artscapeレビュー
デザインに関するレビュー/プレビュー
SD Review 2011 第30回「建築・環境・インテリアのドローイングと模型の入選展」
会期:2011/09/14~2011/09/25
代官山のヒルサイドテラスにおいて、建築系若手の登竜門、SDレビュー2011を見る。今年の出展者は、知人、同僚、仕事で担当スタッフだった人、過去にコンペや卒計の審査で選んだ人が多い。作品のなかでは、へんてこなリノベーションの今村水紀+篠原勲、加藤比呂史+ヴィクトリア・ディーマー・ベネッツェン、メジロスタジオの《バルコニービル》などが印象に残る。
2011/09/21(水)(五十嵐太郎)
ザ・ポスターズ──南部俊安・高橋善丸・杉崎真之助 グラフィックデザイン展
会期:2011/09/12~2011/09/19
大阪市立近代美術館(仮称)心斎橋展示室[大阪府]
大阪のデザインイベント「御堂筋デザインストリート2011」の一環として、大阪市立近代美術館(仮称)心斎橋展示室で開催されたグラフィックデザイン展。大阪を拠点に国際的に活躍する3名のグラフィックデザイナー、南部俊安、高橋善丸、杉崎真之助のポスター約70点が展示された。いずれのポスターも、タイポグラフィとグラフィックというポスターの二大構成要素の関係性が生みだす彼方の世界へとわれわれを誘う傑作ばかりだ。無論、そうした関係性と世界の構築の仕方は三人三様である。南部の《大阪市立デザイン教育研究所展》(2005)のポスターは、文字の一辺が有機的な肉体を与えられて、各々の文字が躍り出すかのようだ。高橋の《王子ペーパーギャラリー》(2001)のポスターでは、写真とステンシルのあいだのような曖昧な「K」の文字が、虚構の景色を現前させる。杉崎のポスターは、《Another Japan》(2008)において図形の巧みな繰り返しが観る者の視線を手前から奥に引きずり込むかと思えば、「あ」の文字ひとつがポスターの構図を成す《秀英体》(2011)など、多彩かつ迫力に満ちている。各人のアプローチについては、USTREAMで配信された9月17日のデザイントーク「デザインの国際化と近代美術館」でデザイナー自身が語っているのでそちらを参照されたい。本展もそうだが、大阪市立近代美術館(仮称)の展覧会は、国内随一というべき近現代美術とデザインのコレクション、および学芸員の高い研究・企画力を背景に、つねに充実した内容となっている。平成29年の中之島での新館オープンがいまから待ち遠しい。[橋本啓子]
2011/09/16(金)(SYNK)
暑さと衣服──民族衣装にみる涼しさの工夫
会期:2011/07/05~2011/09/24
文化学園服飾博物館[東京都]
東日本大震災にともなう原子力発電所の事故により、この夏はさまざまな場面で節電が求められた。エアコンの設定温度も高くなり、例年よりも蒸し暑い環境で過ごさざるをえなかった。緑のカーテンなどの自然の利用や、スーパークールビズの提案など、人工的な気温調節手段に頼らずに過ごすためのさまざまな工夫や提案が話題にもなった。震災による節電の必要は一時的なものだろうが、近年の猛暑を考えれば、このような取り組みはこれからも積極的に継続していく必要がある。
「暑さと衣服」展は、気温の高いさまざまな地域で発達してきた民族衣装を分析し、涼しさを創り出すための機能を考える企画である。「暑い」と一口にいっても、その性質は多様である。一日の気温があまり変化せずに暑い地域もあれば、昼夜の温度差が激しい地域もある。日差しが強い地域では身体全体を覆い隠す必要があるし、湿度が高い地域では衣服の中を空気が移動し、熱を放出するための工夫がなされる。一年を通じて気温が安定していて衣服による体温調節が必要ない地域もある(ペニスケースまで展示されていた)。衣服の発達には文化的な側面からの影響が大きいはずであるが、それをいったん捨象して、気候と衣服の機能との関わりを科学的に考察する試みはとても面白い。クールビズ、スーパークールビズと和服とで、暑さの感じかたの違いを検証した実験や、涼しさを可能にする素材の分析などもあり、文化学園ならではの好企画であった。[新川徳彦]
2011/09/14(水)(SYNK)
ハローキティアート展
会期:2011/08/24~2011/09/05
松屋銀座8階催事場[東京都]
会場はふたつのテーマで分かれている。前半は「博物館」。1974年に誕生したハローキティは今年で37年目。これまでにつくられたキャラクター商品の数々は、すでにひとつの歴史をつくっている。現在のキティでさえも、未来の人々から見ると博物館に収蔵されていてもおかしくないというのが展示コンセプトなのだそうだ(ちなみに、展示のディレクションは佐藤卓氏である)。博物館ゾーンの壁面は濃茶色に塗られ、廊下といくつかの小部屋で構成されている。廊下の壁面には、代々のキティをモチーフにしたシルクスクリーン作品と、それぞれの時代の代表的な商品が展示され、ハローキティの歴史と変化を追う。小部屋には硝子をはめたレトロな木製の展示台があり、懐かしのキティグッズの数々が収められている。展示台の上には天井から浅い傘のついた照明が下がり(ただし、白熱灯ではなく最新のLED電球)、夏休みに避暑地の古い博物館を訪れたような感覚になる。そして、驚くべきはご当地キティの展示である。壁に掛けられた無数の標本箱を覗くと、中には小さなキティたちが採取地(!?)を記した紙片とともに針で留められているのだ。そして、会場後半のテーマは「美術館」。明るい大広間に、ハローキティデザイナーの山口裕子氏がイチゴをテーマに制作したキティの油彩画と立体作品が展示されている。
展示はふたつに分かれているが、両者はけっして別々のものではない。山口裕子氏は、1980年に三代目のハローキティデザイナーに就任して以来、30年以上にわたってキティの物語と世界観を創り出してきた人物である。山口氏は、全国各地で開催されるサイン会やファンとの文通を通じて、人々がキティに求めるものをリサーチし、時代の流行を取り入れ、ターゲット層を拡大しながら、世界的な人気アイドルであるハローキティをマネジメントしてきた。その山口氏が創り出したアートである。ほかのアーティストやブランドとのコラボレーションによって生み出された、パラレルワールドのなかのキティではない。ここに現われたキティたちはアートというカタチをとっているが、過去から未来へと連なる同じ時間軸上に存在する次のキティたちの正統な原型なのだと思う。2011年10月1日~11月6日、福岡アジア美術館に巡回。[新川徳彦]
2011/09/05(月)(SYNK)
せんだいスクール・オブ・デザイン 2011年度春学期特別講座「復興へのリデザイン」最終回「環境に応答する」
会期:2011/09/04
東北大学工学部センタースクエア中央棟DOCK[宮城県]
せんだいスクール・オブ・デザインの「復興へのリデザイン」の最終回「環境に応答する」で、中谷礼仁と宮本佳明をゲストに迎え、司会を務めた。前者は非常時のセットの組み換えによるシステムのリデザインやズレへの態度を、後者は現地への出入りを通じての思考と実践について語る。中谷による、誰もが同じことを急いで行なう必要はなく、自分はじっくりと考えていくという、思考における時間のスケールの長さに共感した。
2011/09/04(日)(五十嵐太郎)