artscapeレビュー

映像に関するレビュー/プレビュー

磯崎新12×5=60

会期:2014/08/31~2015/01/12

ワタリウム美術館[東京都]

磯崎は長いキャリアにおいてさまざまな顔をもつが、これは建築外の活動に焦点をあてたユニークな企画である。美術、音楽、映像、写真などの諸ジャンルとのコラボレーションの数々が、充実した資料で紹介される。今の日本で跋扈している反知性主義とは、真逆の世界だろう。以前、実際に見学させてもらった軽井沢の書斎も、吹抜けの空間において実寸で再現され、内部に入ることもできる。

2014/09/05(金)(五十嵐太郎)

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山本二三展

会期:2014/08/04~2014/09/23

静岡市美術館[静岡県]

山本二三は『未来少年コナン』、『天空の城ラピュタ』、『じゃりん子チエ』、『時をかける少女』など、日本アニメの有名な作品の美術を手がけた第一人者だけあって、また夏休みの終わりということで、会場は混雑していた。彼は建築を学んでおり、背景画が興味深い。なかでも、『もののけ姫』のシシ神の森は入魂の力作だった。それにしても、絵画ならば、1/1なので、大きい作品を描きたければ、そのまま大きいキャンバスを使えばよいが、アニメの場合、映画館のスクリーンで大きく伸ばしても、絵として耐えられるよう小さなセル画に細部を緻密に描く手技に感心させられる。

2014/08/30(土)(五十嵐太郎)

デス・プルーフ in グラインドハウス

会期:2014/08/23~2014/08/31

新橋文化劇場[東京都]

名画座がまたひとつ消えた。JRの高架下に軒を連ねる新橋文化劇場・ロマン劇場が2014年8月31日をもって閉館した。終戦後の1950年代の開館以来、客席わずか81の小さな空間で上映される35ミリのフィルム映画を求めて、多くの来場者が訪れてきた。入れ替え制を採用するシネコンを尻目に、入場料900円で一日中過ごすことができるのも、人気のひとつだった。
最終週を飾ったのは、マーティン・スコセッシの『タクシードライバー』(1976)と、クエンティン・タランティーノの『デス・プルーフ in グラインドハウス』(2007)。いずれも、この映画館を自己言及的に暗示した、みごとなセレクションである。なぜなら、前者において不眠症に悩まされる主人公が夜な夜な通い詰めるのがポルノ映画館だからであり、後者の「グラインドハウス」とはB級映画館を意味しているからだ。それゆえ、来場者は映画の内と外をリンクさせながら、映画館で映画を鑑賞することの醍醐味を存分に味わうことができた。
とりわけ、すばらしかったのが『デス・プルーフ in グラインドハウス』。耐死仕様の車を使って次々と惨劇を繰り返すスタントマンの男と、その刃に襲われる女たちの物語だ。小気味よい音楽と冗長な会話劇という二面性は、これまでのタランティーノ映画と変わらない。けれども、映画の終盤からはじまる女たちの復讐劇は、フェミニズム映画とさえ言いたくなるほど、突出して痛快である。両手を突き上げて勝利を喜ぶラストシーンには、誰もが「どんなもんじゃい!」という熱い想いを重ねたにちがいない。
暗闇の中で見ず知らずの赤の他人と同じ映画を見るという経験。そして、たとえ一瞬だとしても、同じ気持を共有するという経験が、映画館で映画を見る最大の楽しみである。劇場がなくなった後も、この快楽は憶えておきたい。

2014/08/29(金)(福住廉)

ゴー・ビトゥイーンズ こどもを通して見る世界

会期:2014/05/31~2014/08/31

森美術館[東京都]

展示の位置が少し低く、夏休みだから子供向けの企画と思いきや、内容は決してそうでもなく、むしろ子供をテーマにした美術展だった。社会派、政治的な作品もあり、ナッファール&サッロームのパレスチナの子供の現状とその夢をテーマにした映像「さあ、月へ」が良かった。





会場風景

2014/08/23(土)(五十嵐太郎)

イントゥ・ザ・ストーム

映画『イントゥ・ザ・ストーム』(監督:スティーヴン・クォーレ)は、空港の飛行機まで浮き上がらせ、街を徹底的に破壊しており、『ツイスター』や『パーフェクト・ストーム』を軽く超える暴風の凶暴ぶりで、災害映画に期待される最重要ポイントをクリアしていた。物語としては、家族愛がどうのこうのよりも、多視点、多カメラの状況において、人はどうふるまうのかが興味深い。意外に良かったのが、脇役だが、冒険バカ二人組のキャラだった。

2014/08/22(金)(五十嵐太郎)