田真)
studio velocity《瞬間をとじ込める椅子》(せんだいスクール・オブ・デザイン CiR)
[宮城県]
せんだいスクール・オブ・デザインのレジデンス枠で、スタジオ・ヴェロシティが仙台で採取した植物をアクリルで固める椅子を制作している。倉俣史朗を想起させるが、こちらは造花の薔薇ではなく、生きた野草であり、アクリルは椅子の座面のみだ。これはあいちトリエンナーレ2013の岡崎会場において、彼らが真白に塗っているシビコという百貨店の屋上にて、風でそよぐ無数の細い糸のインスタレーションとともに設置される。
2013/06/27(木)(五十嵐太郎)