artscapeレビュー

デザインに関するレビュー/プレビュー

ルドルフ・シュタイナー展 天使の国

会期:2014/03/23~2014/08/23

ワタリウム美術館[東京都]

ワタリウム美術館のルドルフ・シュタイナー展は、過去にも開催されているが、今回はとくに最初のゲーテアヌム(1922)の建設、完成、そして放火による焼失まで、約16分間のスライドショーが圧巻だった。曲線が多い、複雑な造形や装飾をよく木造で施工したなあと感心させられる。大量の写真を通じ、第1ゲーテアヌムの記録で、これだけ詳しいものは初めて見ることができた。時期的には、田舎においてRC造で全部つくるのは大変だろうが、3Dプリンタのように、木の層を幾重にも積みあげて、有機的な内部ヴォリュームがつくられている。その大変さゆえに、逆説的にかたちへの意志が感じられた。

2014/07/12(土)(五十嵐太郎)

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杉浦康益「陶の博物誌──自然をつくる」展

会期:2014/06/07~2014/08/03

西宮市大谷記念美術館[兵庫県]

杉浦康益は、2012年度に日本陶磁協会賞を受賞したほか、2013年には瀬戸内国際芸術祭にインスタレーションを出品、近年ますます注目を集めている作家。今回出品されているのは、《陶の岩》《陶の木立》《陶の博物誌》のシリーズと、《落花のしゃら》のインスタレーション。《陶の岩》は、石膏で自然にある岩を型取ってつくられる、実物の岩と見紛うばかりの作品である。本展では、野外庭園にも《陶の岩》が置かれているが、言われなければわからないほど、その場に馴染んでいる。《陶の木立》は、木立を模したダイナミックさと自然の花の繊細さを兼ね備えた、大きなインスタレーション。なにより出色なのは、《陶の博物誌》シリーズ。陶による27品種の自然の花々がずらりと並ぶ。驚くのは、植物構造の徹底的に細密な表現。杉浦は「花の美しさ」に興味があるのではなくて、「花の内部構造が示すエネルギー、生命力」に魅かれたのだという。科学的な観察眼でもって、植物の生命を象る構造・各部位が精密に表現されるばかりでなく、ヒマワリの花・朽ちゆくヒマワリ・朽ちかけたヒマワリの種子など花の成長過程までもが制作される。その根底にあるのは、自然に対する畏敬の念であろう。杉浦のまなざしと実践に深く心を揺さ振られた。[竹内有子]

2014/07/12(土)(SYNK)

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世界のビーズ

会期:2014/06/18~2014/09/13(*8/10~17は夏期休館)

文化学園服飾博物館[東京都]

「ビーズ」と聞いてイメージしたのは手芸で用いられる小さなガラスビーズ。日本では広島県に大きなメーカーが2社あり、ビーズの製造と輸出を行なうほか、手芸教室を支援し、ビーズ細工の普及に努めている。小さな商店のレジのあたりに置かれているビーズでできた動物とか置物、ビーズと安全ピンでできたドレスを着たキューピー人形、手作りのケータイストラップなどは、彼らの営業努力の賜物である。2013年からは国内最大手のひとつトーホー株式会社(広島市)が、「ビーズビエンナーレ」というビーズアートの祭典を主催している。
 日本における手芸としてのビーズ細工は1980年頃からはじまったもののようであるが、世界的に見るとその歴史は古い。ビーズの定義にもよるが、基本的にはどのような素材であっても、穴をあけて糸でつないでつくられる装飾品はいずれもビーズと呼んでよいようだ。勾玉もビーズの一種である。本展で取り上げられているビーズには、貝、真珠、木の実や果物の種、動物の牙、貴金属、貴石、金属貨幣、ガラス、魚のウロコやニカワでできたスパングルまで、多様な素材を見ることができる。「装飾品」と書いたが、じつはビーズ細工の意味・目的もまた国や地域、時代によって異なる。魔除けであったり、身体の一部・急所を保護するものであったり、富や財産の象徴、身分や社会的立場を示すものであったり、たんなる装飾の一部であったりと、さまざまなのである。
 2階展示室では主にアジア・アフリカ地域におけるビーズ、1階展示室ではヨーロッパのビーズが展示されている。東アジア地域では、古来装身具で飾り立てる慣習がなく、ビーズが大量に利用されることもなかったという。日本においても現在のビーズ細工の隆盛とは異なり、装身具の一部に珊瑚や真珠の玉が用いられる程度だったようだ。これに対して南アジアでは、紀元2世紀頃にインドで管引きのガラスビーズが大量につくられるようになり、装飾の他、清浄や生命力の象徴、魔除けとして利用され、また世界各地に輸出された。西アジア・中央アジアでは、遊牧民がコインをビーズに仕立てて財産として身につけたほか、魔除けとしての意味もあったという。アフリカには大航海時代以降ヨーロッパ製のガラスビーズが交易品として大量に持ち込まれた。彼らにとって高価な輸入品であったビーズは装身具として用いられると同時に、富や権力の象徴にもなった。アフリカ北部では比較的大粒のビーズが、南部では小粒のビーズが好まれたようであるが、これはビーズ商人がアフリカ大陸を南下するにつれて最終的に小粒のビーズが売れ残ったためなのだそうだ。ヴェネツィアやボヘミアなど、ビーズ製造の中心地があるヨーロッパでは、富を象徴するのは貴金属や貴石であり、ビーズはドレスやバッグに用いられて主に華やかさを演出する装飾として用いられることが多いという。これら実物の展示と、ビーズの交易ルートを時代ごとに色別で示した世界地図のパネルを合わせてみると、同じ装飾材料が地域によって異なる意味で受け入れられていった様がわかり、とても興味深い。[新川徳彦]


2階展示風景


1階展示風景

2014/07/09(水)(SYNK)

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「建築の皮膚と体温──イタリアモダンデザインの父、ジオ・ポンティの世界」展

会期:2014/06/06~2014/08/19

LIXILギャラリー大阪[大阪府]

「イタリアモダンデザインの父」と呼ばれる、ジオ・ポンティの仕事のうち、陶磁(タイル)に焦点を当てた展覧会。ポンティが建築で用いたタイルが再現されるほか、デザイン、図面・スケッチ、写真、映像資料等約50点が展示されている。ミラノ工科大建築学科を出たポンティが初めて手掛けたのは、建築ではなくて、陶磁器のデザインだったことは象徴的だ。それは彼の後の建築実践に十分に生かされることになる。展示されたアイントホーフェンのデパートファサードのタイルを見て触れてみると、絶妙な凹凸が生み出す表現と一つひとつ異なる釉薬のかかり具合が触発する手触りから、ポンティが工業製品に「手跡」を残そうとしたことがわかる。もうひとつ、本展で印象に残るのは、彼のグラフィカルな表現への志向である。インタビューで自らが語るように、若き日に画家を目指していた彼は、終生、グラフィックへの思い入れを持ち続けたのだと思う。ヴェネズエラの《ヴィラ・プランチャート》の映像や、本展で再現されたカラフルで軽やかな空間表現を見ると、見る人の目を楽しませることへのこだわりに気が付くだろう。楽しい気分になる展覧会である。[竹内有子]

2014/07/06(日)(SYNK)

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プレビュー:ジョージ・ネルソン展──建築家、ライター、デザイナー、教育者

会期:2014/07/15~2014/09/18

目黒区美術館[東京都]

目黒区美術館で、アメリカのデザインディレクター・ジョージ・ネルソン(George Nelson, 1908-86)の展覧会が開催される。ネルソンはハーマンミラー社で1964年から25年間にわたってデザイン部長を務め、そのあいだにチャールズ&レイ・イームズ夫妻を同社のデザイナーとして起用し、ハーマンミラー社を世界的な家具メーカーに育てたことで知られる。本展はドイツのヴィトラ・デザイン・ミュージアムが所蔵するネルソン関連コレクションを中心に約300点の家具、プロダクト、模型、映像などによって構成されるアジア巡回展のひとつ。デザイナーとしてのネルソン、あるいはミッド・センチュリーのデザインを回顧するだけではなく、ネルソンのライター、教育者としての側面も掘り下げてゆくという。モノと人と仕事とのつながりを考えたという彼の仕事は、これからのデザインのあり方を考えるうえでもおおいに参考になるに違いない。デザインに関わる人にとって必見の企画であろう。[新川徳彦]


左=ジョージ・ネルソン、1965頃
George Nelson, ca.1965
Photo: Vitra Design Museum Archiv
右=ボール・クロック、1948
Ball Clock, 1948
Photo: Vitra Design Museum


左=ストレージウォール(『ライフ』誌掲載)、1945
Storage Wall, published in Life Magazine, 1945
Photo: Herbert Gehr ©Vitra Design Museum Archiv
右=「アメリカ博覧会」の展示模型“ジャングルジム”とネルソン・オフィスのスタッフ
モスクワ、1959
Two staff members in Nelson's office with a model for the American National Exhibition "jungle gym", Moscow, 1959
Photo: Vitra Design Museum Archiv

2014/06/29(日)(SYNK)

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