2019年11月15日号
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artscapeレビュー

複々製に進路をとれ 粟津潔60年の軌跡

2009年01月15日号

会期:1月24日~3月29日

川崎市市民ミュージアム[神奈川県]

2009年、丁度80歳になるグラフィックデザインの鬼才、粟津潔(1929~)の60年間にわたる芸術活動を振り返る展覧会が開催される。粟津潔は、戦後日本のグラフィックデザインの革新者のひとりであるが、映像、写真、環境デザイン、ペインティングそして執筆という活動の多面性という点で、戦後日本の代表的デザイナーのなかで頭抜けている。粟津潔に関しては、近年、金沢21世紀美術館で「荒野のグラフィズム:粟津潔展」[2007年11月23日~2008年3月20日]が開催されたばかりだが、金沢展が、絵画や素描などを含めて粟津のグラフィックの仕事を中心において展示していたのに対して、川崎での展示は、粟津の仕事の多面性により力点を置いて時代の推移とともに変貌していった活動を総合的に紹介する。

展覧会タイトルの「複々製に進路をとれ」は、一万円札の複製を展示して物議を醸した赤瀬川原平の言葉である。戦後60年代から70年代にかけてわが国を覆った、複製と複製の複製が現実を埋め尽くす新たな社会状況での芸術的な戦略を指し示す言葉である。ヴァルター・ベンヤミンのいう複製技術時代の次に到来した新たな複製メディア状況を象徴する言葉であった。粟津は、デザイナーとしてかかる状況を引き受け、そして駆け抜けることで独自のデザインワークを進めて行ったと言える。そのダイナミズムを確かめる展覧会となるだろう。

展覧会詳細
http://www.kawasaki-museum.jp/display/exhibition/exhibition1.html#awazu

 

2009/1/14(水)

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