artscapeレビュー
書籍・Webサイトに関するレビュー/プレビュー
カタログ&ブックス│2014年5月
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
アンディ・ウォーホル展 永遠の15分 Andy Warhol: 15 Minutes Eternal
2014年2月1日から5月6日に森美術館で開催された「アンディ・ウォーホル展 永遠の15分」の展覧会カタログ。展覧会では、700点におよぶ初期から晩年までのウォーホルの作品と資料が包括的に紹介された。
HAMArt!vol.8
BankART schoolの講座「アートの綴り方」の講師、美術批評家の福住廉が編集長を務めるフリーペーパー「HAMArt!」のvol.8。内容は展覧会レビューを中心に、前衛美術運動「THE PLAY」の主要メンバー三喜徹雄氏へのインタビュー、横浜美術館をはじめとする4つの美術館の館長室を訪問したものなどを掲載。
trans×form──かたちをこえる
2013年度夏のアーティスト・イン・レジデンスのテーマは、「変換する、変形する」などを意味する"transform"ということばを、"trans"と"form"に解体し、再び掛け合わせ"trans×form"とした。"trans"は「超える」「変換する」などを意味する接頭語で、"form"は「外形」「形式」「構造」などを意味する。各語の意味するところを様々に交換することで「形態を変える」、「形式を超える」、「様相を転換する」など多様な解釈が可能だ。[本書より]
中崎透×青森市所蔵作品展──シュプールを追いかけて
この本は、1年間に渡って行われたワークショップ「展覧会、つくらない!?」の記録集であると共に、その結果出来あがった中崎透×青森市所蔵作品展「シュプールを追いかけて」の展覧会カタログでもある。[本書より]
Exchange 種を植える
森の木、鳥やけものの声、水面に映る月の光。あらゆる被造物が混じり合い、ACACの円形宇宙に結ばれる。「Exchangeー種を植える」展は多くの手と心と知覚の交換によって宝をのこした。[本書より]
大人が作る秘密基地 屋外、ツリーハウス、リノベーション、シェアオフィスまで
建築、まちづくりにも役立つ! 自由な発想で場所と人をデザインする、大人版・秘密基地18の方法。これからの時代を生き抜くアイデアとヒント。創造力と心の拠り所になるコミュニティづくり。自分らしく生きたいと思ったら、自分のための空間を作ろう。その手順がこの本には詰まってる[本書帯より]
2014/05/15(木)(artscape編集部)
出版記念トークイベント・建築系ラジオ公開収録「ようこそ建築学科へ!──公開オリエンテーション」
会期:2014/04/19
カフェ・アリエ[東京都]
カフェ・アリエにて開催された、筆者監修による『ようこそ建築学科へ!』(学芸出版社)の刊行記念イベントに向かう。これは磯崎新の幻の処女作《ホワイトハウス》で、10年ほど前に噂を聞いて、椹木野衣と探しにいったことがある。今はカフェとなり、内部も見学できるようになった。イベントでは最大30名近くが入っていたが、かつてネオダダのアーティストがここに集って盛り上がった時代を想いながら、建築系ラジオの収録を行なう。
2014/04/19(土)(五十嵐太郎)
カタログ&ブックス│2014年4月
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
「ハイレッド・センター:『直接行動』の軌跡」展 カタログ
2013年11月9日から12月23日まで名古屋市美術館で、2014年2月11日から3月23日まで渋谷区立松濤美術館で開催された、「ハイレッド・センター:『直接行動』の軌跡」展のカタログ。
戦後美術の坩堝であった読売アンデパンダン展が崩壊した1963年、三人の若き前衛芸術家(高松次郎、赤瀬川原平、中西夏之)によって、ハイレッド・センターは結成されました。...記念すべき結成50周年に開催する本展では、HRCが発行した印刷物やイベントの記録写真をはじめとして、主要メンバーの同時期の作品も含めて、ハイレッド・センターの「直接行動」の軌跡を紹介します。[名古屋市美術館サイトより]
Magazine for Document & Critic: AC2 No.15
国際芸術センター青森が、2001年の開館以来、およそ毎年1冊刊行している報告書を兼ねた「ドキュメント&クリティック・マガジン エー・シー・ドゥー」の第15号(通巻16号)。2013年度の事業報告とレビューのほか、関連する対談や論考などを掲載。
S-meme Vol.7 仙台文学・映画の想像力
仙台から発信する文化批評誌『S-meme』の第七号が完成しました。今回はテーマを「仙台文学・映画の想像力」とし、...仙台の文学と映画をテーマに様々なコンテンツを収録しています。
また、今回の装幀では「ひっくり返して二面読める本」に取り組みました。本としての挙動がスムースであることはもちろん、蛇腹を活かしてページを広げて読むこともできますし、机に置いて読む時のページが立ち上がるようなちょっとした挙動は普通の本と違っていて、新鮮に受け取って戴けるのではないかと思います。ミシン目は型抜きで施しており、意味の無いように見える場所にあるミシン目は型代を減らすために背表紙の部分の型を使い回してできたいわば「盲腸」です。蛇腹の張り合わせは受講生が自ら手で行ない一冊一冊仕上げています。[せんだいスクール・オブ・デザインサイトより]
ようこそ建築学科へ! 建築的・学生生活のススメ
建築学科と言っても大学、高専、専門学校、住居系、芸術系、工学部系はどう違う?そんな学科紹介に始まり、授業と課題に取組むツボや“建築的”日常生活、学外での建築体験、そして将来設計まで、知れば知る程のめり込む、ハードだけどハッピーな建築学生ライフのススメ。学生生活のあらゆる場面でためになるアドバイス満載。[学芸出版社サイトより]
嶋田厚著作集(全3巻)
コミュニケーション論、文学、社会学、また芸術やデザインをめぐる思想史の領域で、独特の学際的、越境的な仕事を残してきた嶋田厚(1929〜)の自選著作集。第1巻:『生態としてのコミュニケーション』、第2巻:『小さなデザイン 大きなデザイン』、第3巻:『明治以降の文学経験の諸相』自筆略年譜、著作一覧付き。[新宿書房サイトより]
2014/04/15(火)(artscape編集部)
菱田雄介『2011』
発行所:VNC
発行日:2014/03/08
菱田雄介は2011年3月22日、東日本大震災発生から12日目に被災地に入った。気仙沼の中学校の10日遅れの卒業式や、被害が大きかった石巻門脇地区の状況などを撮影し、その10日後に手づくり写真集『hope / TOHOKU』を完成させる。たまたま渋谷の書店でそのうちの一冊を手にした筆者は、彼が「撮らなければならない」という衝動に突き動かされつつ、あくまで冷静に自問自答を重ねて、これほど早い時期にしっかりとした写真集をまとめ上げていることに衝撃を受けた。それらの写真群は、僕自身が書き綴っていた文章と併せて、のちに共著『アフターマス 震災後の写真』(NTT出版、2011)として刊行されることになる。
だが菱田はこの時期、震災の写真だけを撮影していたわけではない。すでに数年前から、テレビディレクターとしての忙しい仕事の合間を縫って海外取材を積み重ねていたのだが、その頻度と集中力がこの年には異様なほど高まってくるのだ。本書はその彼の『2011年』の行動の軌跡を、文章と写真とでもう一度振り返った600ページを超える大著である。1月のチェルノブイリ取材から始まって、北朝鮮と韓国で同じような状況の人物たちを対比して撮影する「border/korea」のシリーズのために何度か両国に入り、大洪水を撮影するためタイを、「アラブの春」の取材のためにチュニジアを訪れるなど、なんとも凄まじいスケジュールをこなしている。
そうやって見えてきたのは、2011年こそ「振り返ってみれば、あれが転換点だったと思える年」だったのではないかということだ。この認識が正しいのか間違っているのかは、もう少し時が経たないとわからないだろう。だが、菱田のまさに体を張った思考と実践の集積を目にすると、そのことが強い説得力を持って伝わってくる気がする。
歯切れのいい文章で一気に読ませるが、巻末に32ページにわたって掲載された写真に、菱田の写真家としての能力の高さがよく表われていると思う。決して押しつけることなく、だが何かを強く語りかけてくる写真群だ。
2014/04/11(金)(飯沢耕太郎)
高橋宗正『津波、写真、それから──LOST&FOUND PROJECT』
発行所:赤々舎
発行日:2014/02/14
東日本大震災以後に、津波によって家々から流出した写真やアルバムを拾い集めて洗浄し、修復したり、複写・プリントしたりするというプロジェクトが、各地で一斉に立ち上がった。写真を一カ所にまとめて公開し、元の持ち主がそれらを見つけたら返却する。宮城県山元町でも、2011年5月にボランティアを募って「思い出サルベージ」という企画がスタートした。
その過程で、中心メンバーのひとりだった高橋宗正は、ダメージがひど過ぎて、修復も持ち主の同定もほぼ不可能な写真を展示・公開することを思いつく。震災の記憶の共有と、仮設住宅の自治会の資金集めが主な目的だった。「LOST & FOUND PROJECT」と名づけられたその展示は、2012年1月から開始され、東京、北海道など国内だけでなく、アメリカ、オーストラリア、イタリアなどでも展覧会が実現した。その一連の経過をまとめたのが、『津波、写真、それから』である。
ボランティアたちの善意は疑えないし、中心となって活動した高橋も「写真とは何か?」を問い直すうえで、多くのことを学んだはずだ。ただ、一読してやや疑問が残ったこともある。ひとつは、ほとんど画像の判別がつかなくても、特定の地域の誰かの所有物だった写真を、国内外の不特定多数の観客に公開していいのかということ。もうひとつは、このプロジェクトを通じて、写真が「作品化」しつつあることへの懸念だ。写真を壁一面に貼り巡らせたインスタレーションの迫力は圧倒的だが、どこか現代美術作品の展示のようでもある。本人は充分に自覚しているとは思うが、「高橋宗正の作品」としてひとり歩きしかねないようにも見えてしまう。
そのあたりの危うさを含み込んだうえで、「LOST & FOUND PROJECT」が「震災以後の写真」のあり方に一石を投じるプロジェクトだったことは間違いない。そのことは積極的に評価したい。
2014/04/10(木)(飯沢耕太郎)