artscapeレビュー
デザインに関するレビュー/プレビュー
2013 GOOD DESIGN AWARD グッドデザイン賞 受賞「S-meme」
せんだいスクール・オブ・デザインのメディア軸で制作している前衛装幀の文化批評誌「S-meme」が、グッドデザイン賞を受賞した。以下が講評文である。「極めて質の高い、かつ独創的な装丁デザインで、Webや電子書籍の時代にあえて紙に徹底的にこだわっている。紙とのインタラクションの新規性という観点からも評価できる」(http://bit.ly/GzDZCn)。紙しかない時代には当たり前だと思われていたことも、ネットメディアの時代になったからこそ、逆説的にその特徴がより強く感じられるようになった。「S-meme」は、そうした意識を反映した雑誌である。
2011/10/02(水)(五十嵐太郎)
海を渡った伊万里焼展──鎖国時代の貿易陶磁
会期:2011/10/02~2011/12/23
戸栗美術館[東京都]
輸出陶磁器について、新しい研究成果も取り入れたコレクションの紹介である。古伊万里の輸出というとヨーロッパにおける東洋陶磁の受容という文脈で語られることも多いが、この展覧会では輸出国である日本に軸をおいて、伊万里焼の変遷を見る。輸出国日本に焦点を当てているので、取り上げられている製品の輸出先もヨーロッパばかりではなく、インドネシアなどのアジアでの需要や、オランダ東インド会社の商館などで用いられた製品、医療用に用いられた陶磁器など多方面におよび、伊万里焼が実用的な商品として取引されていたことがよくわかる。いつものことながら、戸栗美術館の展示は初心者にもとてもわかりやすく、親切だ。[新川徳彦]
2011/10/02(日)(SYNK)
せんだいスクール・オブ・デザイン 2011年度春学期成果発表会
会期:2011/10/01
東北大学工学研究科中央棟DOCK[宮城県]
せんだいスクール・オブ・デザイン2011年度の春学期成果発表会において、「文化被災」を特集した『S-meme』2号の報告を行なった。袋とじ製本だが、通常とは違うスタイルである。まず最初の状態で東浩紀インタビューを普通に読めるのだが、ページのあいだを切り裂くと、別のテキストが出現し、それもさらにもう一度上部を切ることができ、隠れた文章があらわれる。テキスタイル・コーディネーター、デザイナーの安東陽子によるゲストレクチャーでは、最初に百貨店で販売を経験し、お客にあった洋服を選んだことから、今の仕事につながったことを知った。実際、伊東豊雄が来客し、建築の仕事に接点が生まれたという。
2011/10/01(土)(五十嵐太郎)
世界建築会議(UIA)2011東京大会関連事業「アーキニアリング・デザイン展 2011 模型で読み解く世界の建築」ほか
会期:2011/09/22~2011/10/01
丸ビル・マルキューブ[東京都]
UIAの東京大会へ。国際フォーラムの地下1階の展示は、ヴェネチア・ビエンナーレを見慣れていると迫力不足である。とはいえ、同時期にさまざまな建築展が開催されたことが特筆される。相田みつを美術館では、「建築におけるタイ国王陛下の理念展」が行なわれ、タイ版帝冠様式というべき国会議事堂のプロジェクトを紹介する。丸ビルでは、吹抜けで作品がバージョンアップされた「アーキニアリング・デザイン展 2011」、7階で気合いの入ったつくり込みによる「東京2050/12の都市ヴィジョン展」を行なう。単純に比較すると、やはり模型で読み解く構造展が楽しい。またアーツ千代田3331の「インドネシア建築家週間@東京2011」は、全作品の模型がある力作で、現代性と地域性のせめぎあいが興味深い。
写真:上から「東京国際フォーラム」「建築におけるタイ国王陛下の理念展」「アーキニアリング・デザイン展 2011」「東京2050/12の都市ヴィジョン展」「インドネシア建築家週間@東京2011」
2011/09/28(水)(五十嵐太郎)
生まれて400年~30年 今も生き続ける 日本のロングセラー商品展
会期:2011/08/20~2011/11/06
印刷博物館P&Pギャラリー[東京都]
ロングセラーとはなんだろう。どの程度の期間売られ続けていればロングセラー商品と呼べるのだろうか。グッドデザイン賞のロングライフデザイン賞は10年を目安にしているようだが、この展覧会では30年以上にわたって私たちの日常生活に溶け込んできた商品の数々約300点を取り上げ、そのパッケージデザインの現在の姿を見る。30年といえば、1世代。すなわち、ここにあるのはそれよりも長く、親と子、あるいは祖父母から孫までもがともに親しんできたものたち、ということになる。
紹介されているもっとも古い商品は「宇津救命丸」(1597)。ついで「養命酒」(1602)、「福砂屋のカステラ」(1624)。新しいものでも、カップヌードル(1971)や明治ブルガリアヨーグルト(1973)など。発売当初とほとんど変わらない姿をしている商品は多くはないのだが、誰もが一目で認識できるブランドの強さは、商品そのものの魅力と共にパッケージデザインがつくりあげていったものなのだろう。
展示は1970年代からおよそ10年単位で過去へとさかのぼる。年代別に分けられた展示台に添えられた説明文には、それぞれの時代の社会状況やパッケージに用いられた技術、デザインの様式などが記されているが、展示品はあくまでも現在のパッケージ(一部復刻品を含む)である。発売当初のパッケージ写真が添えられているとはいえ、この点は少々混乱する。オリジナルのパッケージから現在のものまで、それぞれの商品の変遷を見ることができれば、パッケージデザインがはたしてきた役割と社会との関わりをよりよく理解できるのであろうが。
なお、本展は(社)日本パッケージデザイン協会創立50周年記念事業のひとつである。会場壁面には50周年を記念して出版された書籍『パッケージデザインの勘ドコロ』のダイジェストを展示し、デザインの「理由(わけ)」を解説する。[新川徳彦]
2011/09/27(火)(SYNK)