artscapeレビュー

デザインに関するレビュー/プレビュー

煉瓦色の記憶~100年前の原田の森

会期:2017/04/28~2017/07/30

神戸文学館[兵庫県]

神戸文学館の建築は、関西学院の創設地に建設されたブランチ・メモリアル・チャペルを復元したもの。英国人M・ウィグノールの設計により、1904年(明治37年)に竣工した。神戸市に現存する最古の煉瓦造り平屋建て教会建築である。大戦中の爆撃で建物の屋根が抜け落ちて戦後に一旦修復、1992年になってチャペルの尖塔が再建された。その2年後には阪神淡路大震災に見舞われたが、これを無事に乗り越えた。このとき改修設計を担当したのが、一粒社ヴォーリズ建築事務所。もともと関西学院原田校の多くの校舎は、W・M・ヴォーリズに設計されていたから、縁の深い仕事であったろう。さて本展は、大正期から昭和初期にかけて、キャンパスと周辺の学生街が発展していく様子を当時の写真と学院を卒業した作家たちの資料から探るもの。初期英国ゴシック様式風の木造梁の高い天井から醸し出される独特な建築空間を体感しながら、近隣地域の今昔と学生たちの青春物語に思いを馳せた。ちなみに今、原田の森キャンパス跡地は、神戸市立王子動物園や市立プール、兵庫県立美術館分館と横尾忠則現代美術館が隣接する文化ゾーンとなっている。[竹内有子]

2017/05/07(日)(SYNK)

「人によりそう~中山太陽堂にみる販売促進・営業活動~」展

会期:2017/04/01~2017/05/31

クラブコスメチックス文化資料室[大阪府]

1903年に大阪で創業した「中山太陽堂(現:(株)クラブコスメチックス)」における、明治末から昭和初期にかけての営業活動を同時代資料からたどる展覧会。展示は、①「中山太陽堂の活動と創業者・中山太一の思い」、②「ご愛用者様向け 販売促進・営業活動」、③「代理店向け 販売促進・営業活動」の3部立てになっている。同社は、博覧会を大きな足掛かりとして国内外で先駆的な活動を展開する。1906年に最初の製品「クラブ洗粉」(洗顔料)を発売以来、国内では全国製産品博覧会で金牌を受賞、1910年の日英博覧会(開催地:ロンドン)においても一等賞牌を受領した。本展の前半では、各博覧会の会場図、特設館や展示風景の写真、雑誌への挟み込み広告、整容美粧の様子等を展示。後半では、大正期から顧客と代理店向けに行なわれた懸賞やイベント、キャンペーンを示す写真、ちらしとポスター、絵看板などのほか、販売経路を定めた表と各契約に準じた化粧品の現品が展観された。総合化粧品メーカーが、大正期の啓蒙的指標であった「文化的生活」を営むための諸活動に携わり、さらには近代的な販促戦略を創出していった過程を見ることができる。今回で14回目となる企画展、企業ミュージアムの意欲的な文化活動と、年毎に趣向を凝らしたテーマ設定に今後も期待したい。[竹内有子]

2017/05/06(土)(SYNK)

HANDAI ロボットの世界──形・動きからコミュニケーション そしてココロの創生へ──

会期:2017/04/26~2017/08/05

大阪大学総合学術博物館[大阪府]

大阪大学では、とりわけ人型ロボット(ヒューマノイド)や人間酷似型ロボット(アンドロイド)に関わるロボット研究が盛ん。石黒浩教授による「マツコロイド」などは最近よく知られるところだろう。本展は、人と共生を目指した最先端のロボットを紹介するもの。石黒氏が自らの子供をモデルにしたアンドロイドの初期モデルもあり、制作段階の様子を垣間見ることもできる。目玉作品は、レオナルド・ダ・ヴィンチのアンドロイド(NPO法人ダ・ヴィンチミュージアムネットワーク/浅田稔教授)である。ミラノのレオナルド・ダ・ヴィンチ国立科学技術博物館のスタッフや俳優などと綿密に打ち合わせ、本人の自画像や資料を参照しながら、老年時代のダ・ヴィンチの外観を作り上げたという。実見すると、そのスーパーリアルな姿にびっくりする。肌の質感、滑らかな動作、まばたきや顔の表情の変化などすべて、生きている人間そっくり。今回ダ・ヴィンチを選んだ理由は、科学と技術と芸術を融合させたパイオニアだからだそうだ。万能の才人を現代に蘇らせることで、人間とロボットの関係を考えるためのシンボルとなるよう期待されている。確かに、元祖デザイナーともいえるダ・ヴィンチがもし現代に生きていたならば、工学のみならず脳科学や心理の働き等人間の理解、アート、諸哲学に関わるロボット学に没頭していたかもしれない。[竹内有子]

2017/05/06(土)(SYNK)

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技を極める──ヴァン クリーフ&アーペル ハイジュエリーと日本の工芸

会期:2017/04/29~2017/08/06

京都国立近代美術館[京都府]

フランスのハイジュエリー・ブランド「ヴァン クリーフ&アーペル」。同社は年に一度、一カ国、一都市で展覧会を行なっているが、本年の舞台に選ばれたのは日本の京都。展覧会では同社の歴史を彩る名品が出展されたほか、日本の明治時代の超絶技巧工芸や、現代の工芸家の作品も展示され、時代と洋の東西を超えた「技」の競演が繰り広げられた。ジュエリーは小さな装身具なので、見せ方が難しい。本展では建築家の藤本壮介が会場構成を担当し、その難題に見事に応えた。なかでも、約18メートルの檜の一枚板を展示台に用いて、ブランドの歴史を一本の道に例えた第1章(画像)と、張り巡らせたガラス壁に鏡像が複雑に反射し、遠方が霞んでいく幻想的な第2章には圧倒された。会場構成でこれだけ唸らされたのは久しぶりだ。本展の主役はもちろんハイジュエリーと日本の工芸だが、そこに藤本の名を加えても良いのではなかろうか。

2017/04/28(金)(小吹隆文)

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東北大五十嵐研のゼミ合宿8 10周年記念 東京デザインテン

会期:2017/04/14~2017/05/21

東京ミッドタウン・デザインハブ[東京都]

浅子佳英が全体監修した「東京デザインテン」展のギャラリーツアーに参加する。東京の地図を南北軸で輪切りにしながら配置し、交通インフラから始まり、タワマン、リノベーション、観光、多民族などのヴィジョンを提示し、現代の東京を考えるもの。2003年、六本木ヒルズの「世界都市展」で筆者が監修した「TOKYO RISING」のセクションと比較し、時代の変化を見ると興味深い。

2017/04/22(木)(五十嵐太郎)

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