artscapeレビュー
ザ・ポスターズ──南部俊安・高橋善丸・杉崎真之助 グラフィックデザイン展
2011年10月01日号
会期:2011/09/12~2011/09/19
大阪市立近代美術館(仮称)心斎橋展示室[大阪府]
大阪のデザインイベント「御堂筋デザインストリート2011」の一環として、大阪市立近代美術館(仮称)心斎橋展示室で開催されたグラフィックデザイン展。大阪を拠点に国際的に活躍する3名のグラフィックデザイナー、南部俊安、高橋善丸、杉崎真之助のポスター約70点が展示された。いずれのポスターも、タイポグラフィとグラフィックというポスターの二大構成要素の関係性が生みだす彼方の世界へとわれわれを誘う傑作ばかりだ。無論、そうした関係性と世界の構築の仕方は三人三様である。南部の《大阪市立デザイン教育研究所展》(2005)のポスターは、文字の一辺が有機的な肉体を与えられて、各々の文字が躍り出すかのようだ。高橋の《王子ペーパーギャラリー》(2001)のポスターでは、写真とステンシルのあいだのような曖昧な「K」の文字が、虚構の景色を現前させる。杉崎のポスターは、《Another Japan》(2008)において図形の巧みな繰り返しが観る者の視線を手前から奥に引きずり込むかと思えば、「あ」の文字ひとつがポスターの構図を成す《秀英体》(2011)など、多彩かつ迫力に満ちている。各人のアプローチについては、USTREAMで配信された9月17日のデザイントーク「デザインの国際化と近代美術館」でデザイナー自身が語っているのでそちらを参照されたい。本展もそうだが、大阪市立近代美術館(仮称)の展覧会は、国内随一というべき近現代美術とデザインのコレクション、および学芸員の高い研究・企画力を背景に、つねに充実した内容となっている。平成29年の中之島での新館オープンがいまから待ち遠しい。[橋本啓子]
2011/09/16(金)(SYNK)