2020年05月15日号
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artscapeレビュー

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カタログ&ブックス | 2019年12月1日号[テーマ:印象派の印象がくつがえる5冊]

月替わりのテーマに沿って、アートやデザインにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。今月のテーマは、「印象派の印象がくつがえる5冊」。横浜美術館で開催中の「オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12人の画家たち」展(2020年1月13日まで)や、三菱一号館美術館の「印象派からその先へ─世界に誇る吉野石膏コレクション展」(2020年1月20日まで)、東京都美術館の「コートールド美術館展 魅惑の印象派」展(2019年12月15日まで)など、関東近郊ではこの秋冬、印象派にちなんだ展覧会が盛りだくさん。今月は、美術展テーマの花形のように語られることも多い印象派のイメージを更新してくれる5冊を選びました。

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印象派という革命

著者:木村泰司
発行:集英社
発行日:2012年3月29日
定価:2,286円(税抜)
サイズ:四六判、224ページ+口絵40ページ

「なぜ日本人は『印象派』が好きなのか」という素朴な問いかけから始まり、モネ、ドガ、ルノワールといった印象派の代表的な作家や、ベルト・モリゾ、メアリー・カサットなどの女性作家たちにも一人ずつクローズアップし、その生涯や作品に込められた感情などを紐解いていきます。印象派の成り立ちや彼らを取り囲む時代状況など、歴史の文脈から印象派への理解を深めるのにも適した一冊。

ルノワールへの招待

編集・発行:朝日新聞出版
発行日:2016年4月7日
定価:1,600円(税抜)
サイズ:B5判並製、95ページ

印象派の作家のなかでもルノワールに着目し、さまざまなアプローチで深堀りしていく仕掛けに富んだ入門書。《ムーラン・ド・ラ・ギャレット》など六つの名画の原寸大が体感でわかるページや、作品のディテールに込められたトリビアなど、ルノワール作品に対峙するときの頭のなかの解像度がぐっと上がるはずです。

モネのキッチン 印象派のレシピ(1)

著者:にしうら染
発行:秋田書店
発行日:2018年6月14日
定価:453円(税抜)
サイズ:17×11cm、119ページ

印象派を「食」の観点からほのぼのと描く、いままでにないマンガ作品。モネとその友人ルノワールの若年時代、お金がなかったがゆえの料理への偏愛が描かれています。19世紀フランスの庶民の食生活が覗けるという意味で「食」マンガ好きの方にもおすすめ。全2巻。

小林秀雄全作品 22 近代絵画

著者:小林秀雄
発行:新潮社
発行日:2004年7月
定価:2,000円(税抜)
サイズ:19×13.2cm、333ページ+図版16ページ

文芸批評家・小林秀雄が50歳のとき(昭和27年)にパリで観て歩いたモネ、セザンヌ、ドガ、ピカソなどを論じた一冊。印象派の人物列伝としても読みごたえは充分で、画家たちの人間関係や時代の雰囲気、そして彼らがつくり出す色彩と美の描写の厚みに唸ります。

印象派で「近代」を読む 光のモネから、ゴッホの闇へ(NHK出版新書)

著者:中野京子
発行:NHK出版
発行日:2011年6月
定価:1,000円(税抜)
サイズ:新書判、211ページ

『怖い絵』シリーズで人気を集める著者が、印象派の画家たちが生きた時代を社会的背景から読み解く一冊。政治/経済/文化など、あらゆる側面で激動の渦中にあった19世紀後半のパリは、当時の画家たちになぜあのような光に満ちた色彩を描かせ、印象派を花開かせたのか。その裏にあった格差社会のリアルにも言及する本書は、印象派の見方を大きく変えてくれるかもしれません。





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2019/12/01(artscape編集部)

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カタログ&ブックス | 2019年11月15日号[近刊編]

展覧会カタログ、アートやデザインにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
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横浜美術館30周年記念 美術でつなぐ人とみらい

寄稿者:朝吹真理子、五十嵐太郎、伊藤亜紗、円城塔、岡田利規、鈴木理策、ドミニク・チェン、奈良美智、西沢立衛、平田オリザ、森村泰昌
発行:河出書房新社
発行日:2019年10月29日
定価:2,200円(税抜)
サイズ:B5判、136ページ

みなとみらいの中心に位置する都市型美術館の先駆として開館30周年を迎える横浜美術館。豪華執筆陣の小説・写真・論考など充実したクリエイションで街と美術館の未来について思いを馳せる。

キース・へリング〜アートはすべての人のために〜

総監修:梁瀬薫
編集長:藤原えりみ
デザイン:小池俊起
発行:美術出版社
発行日:2017年8月3日
定価:4,400円(税込)
サイズ:A4 変型、ソフトカバー、200ページ

「中村キース・へリング美術館」開館10周年を記念して発行される、80年代アメリカのアートシーンを代表する画家、キース・へリングの魅力のすべてが詰まった一冊。地下鉄のラクガキドローイングにはじまる彼のアーティストとしてのキャリアは、1990年に亡くなるまでの10年間。ヘリングは短い人生を疾走するように創作活動を展開。本書は美術館の10年間の歩みをたどりつつ、所蔵作品を中心に、ドローイング、立体ほか約160の作品を掲載。暴力や差別を否定して平和や生きる歓びをメッセージとして発信し、人間の意識や社会のあり方を変えていこうとしたヘリングの幅広い活動を紹介する。

VIRAL: Enrico Isamu Oyama

監修:梁瀬薫
執筆:林道郎、櫻林恵美理、梁瀬薫、大山エンリコイサム
デザイン:小池俊起、林頌介
発行:中村キース・ヘリング美術館
発行日:2019年8月10日
定価:4,600円(税込)
サイズ:A4判、80ページ

中村キース・ヘリング美術館にて、2019年5月より開催中の大山エンリコイサム個展「VIRAL」の展覧会カタログ。 本書には同展覧会のインスタレーションビューをはじめ、大山によるステートメント、美術史家の林道郎による論考を収録。 当館ならではの視点から、キース・ヘリングとの共通性にも迫る一冊となっています。

窓展 窓をめぐるアートと建築の旅

学術協力:五十嵐太郎
編者:東京国立近代美術館
発行:平凡社
発行日:2019年11月
定価:2,500円(税抜)
サイズ:B5版、206ページ

美術作品に現れる「窓」は作品モチーフとして建築の一部として、さまざまな思いを想起させる。東京国立近代美術館の展覧会公式図録。

アンチ・アクション 日本戦後絵画と女性画家

著者:中嶋泉
発行:ブリュッケ
発行日:2019年9月
定価:3,800円(税抜)
サイズ:22cm、362ページ

草間彌生、田中敦子、福島秀子。3人の女性画家の画業をたどり、日本の戦後美術史と戦後美術運動のジェンダー的問題点を探りだし、「女性画家もいる」美術史を構築しようとする試み。

転形期のメディオロジー 一九五〇年代日本の芸術とメディアの再編成

編著者:鳥羽耕史、山本直樹
発行:森話社
発行日:2019年9月
定価:4,500円(税抜)
サイズ:A5判、352ページ

1950年代の日本で、テレビに代表されるニューメディアの出現が、印刷媒体中心であった既存のメディアをいかに変容・再定義していったのか。
本書では、主に文学・映像・美術のジャンルにおいて、異なるメディア間での相互交流、越境、再編成と、それらが作品や表現にもたらしたものを再検討し、現代の錯綜するメディア状況を歴史化する視点を提示する。

増補版 ゴダール マネ フーコー 思考と感性とをめぐる断片的な考察

著者:蓮實重彥
発行:青土社
発行日:2019年10月24日
定価:2,400円(税抜)
サイズ:B6判、302ページ

映画史、絵画史、思想史を横断する。
20世紀の「あらゆる映画はサイレント映画の一形式でしかない」と論じ、21世紀の「ポスト・トゥルース」と呼ばれる時代の「ポスト」について分析する2本のテクストを増補。

Holy Onion

著者:題府基之
エッセイ:クリス・フジワラ
ブックデザイン:服部一成
発行:オシリス
発行日:2019年10月20日
定価:4,800円(税抜)
サイズ:A5判変型、ハードカバー、蛇腹製本、エッセイ収録冊子付、164ページ

一人の女性がキッチンで玉ネギの皮をむく写真がひたすら続く──。あまりに日常的な、それでいてこの上なく非日常性を孕む光景。収録されているのは、フィルム1本分全35カット。1枚の写真にその人物を象徴する瞬間がとらえれているのがポートレイト写真だとすれば、『Holy Onion』は、既成のポートレイト写真への問いかけであるのかもしれない。「1枚で見せるポートレイトってことじゃなくて、35枚全部で一つのポートレイト。今回たまたま35枚でしたが、5枚でも10枚でも1枚じゃないポートレイトに最近興味がある」と題府は語る。『Still Life』、『Hypermarché – Novembre(大型スーパー、11月)』(ミシェル・ウェルベックとの共著)に続く待望の新刊写真集。





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2019/11/15(artscape編集部)

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カタログ&ブックス | 2019年11月1日号[テーマ:文学とアートの関係を思索するための5冊]

月替わりのテーマに沿って、アートやデザインにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。今月のテーマは、読書の秋にちなんで「文学とアートの関係を思索するための5冊」。国立新美術館で開催中(2019年11月10日まで)の「話しているのは誰? 現代美術に潜む文学」などの展覧会でも試みられている、文学、テキストや「読む・書く」という行為とアート、この両者の関係を新しく照らし出すための5冊を選びました。

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ぼくの美術ノート

著者:原田治
デザイン:服部一成、山下ともこ
発行:亜紀書房
発行日:2017年2月17日
定価:2,000円(税抜)
サイズ:四六判変型、184ページ

イラストレーターとして知られ、世田谷文学館での回顧展「『かわいい』の発見」も記憶に新しい、原田治による「美術」にまつわるエッセイ集。その対象とするものは、美術館などで見られる作品にとどまらず、長谷川町子の漫画や民芸品、街の風景などにも及び、その観察眼を通して書かれる文章はどれもユーモラス。造形に携わる人ならではの着眼点とその解像度を疑似体験できる一冊です。

詩とイメージ マラルメ以降のテクストとイメージ

著者:三浦篤、千葉文夫、塚本昌則、キャロル・オルエ、マリアンヌ・シモン=及川、エレーヌ・カンペニョール=カテル、ガエル・テヴァル、鈴木雅雄、谷口円香、セルジュ・リナレス
装幀:西山孝司
発行:水声社
発行日:2015年6月27日
定価:4,000円(税抜)
サイズ:A5判上製、256ページ

美術と詩の関係性を刷新したと言われる19世紀フランスの詩人、ステファヌ・マラルメ。『乾坤一擲』など、視覚的にアプローチする詩の表現や書物の見せ方は、文学界や美術界だけでなくデザインやタイポグラフィなどにも強い影響を与えました。彼の仕事の革新性を国内外のさまざまな研究者がそれぞれの視点から分析する論考集。

こんにちは美術1 めくってたんけん!いろんな絵の巻

文と構成:福永信
発行:岩崎書店
発行日:2012年3月29日
定価:3,000円(税抜)
サイズ:240mm×220mm、48ページ

展覧会ウォッチャーとしての顔も知られる小説家・福永信が文と構成を担当した、現代美術の鑑賞入門としての絵本シリーズ1作目。現代美術に初めて触れる子どもの頭も、現代美術に苦手意識のある大人の頭も柔らかく解きほぐしてくれる、ユーモアの効いたテキストたち。掲載の作品には美術館の所蔵作品や公共の場所にあるパブリックアートも多く、気になったら実物を観に行けるのも嬉しいところ。

読書の日記

著者:阿久津隆
装丁:緒方修一
装画:唐仁原多里
発行:NUMABOOKS
発行日:2018年6月20日
定価:2,500円(税抜)
サイズ:111mm×176mm、1120ページ

東京・初台にある〈本の読める店〉「fuzkue」店主の1年間の日記本。その書名が表わすように、日々さまざまな本を読んで暮らす著者の日常を覗くことができる圧巻の1120ページ。数々の本のタイトルと肩を並べるかたちでときどき登場する、著者が鑑賞した映画や演劇、展覧会についての描写も本書の密かな読みどころで、観ること、読むこと、生活することがひとりの人のなかで溶け合う状態の豊かさに思いを馳せてしまう一冊です。

月と六ペンス(新潮文庫)

著者:サマセット・モーム
翻訳:金原瑞人
発行:新潮社
発行日:2014年3月28日
定価:630円(税抜)
サイズ:文庫判、378ページ

1919年に発表されたサマセット・モームの名作伝奇小説。主人公の友人であるストリックランドは、後期印象派の画家ポール・ゴーギャンをモデルにしたと言われており、芸術と現実の間で揺れた彼の生涯を通しての苦悩が描かれます。小説家である主人公は芸術に大して興味を持たない人物として描かれ、そんな視点からとらえたストリックランドという人物の異質さ・興味深さの描写は読み手をどんどん引き込んでいきます。





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2019/11/01(artscape編集部)

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蔦谷典子『夢の翳 塩谷定好の写真 1899-1988』

発行所:求龍堂

発行日:2019年10月10日

戦前〜戦後に、鳥取県東伯耆郡赤碕町(現・琴浦町)で心に沁みるような風景・人物写真を制作し続けた塩谷定好(1899-1988)の評価は、近年さらに高まりつつある。2017年3月〜5月にも島根県立美術館で回顧展「愛しきものへ 塩谷定好 1899-1988」展が開催されたが、今年も同美術館で「生誕120年記念 塩谷定好展」(8月23日〜11月18日)が開催されている。それにあわせて、同美術館学芸員の蔦谷典子の手で、代表作104点をおさめた本書が刊行された。

「村の情景」、「子供の情景」、「海の情景」、「花の情景」の4章に分けられた作品群をあらためて見直すと、単玉レンズ付きのヴェスト・ポケット・コダックカメラ(通称・ベス単)によるソフトフォーカス効果、印画紙にオイルを引いて描き起していく絵画的な手法を使った典型的な「芸術写真」であるにもかかわらず、そこに山陰の風土に根ざした実感のこもったリアリティが宿っていることにあらためて気づかされる。大正期から昭和初期にかけての「芸術写真」についての調査・研究もだいぶ進んできたが、個々の写真家たちの作品世界をより細やかに探求していく試みはまだまだ不十分だ。その意味で、詳細な年譜、文献目録を収録した本書の刊行の意味はとても大きい。塩谷の生家を改装した塩谷定好写真記念館の活動についても丁寧にフォローしており、同郷の植田正治らを含めた同時代の山陰の写真家たちの仕事への、よきガイドブックの役割も果たすことができそうだ。

2019/10/23(水)(飯沢耕太郎)

山崎弘義『CROSSROAD』

発行所:蒼穹舎

発行日:2019年10月10日

山崎弘義は1956年、埼玉県生まれ。1980年に慶應義塾大学文学部卒業後、公務員として働いていたが、写真に強い興味を抱くようになり、1985〜87年に東京写真専門学校(現・東京ビジュアルアーツ)写真学科の夜間部で学んだ。山崎が路上スナップを撮影し始めたきっかけは、20代後半の頃、新宿駅周辺で「至近距離で人ににじり寄り、いきなりカメラを向け、言葉を交わすこともなく立ち去っていく」男の撮影ぶりに衝撃を受けたからだという。彼が山内道雄という写真家で、東京写真専門学校夜間部の森山大道ゼミで学んだことを知り、山崎も同校に入学する。森山ゼミは既になかったが、猪瀬光や楢橋朝子も属していた写真ワークショップ「フォトセッション‘86」に参加し、森山の指導を受けることができた。

このような経歴を見ると、山崎がまさに「カメラ一台で何の細工もなしに、その現場に居あわせ」て撮るという、路上スナップの正統的な撮影スタイルを真摯に追求し続けてきたことがわかる。その姿勢は、写真集『CROSSROAD』におさめられた1990〜96年撮影の写真群でも貫かれており、衒いなく、ストレートに路上の人物、光景にカメラを向けている。唯一、「細工」といえるのは、彼がパノラマフィルムパックを使用した6×6判のカメラで撮影していることだろう。極端な横長、あるいは縦長の画面になることで、中心となる被写体(主に人物)の周辺がかなりランダムに写り込んでくることになる。そのことによって、路上でどのような現象が生じているかが、より複雑な位相で画面に定着される。それとともに興味深いのは、1990年代前半の都市の風俗、空気感が、異様なほどにリアルに捉えられていることだ。撮影から20年以上過ぎているわけだが、路上スナップの生々しさがまったく薄れていないことに驚かされた。

山崎には、老いていく母親と自宅の庭とを撮影し続けた『DIARY 母と庭の肖像』(大隅書店、2015)という素晴らしい作品があるが、『CROSSROAD』は彼の写真世界の別な一面を開示する力作といえる。

2019/10/23(水)(飯沢耕太郎)

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