artscapeレビュー
煉瓦色の記憶~100年前の原田の森
2017年06月01日号
会期:2017/04/28~2017/07/30
神戸文学館[兵庫県]
神戸文学館の建築は、関西学院の創設地に建設されたブランチ・メモリアル・チャペルを復元したもの。英国人M・ウィグノールの設計により、1904年(明治37年)に竣工した。神戸市に現存する最古の煉瓦造り平屋建て教会建築である。大戦中の爆撃で建物の屋根が抜け落ちて戦後に一旦修復、1992年になってチャペルの尖塔が再建された。その2年後には阪神淡路大震災に見舞われたが、これを無事に乗り越えた。このとき改修設計を担当したのが、一粒社ヴォーリズ建築事務所。もともと関西学院原田校の多くの校舎は、W・M・ヴォーリズに設計されていたから、縁の深い仕事であったろう。さて本展は、大正期から昭和初期にかけて、キャンパスと周辺の学生街が発展していく様子を当時の写真と学院を卒業した作家たちの資料から探るもの。初期英国ゴシック様式風の木造梁の高い天井から醸し出される独特な建築空間を体感しながら、近隣地域の今昔と学生たちの青春物語に思いを馳せた。ちなみに今、原田の森キャンパス跡地は、神戸市立王子動物園や市立プール、兵庫県立美術館分館と横尾忠則現代美術館が隣接する文化ゾーンとなっている。[竹内有子]
2017/05/07(日)(SYNK)