2021年01月15日号
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artscapeレビュー

日本の映画ポスター芸術

2012年12月01日号

会期:2012/10/31~2010/12/24

京都国立近代美術館[京都府]

1930~1980年代に日本でつくられた映画ポスター約80点を採り上げ、映画ポスターの歴史を振り返る展覧会。筆者のようなアート系の人間が「おもしろい」と感じるのは、1960年代以降の日本アート・シアター・ギルド(ATG)のポスターや、粟津潔、横尾忠則などのグラフィック・デザイナーを起用したポスターだ。しかし、映画ポスターというジャンルが芸術よりもデザインの範疇に属するものであることを考えれば、映画の宣伝効果というその機能を考慮せねばならないだろう。そういう意味では、対象が映画であれ演劇であれ、同様の作風を貫くグラフィック・デザイナーのポスターよりも、看板絵のような野口久光のポスターのほうが、映画ポスターの目的にはかなっていたかもしれない。加えて、現代からみればキッチュな表現にとれる岩田専太郎のイラストレーションが溝口健二の映画ポスターに起用されたのは奇異に思えるが、それは、いまでは前衛の先駆とされる溝口映画も当時は大衆の娯楽であったということなのだろう。いずれにせよ、ポスター研究には芸術性の視点だけでなく、それに付随するさまざまな視点からの考察が必須となる。今回、映画ポスターを通史的に展示したのは貴重な機会であったが、今後はなにをもって「映画ポスター芸術」ということが言えるのかを学問的に検証するような企画を期待したい。[橋本啓子]


上村一夫《シェルブールの雨傘》1973年、東京国立近代美術館フィルムセンター蔵

2012/11/10(土)(SYNK)

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