artscapeレビュー

デザインに関するレビュー/プレビュー

プレビュー:フィンランドのくらしとデザイン ムーミンが住む森の生活

会期:2013/01/10~2013/03/10

兵庫県立美術館[兵庫県]

1950年代以降、国際的に高い評価を受けているフィンランドのデザインを紹介する展覧会。トーヴェ・ヤンソンが創造し、フィンランドの風土やライフスタイルを学ぶよきバイブルと言われる「ムーミン」をガイド役に、19世紀末から20世紀前半の民族主義、『ムーミン』の原画、アルヴァ・アアルトやカイ・フランクの製品デザイン、マリメッコのテキスタイル、現在の公共デザインなど約350点を紹介する。「人間と自然の共存」や「家庭や地域コミュニティの相互扶助」を基本とし、現在のユニバーサル・デザインやエコ・デザインにも大きな影響を与えているフィンランド発のデザインの魅力を知る絶好の機会だ。

2012/11/20(火)(小吹隆文)

The Posters 1983-2012 世界ポスタートリエンナーレトヤマ受賞作品展

会期:2012/11/06~2012/12/21

dddギャラリー[大阪府]

「世界ポスタートリエンナーレトヤマ(IPT)」開催10回目を記念し企画された展覧会。歴代の受賞作品のなかから、重要な作品を厳選し紹介している。1985年から3年毎に開催されるこのイベントは日本で唯一の本格的な国際ポスターコンペティションだという。ポスターが鑑賞の対象になるかどうかはともかく、実大のポスターは迫力満点で、雑誌や新聞、チラシなどの印刷媒体で見るのとは一味も二味も違う。またポスターはよく「時代を映す鏡」にたとえられるが、各時代の関心事や流行がわかるので別の角度からも楽しめる。[金相美]

2012/11/20(火)(SYNK)

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47 GOOD DESIGN──47都道府県のグッドデザイン賞

会期:2012/11/01~2013/01/27

d47 MUSEUM[東京都]

「d47 MUSEUM」は47都道府県を切り口にそれぞれのデザインやクラフトなどを紹介するスペース。ナガオカケンメイ氏がディレクターを務め、2012年4月に渋谷ヒカリエの8階にオープンして以来、4回目の企画展となる今回の展示のテーマは「グッドデザイン賞」。日本から海外への輸出品の模倣対策を主眼に1957年に発足したグッドデザイン賞は、日本のプロダクトの質を向上させると同時に、海外の模倣ではない日本独自のデザインの創造と発見にも資してきたものと思う。本来は日本対海外という枠組みでの話であるが、これまでの受賞作を生産者の都道府県別に分けると、クラフトのみならず工業製品にもローカリティが見えてくるのである。北海道・旭川や山形県・天童の木工家具、佐賀県や長崎県の陶磁器、福井県・鯖江のメガネや、新潟県・燕のカトラリなどは良く知られていよう。大阪府には画材や文房具、家電メーカーが集中しており、受賞製品も多い。もっとも意外であったのは、奈良県にプラスチック製品のメーカーがいくつも立地しており使い勝手に優れた日用品をつくっていることであった。[新川徳彦]

2012/11/18(日)(SYNK)

分館爲三郎記念館 特別展 高北幸矢インスタレーション「落花の夢」

会期:2012/10/13~2012/12/16

古川美術館[愛知県]

古川美術館・分館の為三郎記念館にて、デザイナーの高北幸矢によるインスタレーション展「落花の夢」を見る。すでにガラスの透明性を獲得しつつも、凝った木造のディテールが共存する近代の数寄屋建築のあちこちに、赤い造花がささやかに散りばめられる。建築と庭の空間を引き立てる展示だった。

2012/11/10(土)(五十嵐太郎)

日本の映画ポスター芸術

会期:2012/10/31~2010/12/24

京都国立近代美術館[京都府]

1930~1980年代に日本でつくられた映画ポスター約80点を採り上げ、映画ポスターの歴史を振り返る展覧会。筆者のようなアート系の人間が「おもしろい」と感じるのは、1960年代以降の日本アート・シアター・ギルド(ATG)のポスターや、粟津潔、横尾忠則などのグラフィック・デザイナーを起用したポスターだ。しかし、映画ポスターというジャンルが芸術よりもデザインの範疇に属するものであることを考えれば、映画の宣伝効果というその機能を考慮せねばならないだろう。そういう意味では、対象が映画であれ演劇であれ、同様の作風を貫くグラフィック・デザイナーのポスターよりも、看板絵のような野口久光のポスターのほうが、映画ポスターの目的にはかなっていたかもしれない。加えて、現代からみればキッチュな表現にとれる岩田専太郎のイラストレーションが溝口健二の映画ポスターに起用されたのは奇異に思えるが、それは、いまでは前衛の先駆とされる溝口映画も当時は大衆の娯楽であったということなのだろう。いずれにせよ、ポスター研究には芸術性の視点だけでなく、それに付随するさまざまな視点からの考察が必須となる。今回、映画ポスターを通史的に展示したのは貴重な機会であったが、今後はなにをもって「映画ポスター芸術」ということが言えるのかを学問的に検証するような企画を期待したい。[橋本啓子]


上村一夫《シェルブールの雨傘》1973年、東京国立近代美術館フィルムセンター蔵

2012/11/10(土)(SYNK)