artscapeレビュー
杉浦康益「陶の博物誌──自然をつくる」展
2014年08月01日号
会期:2014/06/07~2014/08/03
西宮市大谷記念美術館[兵庫県]
杉浦康益は、2012年度に日本陶磁協会賞を受賞したほか、2013年には瀬戸内国際芸術祭にインスタレーションを出品、近年ますます注目を集めている作家。今回出品されているのは、《陶の岩》《陶の木立》《陶の博物誌》のシリーズと、《落花のしゃら》のインスタレーション。《陶の岩》は、石膏で自然にある岩を型取ってつくられる、実物の岩と見紛うばかりの作品である。本展では、野外庭園にも《陶の岩》が置かれているが、言われなければわからないほど、その場に馴染んでいる。《陶の木立》は、木立を模したダイナミックさと自然の花の繊細さを兼ね備えた、大きなインスタレーション。なにより出色なのは、《陶の博物誌》シリーズ。陶による27品種の自然の花々がずらりと並ぶ。驚くのは、植物構造の徹底的に細密な表現。杉浦は「花の美しさ」に興味があるのではなくて、「花の内部構造が示すエネルギー、生命力」に魅かれたのだという。科学的な観察眼でもって、植物の生命を象る構造・各部位が精密に表現されるばかりでなく、ヒマワリの花・朽ちゆくヒマワリ・朽ちかけたヒマワリの種子など花の成長過程までもが制作される。その根底にあるのは、自然に対する畏敬の念であろう。杉浦のまなざしと実践に深く心を揺さ振られた。[竹内有子]
2014/07/12(土)(SYNK)