artscapeレビュー
書籍・Webサイトに関するレビュー/プレビュー
うつゆみこ『Wunderkammer』
発行所:ふげん社
発行日:2023/10/10
2006年に第26回写真「ひとつぼ展」でグランプリを受賞し、翌年、ガーディアン・ガーデンで受賞記念展を開催した頃から、展覧会や作品集の形でうつゆみこの作品を見続けてきた。その過剰な創作エネルギーには、いつでも圧倒される。展覧会の会場には、ひしめくように作品が並び、同時期に何冊ものzineが刊行される。作品をプリントしたTシャツなども売られている。ある種の強迫観念の産物のような作品群をみるたびに、この人の制作行為のモチベーションは何なのだろうと思っていたのだが、今回ふげん社から刊行された写真集『Wunderkammer』に目を通して、その秘密を少しは理解できるような気がしてきた。
写真集は「yaoyorozoo」「増殖」「いかして ころして あたえて うばって」の三部構成で、全部で170点以上の作品がおさめられている。それらを見ると、初期作品も含む「yaoyorozoo」や「増殖」のパートを経て、近作が中心の「いかして ころして あたえて うばって」に至る過程で、うつの作品制作のあり方が大きく変わってきたように感じた。さまざまな場所で購入・蒐集した印刷物、オブジェ、キャラクター・グッズなどのコレクションを、構想と妄想のおもむくままに構築した「yaoyorozoo」や「増殖」のコラージュ作品は、たしかにめくるめくようなイメージ空間を形成している。ところが、その「Wunderkammer=驚異の部屋」は、二人の娘をはじめ、うつと同居する生き物たちが次々に登場してくる「いかして ころして あたえて うばって」のパートになると、むしろ彼女自身の生そのものと、見分けがたく同化してきているように見えてくる。自宅のアトリエでの創作活動こそが日常であり、社会的な営みの方が非日常化するという逆転現象が生じてきているのだ。結果として、一個一個の作品から立ち上がる切実なリアリティはただならぬものになりつつある。
この作品集が、うつゆみこの作家活動のひとつの区切りとなることは間違いないだろう。日本国内だけでなく、海外の写真関係者がどんな反応を示すのかが楽しみだ。
うつゆみこ『Wunderkammer』:https://fugensha-shop.stores.jp/items/6513bd2a5d2d4e002facecc0
2023/10/16(月)(飯沢耕太郎)
カタログ&ブックス | 2023年10月15日号[近刊編]
展覧会カタログ、アートやデザインにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
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中園孔二 ソウルメイト
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で開催された企画展「中園孔二 ソウルメイト」の記録を収めた日英バイリンガル仕様のカタログ。作家が最期の時を過ごした香川県において約200点の作品を展示した過去最大規模の個展をふりかえる。
未来社会と「意味」の境界 記号創発システム論/ネオ・サイバネティクス/プラグマティズム
AI・ロボットと人間が共存する未来社会における「意味」の意味とは何か。大規模言語モデルを超えて新たな意味の学理を構想する。
はじまりはクロマニョン 1
舞台はおよそ2万年前、描いた絵を恋人に見せたい──その純粋な心から、クロマニヨン人の少女レイナは、画家を目指すのだが……。
絵画の起源とされる「洞くつ」壁画を題材に、クロマニヨンの主人公レイナが様々な困難にぶつかりながらも、画家として成長していく愛と成長の物語。記念すべき第1巻です。
メディア論の冒険者たち
メディアについての議論百出諸説紛紛。ベンヤミン、マクルーハン、ボードリヤール、エーコ、マクロビー、キットラー、マノヴィッチ、ラマール、ホイ……。彼ら/彼女らがメディアに関して紡いだ思考の核心を浮かび上がらせる。第一線で活躍するメディア研究者が執筆するメディア論を知り学ぶための最強テキスト。
「第11回ヒロシマ賞受賞記念 アルフレド・ジャー展」カタログ
第11回ヒロシマ賞の受賞者アルフレド・ジャーの受賞記念展(広島市現代美術館)を記録したカタログ。作家にとって日本国内で初の本格的な個展となる本展は、その代表作から新作までを総覧するものとなった。
新版 卒業設計コンセプトメイキング リサーチ・デザイン・プレゼンテーション
卒業設計は、学生自らがテーマを探し出し、論理的思考プロセスを積み重ね、オリジナリティある提案をすることが必要となる。実際の学生の作品をもとにした対話を軸に解説。新版では、課題設定、フィールドワーク/リサーチ、建築的・空間的なアイデア、プレゼンの4つに再編成。より本質的なコアな部分に絞り込む内容とした。
アートベース・リサーチの可能性 制作・研究・教育をつなぐ
アートをベースにするとはいかなることか。最新の研究動向をとらえ、美術研究者・芸術家がアートベース・リサーチを多角的に分析。
建築思想図鑑
建築思想を理解すれば、つくる建築、語る言葉の説得力が増す。いま知っておくべき建築思想63項目の基本を、本質を押さえたイラストと、気鋭の執筆陣による解説で理解できる入門書。難しそうな言葉でも、まずはイラストを眺めて一歩を踏み出し、建築の奥深さに触れてみよう!時代の流れや項目同士の結びつきも見えてくる。
K-PUNK 夢想のメソッド──本・映画・ドラマ
ポスト左翼がブレグジットに直面した際に、旧来の左翼の惰性を非難し「右傾化」することが「大人」だとされたときも、マーク・フィッシャーはその惰性をどうしたら脱却できるのかと向き合い、安易な「右傾化」に同調することもなかった。
アカデミックになることなく、つねにポピュラー・ミュージックや映画、大衆文学を出発点としながら大衆迎合主義に陥ることも回避しつづけてきた知性の、彼の人気を決定づけた原点にしてすべて──それが彼の伝説のブログ『K-PUNK』だった。
坂本龍一のメディア・パフォーマンス
坂本龍一が「パフォーマンス元年」と称する「1984年」に注目し、生涯にわたって「メディア」を革新し続けた芸術家としての足跡をあらためて紐解く。
メディア戦略としての出版社「本本堂」、書籍というメディウムそのものによるパフォーマンス、世界最大級のテレビ「ジャンボトロン」を用いたメディア・イベント「TV WAR」……
多彩なプラットフォームで発表された作品群、その時々に遺された発言、そして、坂本龍一へのインタビューをもとに、「マス・メディアの中の芸術家像」を「メディア・パフォーマンス」というキー・タームから解き明かす。
戒厳令下の新宿 菊地成孔のコロナ日記 2020.6-2023.1
神田沙也加、瀬川昌久、上島竜兵各氏への追悼、村上春樹氏との邂逅、コロナ感染記……。音楽業界を壊滅的状況に陥れたコロナ禍、その抑鬱と祝祭の二年半の記録。
写真よさようなら 普及版
写真集史上の永遠の問題作にしてロングセラー。1972年に写真評論社より刊行された『写真よさようなら』を底本とし、2019年に月曜社より刊行された『森山大道写真集成(3) 写真よさようなら』における構成をもとに、装丁を新たにし判型をコンパクトにした普及版。中平卓馬との対談全文掲載。収録写真145点。「写真というものを、果ての果てまで連れて行って無化したかった」(森山大道)というそのラディカリズムは、刊行後50年以上を経てなお、その衝撃力を失っていない。
絵画の解放 カラーフィールド絵画と20世紀アメリカ文化
ヘレン・フランケンサーラー、モーリス・ルイス、ケネス・ノーランド、ジュールズ・オリツキー、フランク・ステラら、20世紀半ばのアメリカで隆盛したカラーフィールド絵画の代表的画家5名を取り上げ、同時代の展覧会評や批評、美術動向に関する言説を丹念に読み解き、20世紀アメリカ文化との豊かな関係性を明らかにする。
マルクス解体 プロメテウスの夢とその先
いまや多くの問題を引き起こしている資本主義への処方箋として、斎藤幸平はマルクスという古典からこれからの社会に必要な理論を提示してきた。本書は、マルクスの物質代謝論、エコロジー論から、プロメテウス主義の批判、未来の希望を託す脱成長コミュニズム論までを精緻に語るこれまでの研究の集大成であり、「自由」や「豊かさ」をめぐり21世紀の基盤となる新たな議論を提起する書である。
2023/10/13(金)(artscape編集部)
ジェシカ・ワイン『数学者たちの黒板』
翻訳:徳田功
発行所:草思社
発行日:2023/07/20
先日、仕事で中国・北京に滞在したおりに、クリストファー・ノーランの新作『オッペンハイマー』(2023)を観る機会があった。原爆の父ロバート・オッペンハイマー(1904-1967)を主人公とするこの伝記映画は、2023年9月末日現在、いまだ日本公開の目処が立っていないことで知られる。あくまで憶測の域を出ないとはいえ、その理由は、日本が世界で唯一の被爆国──というより、この映画で開発される原子爆弾の投下された国──であるという事実と無関係ではないだろう。さらに、SNS上で物議を醸した「バーベンハイマー」現象の余波もあり、同作は映画としての内容以前に、公開前から──良くも悪くも──高い注目を集めている。
ここでその『オッペンハイマー』について詳しく語るつもりはないが、個人的にこの映画で印象的だった要素のひとつが、物語中つねに大きな存在感を示す「黒板」の存在だった。知られるように、理論物理学者であったオッペンハイマーが「原爆の父」と言われるのは、かれが原爆開発を目的とするマンハッタン計画で主導的な役割を担った人物だからである。そんな科学者を主人公とする映画とあらば自然なことだが、本作には前途有望な若きオッペンハイマー博士が黒板を背に講義する場面が頻繁に登場する。そして、やがて始まるマンハッタン計画のために集った科学者たちの議論もまた、いつも複雑な式をともなった黒板を背になされるのだ。科学者たちが集まるところ、つねに黒板がある──。この事実は、やはり本作品の主要な部分を占める政治的な弁論(公聴会)の場面が口頭でのやりとりに終始するのと、どこか対照的である。
そんな特異な媒体としての黒板に着目したのが、写真家ジェシカ・ワイン(1972-)による「Do Not Erase」というプロジェクトだ。本書『数学者たちの黒板』は、このプロジェクトをもとにした作家初のモノグラフであり、原著は2021年にプリンストン大学出版局から上梓されている。
本書に収められた109枚の写真は、いずれも数学者たちの黒板を写しとったものだ。教室や研究室のものと思しき黒板には、個性豊かな図や数式が描かれており、どれひとつとして同じものはない。これを書いているわたしも含め、その内容を十全に理解できる者はほとんどいないだろうから、大多数の読者はこれを、ひとつのタブローとして把握することになるだろう。
その黒板の写真には、それぞれのタブローの「作者」である数学者たちの短いエセーが添えられている。これらもまた、写真に劣らず興味深いものばかりだ。とはいえ、その内容は人によってさまざまで、自分が数学の道に足を踏み入れた経緯について語る者、おのれの研究にとっての黒板の重要性について語る者、あるいは数学の愉しみをここぞとばかりに語る者など、個性豊かな100本あまりのエセーが写真の「キャプション」として並ぶ。
なかでも、これらのエセーには共通する一定の特徴がある。まず、本書に登場する数学者たちが総じて強調するのは、コミュニケーションの手段としての黒板の重要性である。ごく当たり前のことだが、PCやノートと比べてはるかに大きな面積を有する黒板は、その場に集まった複数の人間が即座に同じ情報を共有するのに適している。また、スクリーンに投影されたスライドなどとは異なり、その場で──原理的には──誰もが気軽に加筆・修正できるという点でも優れている。本書のもとになったプロジェクトが新型コロナウイルスの流行期に重なったという事情もあってか、本書に登場する複数の数学者が、オンラインでの議論では同じ成果が得られないとこぼしているのも印象的だ。
なかには、ウィルフリッド・ガンボやシミオン・フィリプのように、黒板がもたらす「遅さ」の重要性を強調する者もいる。講義や研究発表のさいに黒板を使用するとなれば、あらかじめ準備した資料にもとづいて内容を説明するよりも、ゆっくりとしたペースにならざるをえない。しかしそのことが結果的に、はじめてその内容にふれる他者の理解を促進する結果につながる、というのだ(20、82頁)。あるいはロネン・ムカメルが指摘するように、黒板を用いた講義や研究発表は「人間の思考の速さで行われる」がゆえに、「準備不足のパワーポイント」などよりもはるかにその優劣を浮き彫りにするだろう(78頁)。
かれら数学者のなかには、黒板のもつ物質性に大きな偏愛を抱く者が少なくない。例えば、本書のはじめに登場するフィリップ・ミシェルのエセーはこんなふうに始まる──「黒板は数学の研究をする生活の基本要素だ。10年前にローザンヌの職場に着いて私が最初にしたのは、悪臭のする赤いペンの置かれた醜いホワイトボードを、本物の黒板と交換するように手配したことだった」(12頁)。このような〈黒板≠ホワイトボード〉という考えかたは、アラン・コンヌ(54頁)、エスター・リフキン(152頁)、ジョン・モーガン(192頁)らも共有するところである。
他方、アミー・ウィルキンソンのように、黒板で数学の研究をすることが「触覚的な経験」(14頁)だと言う者もいる。かと思えば、フィリップ・オーディングのように、指導教員のオフィスにあったスレート製の黒板でチョークが奏でる、不思議なほど「一様な音」について語る者もいる(30頁)。黒板は視覚的なメディアであるにとどまらず、触覚的、聴覚的なメディアでもあるのだ。
本書にはまた、2015年に廃業した日本のメーカー・羽衣文具の栄光が書き留められていることも特筆しておきたい。前出のフィリップ・ミシェルは次のように言う──「滑らかに、途切れることなく書き込むには、上質のチョークも重要だ。特に感動したのは、ある年にクリスマス休暇から戻った博士研究員が、伝説的な日本の『ハゴロモ・フルタッチ・チョーク』を2箱持ってきてくれたときだった」(12頁)。羽衣文具のフルタッチ・チョークは数学者のあいだでは知られた逸品であったらしく、同社の廃業のさいには世界中の数学者による買い占めが起こったという。バッサム・ファヤドが言う「日本製の上質のチョーク」というのも、おそらくこの羽衣チョークのことだろう(156頁)。
昨今、大学の内外における講義や研究発表のほとんどは、Microsoftのパワーポイントをはじめとするデジタルツールによって行なわれている。本書はそうした世の趨勢に対し、実のある説明や議論をするには、黒板というオールドメディアが必要であることを高らかに唱える。それは、おそらく本書の主題である数学に限った話ではなく、新たなアイデアを生み出そうとするあらゆる分野の仕事に当てはまるだろう。本書に登場する数学者たちは、真に創造的な仕事のためには、黒板のような物質的抵抗をともなったメディアが必要であることを示唆しているように思われる。
2023/10/05(木)(星野太)
カタログ&ブックス | 2023年10月1日号[テーマ:荒川修作+マドリン・ギンズと「意味」の湖を楽しく泳げるようになる5冊]
「意味」とは何か。「荒川修作+マドリン・ギンズ《意味のメカニズム》全作品127点一挙公開 少し遠くへ行ってみよう」展(セゾン現代美術館にて2023年10月31日まで開催)で出会えるのは、我々が思考のなかで圧倒的な力をもつ言語や論理を超えて、意味の構築を探る実験場。“少し遠く”への補助線となる5冊を紹介します。
今月のテーマ:
荒川修作+マドリン・ギンズと「意味」の湖を楽しく泳げるようになる5冊
1冊目:22世紀の荒川修作+マドリン・ギンズ 天命反転する経験と身体
Point
死なないための方法を模索していた荒川の、没後10年に編まれた書籍。巨匠から若手まで幅広い書き手による論考・エッセイだけでなく、三鷹天命反転住宅でのワークショップのレポートや、そこに住む人々の素朴な所感に触れられる対話録まで、さまざまな形の荒川+ギンズとの接点や思い入れに触れられる賑やかな一冊。
2冊目:荒川修作の軌跡と奇跡
Point
荒川の生涯通じての作品や仕事、その変遷をある程度俯瞰して知りたい人におすすめ。生前の荒川+ギンズと深い親交のあったダダイスム・シュルレアリスム研究者の塚原史氏だからこその親密な視点が端々で垣間見えます。豊富な図版や対談を通して、荒川が一貫して希求していたものが読む前よりも立体的に見えてくるはず。
3冊目:絶滅へようこそ 「終わり」からはじめる哲学入門
Point
上で紹介した『22世紀の〜』にも寄稿する気鋭の哲学研究者・稲垣諭による論考集。人類はすでに絶滅に向かっているという仮定に立って考える、現代の私たちの「生」との距離。その思索の入り口として登場する、iPhoneなどのデバイスや、セルフレジ、K-POPのアイドル、村上春樹といったトピックの並びも絶妙。
4冊目:数学する身体
Point
学生時代に荒川に出会い衝撃を受け、数年後に三鷹の養老天命住宅に入居。晩年の荒川と時間を共にし、大きな影響を受けた1985年生まれの数学者・森田真生のデビュー作。本書で綴られる荒川とのエピソードの面白さはもちろんながら、身体的な思考の道具として数学を捉え直すきっかけとして、数学アレルギーの人こそぜひ。
5冊目:考える練習
Point
荒川にまつわるテキストをたびたび書いている小説家・保坂和志による語りの連なり。文学についてだけでなく社会問題、スポーツ、経済といった身近な話題を通じ、いかに論理的思考や「わかる」ことから遠くに行って思考できるかのを模索をテーマにしているという点でも《意味のメカニズム》との強い共振を感じさせます。
荒川修作+マドリン・ギンズ《意味のメカニズム》 全作品127点一挙公開 少し遠くへ行ってみよう
会期:2023年4月22日(土)~10月31日(火)※会期延長
会場:セゾン現代美術館(長野県北佐久郡軽井沢町長倉芹ケ沢2140)
公式サイト:https://smma.or.jp/exhibition/shusakuarakawamadelinegins
2023/10/01(日)(artscape編集部)
カタログ&ブックス | 2023年9月15日号[近刊編]
展覧会カタログ、アートやデザインにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
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明日少女隊作品集「We can do it !」
「第4波フェミニズム」期のまっただなか、2015年に誕生した社会派アートグループ「明日少女隊」。これまでの作品や活動を網羅するだけでなく、ジェンダー学の基礎知識や時事問題をふんだんに盛り込み、「フェミニスト×アート」を実践的に学べる入門書決定版!
超老芸術
2023年10月3日~10月8日まで、アーツカウンシルしずおかで開催される展覧会の図録。
「超老芸術」とは著者の造語で、「老いを超える」という字のとおり、高齢になってから、または高齢になってもなお、精力的に表現活動をおこなっている人たちのことである。
本書は厳選した25名の超老芸術家の作品とインタビューをオールカラーで収録。長い人生の中で成功だけでなく身近な人の死、貧困、災害などさまざまな喪失体験も重ねながら、それらを表現へと昇華する超老芸術家たちはどういった人生を歩み、なぜその表現に至ったのか。
日本で唯一の「アウトサイダーキュレーター」である著者が、人生100年時代に長く楽しく生きるヒントを彼らのなかに探る。
なぜ美を気にかけるのか 感性的生活からの哲学入門
お気に入りの服を着る、おいしいものを食べる、好きな映画をみる──こうした日常のさまざまな美的選択は、人生にどのような意味をもたらすのか。人はなぜ美的な暮らしを送るのか。現代美学を代表する論者たちが3つの答えを提案する、哲学入門の授業向けに書かれた教科書。著者たちによる座談会とティーチングガイドつき。
小杉幸一(ggg Books 世界のグラフィックデザイン)
デザインでその企業や商品、サービスのキャラクターを明快にし、クリエイティブディレクション、アートディレクションを行う小杉幸一の活動の航跡をたどる作品集。ポスターやチラシ、装丁等のデザインをカラーで紹介する。
創造性はどこからやってくるか──天然表現の世界(ちくま新書)
考えてもみなかったアイデアを思いつく。急に何かが降りてくる─。そのとき人間の中で何が起こっているのか。まだ見ぬ世界の〈外部〉を召喚するためのレッスン。
Dance Fanfare Kyoto Document vol.01-04ダンスの閉塞感から身体の可能性へ
Dance Fanfare Kyotoは2013年から2015年の3年間、作品のクリエイションを通して、関西のダンスシーンの活性化と舞台芸術における身体の可能性の探究をめざす実験の場として活動。2020年の新型コロナウイルスの感染拡大によって受けた大きな打撃をきっかけに、Dance Fanfare Kyotoの成果やコロナ禍以前の関西ダンスシーンの再検証を目的にこのドキュメントが制作された。公式サイトの記事や書き下ろしなどによって構成。
ジョセフ・アルバースの授業──色と素材の実験室
2023年7月29日~11月5日まで、DIC川村記念美術館で開催されている展覧会の図録。
バウハウス、ブラックマウンテン・カレッジ、イェール大学という三つの重要な教育機関で教え、今日なお影響を与え続ける画家・デザイナー、ジョセフ・アルバース。制作と教育の両側面から、その全貌に迫る。
奥能登国際芸術祭2023公式ガイドブック「最涯の芸術祭、美術の最先端」
能登半島の先端、石川県珠洲市を舞台に2017年にスタートした奥能登国際芸術祭が2023年秋に第3回目を迎えます。珠洲市は、5月に震度6強の地震に見舞われましたが、アートを通して地域と地域を、また珠洲市と世界をつなぎ、震災からの復興にむけた光として、9月23日~11月12日まで芸術祭が開催されます。
本書は10のエリアに展開するすべての作品、イベントを紹介し、アクセスからモデルコースなどの巡り方ガイド、現地での飲食・宿泊・お土産など旅に必要な情報までを完全網羅した公式ガイドブックです。
藤森照信の現代建築考
明治初期に開拓した日本の建築という新しい領域にモダニズムが如何にして浸透してきたのか。日本の建築界は近代という激変の時代に、コルビュジエやバウハウスの影響を受けながらも対応してきた。時代を代表する建築家たちの45作品を通してその特質を考察する。
ル・コルビュジエ モダンを背負った男
ル・コルビュジエの評伝。生い立ちから最期までを描き、ル・コルビュジエの生きざまと思考に迫る一冊。『ジェイコブス対モーゼス ニューヨーク都市計画をめぐる闘い』を著したジャーナリスト、アンソニー・フリントによる巨匠ル・コルビュジエの包括的な評伝。
色から読みとく絵画 画家たちのアートセラピー
〈 一枚の絵が生きた人間の物語としてあらわれる 〉
生きることに困難を抱えた画家たちは、内面に渦巻く感情をキャンバスに解き放ち、心を癒やし、生命の歓びを描いた──。
色彩心理の研究をもとに長年アートセラピーに取り組み、絵は人の心の表現だと考える著者が作品を深く味わう見方をつづる。
Continuum 想像の語彙
2023年7月6日〜9月24日まで、東京オペラシティ アートギャラリーで開催中の展覧会の図録。
いつの時代のものともしれない謎めいた建造物がぽつりと建っている。鑑賞者を時空を超えた世界へと誘う美術家・野又穫の初期〜最新作を紹介。
アートとフェミニズムは誰のもの? (光文社新書)
アートとフェミニズムは少なくない人びとから、よく見えていないのです。「よく見えていない」とは、見ていて良い気がしない、というのもありますが、どちらかと言うと、そこにあることはわかっているのだけど、見通しが悪くてその実態がよく見えないということです。いわば、アートとフェミニズムは、(中略)入門したくてもしにくい「みんなのものではないもの」なのです。(「はじめに」より)もともと、「みんなのもの」になろうとするエネルギーを持っているアートとフェミニズム。現代社会では両者に対する理解の断絶が進んでいる。この状況に風穴を開けるには──。美学研究者による新しい試み。
挑発関係=中平卓馬×森山大道
2023年7月15日~9月24日まで、神奈川県立近代美術館 葉山館で開催中の展覧会の図録。
現代写真史に大きな独自の足跡を残す二人の写真家の、若き日にともに過ごした葉山、逗子(神奈川)を起点に、世界のアートに越境的に影響を与えてきた二人の、その出発点と現在を貫く「挑発関係」の共振と発信を跡づける、初めての貴重な試み。「27歳になったばかりの中平卓馬とぼくが、逗子の海で、葉山の海で日々を過ごしていた頃の遠い夏の記憶は、ぼくとしてはまさに「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい」ということになろうか。つまり、写真家・中平卓馬と写真家・森山大道の二人は、現在も終わることなき〈挑発関係〉を続けているのかもしれない」(森山大道〔あとがき〕より)。
庭のかたちが生まれるとき 庭園の詩学と庭師の知恵
徹底的に庭を見よ!
作庭現場のフィールドワークから、庭の造形を考え、庭師の生態を観察し、庭のなりたちを記述していく、新感覚の庭園論がここに誕生!
庭師であり美学者でもあるというユニークなバックグラウンドを持つ注目の研究者・山内朋樹の待望の初単著。
障害の家と自由な身体──リハビリとアートを巡る7つの対話
バリアフリーは「障害者」を「健常者」に合わせる考え方だが、社会の均質化につながるのではないか。本当のゆたかさは「障害」の側にあるのではないか。そうした意識から、アーティストである大崎晴地は、障害そのものを建築的に考える《障害の家》プロジェクトを進めてきた。三度の展示を経て、建設に向けた計画が始まっている。本書はこれまでの展示と連動して行なわれた対談・座談の記録集であり、「障害」「家」「リハビリ」「アート」を多角的に考えるための一冊である。「障害」が、真のゆたかさと自由につながる。哲学/精神医学/建築/アートを横断しながら、障害を考える対話集。
DRAWING ドローイング 点・線・面からチューブへ
ドローイングとはなにか? いまなぜ、ドローイングは世界的に重要視されているのか? その答えは、描かれたラインを「チューブ」として捉えたときに見えてくる──国際的に注目されるアーティスト・鈴木ヒラクが書き下ろす渾身の〈ドローイング原論〉。
2023/09/14(木)(artscape編集部)