artscapeレビュー
映像に関するレビュー/プレビュー
六甲ミーツ・アート 芸術散歩2014
会期:2014/09/13~2014/11/24
六甲ガーデンテラス、自然体感展望台六甲枝垂れ、六甲山カンツリーハウス、六甲高山植物園、六甲オルゴールミュージアム、六甲山ホテル、六甲ケーブル、天覧台、六甲有馬ロープウェー(六甲山頂駅)[兵庫県]
六甲山上のさまざまな施設にアート作品を配置し、ピクニック感覚で山上を周遊しながら作品を体験することで、アートと六甲山双方の魅力を再発見できるイベント。今年で5回目を迎えることもあり、もはや円熟味すら感じさせる盤石の仕上がりになっていた。ただし、円熟味=予定調和ではない。たとえば、バス1台をサウンドシステムに変換させた宇治野宗輝、鉄人マラソンを控えてトレーニング兼パフォーマンスを行なった若木くるみ、会期中ずっと被り物スタイルで作品制作を続ける三宅信太郎など、こうした場でなければ出会えないタイプの作品が多数ラインアップされており、現代美術の尖端性もフォローされているのだ。昨今は地域型アートイベントが全国的に乱立し、アートが地域振興のツールに堕しているとの批判もあるが、「六甲ミーツ・アート」は双方のバランスを上手に保っていると思う。昨年は台風の影響でケーブルカーが長期間不通になるアクシデントがあったが、今年は天候に恵まれて滞りない運営が行なわれるよう期待している。また、今年は「ザ・シアター」と題したパフォーマンス系プログラムが多数予定されている。それらの反応も気になるところだ。
2014/09/12(金)(小吹隆文)
ただいま。カーネーションと現代美術。
会期:2014/09/03~2014/09/10
岸和田市立自泉会館 展示室[大阪府]
岸和田城に隣接する瀟洒な近代建築を舞台に、岸和田市とその周辺の出身または在住作家である、稲垣智子、大﨑のぶゆき、永井英男、西武アキラ、吉村萬壱、ワウドキュメントがグループ展を開催した。稲垣と大崎は映像インスタレーション、永井は彫刻、西武は絵画、吉村は小説家である自分の仕事場を再現したかのようなオブジェ、ワウドキュメントは一軒家を移動させるプロジェクトの記録映像を出品。規模こそ大きくないが、それぞれの持ち味がよく出た気持ちのよい展覧会に仕上がっていた。なお、筆者が訪れた日は、有名なだんじり祭りを前にだんじりの試験引きが行なわれており、街中が早くもヒートアップしていた。美術展と祝祭を一度に味わえ、2倍得した気持ちであった。岸和田といえばだんじり祭りが有名だが、同時に岸和田は歴史のある城下町であり、市内の至る所に古い和洋の建築物が残る文化的な土地柄でもある。そうした岸和田のもうひとつの顔を対外的に認知してもらうためにも、本展のようなイベントは有効だ。地元民と行政がそのことに気付いてくれれば、本展は大成功と言えるのだが……。
2014/09/07(日)(小吹隆文)
フィオナ・タン まなざしの詩学
会期:2014/07/19~2014/09/23
東京都写真美術館[東京都]
フィオナ・タン「まなざしの詩学」展は、メディアの差異や、アイデンティティと記憶の問題をテーマに扱う。とくに《インヴェントリー》(2012)は、筆者の好きなロンドンの建築家ジョン・ソーンの自邸に展示された古代遺物を6種類の映像メディアで記録したものである。建築空間の説明はなく、コレクションを断片的かつ複合的視点で表現していた。またフィオナ・タンのドキュメンタリー映像《興味深い時代を生きますように》は、面白くて60分、つい最後まで見る。アジアと西洋のハーフとして生まれた彼女のルーツをたどるべく、オランダ、オーストラリア、インドネシア、香港、ケルン、そして起源となる中国のタン族の村へとたどりつく。華僑の移動とネットワーク力に感心させられた。
2014/09/06(土)(五十嵐太郎)
郊遊〈ピクニック〉
ツァイ・ミンリャンの映画「ピクニック」を見る。家なき親子と女のシンプルな物語で、ほとんどセリフもない。いや、これは映像なのか、絵/写真なのかと、つい考えてしまうような廃墟での、美しく静止した長いカットの数々が続く。こうした衝撃は、冒頭のシーンからいきなりガツンとやられる。まるで展覧会を見ているかのような映画だ。
2014/09/06(土)(五十嵐太郎)
MOVING Live 0 in Kyoto
会期:2014/09/06
五條會舘[京都府]
2011年に2度のプレイベントを行ない、2012年に第1回を開催した、映像芸術祭「MOVING」。2015年2月に予定されている第2回に先立ち、映像×音楽をコンセプトとしたライブパフォーマンスが開催された。出演者は、浦崎力×てあしくちびる、山城大督×swimm、宮永亮×志人、柴田剛×池永正二の4組(いずれも映像、音楽の順)。両者の関係性を大別すると、それぞれが独立した作品、映像による音楽の演出、以前制作したミュージックビデオをもとに映像と音楽を発展させる、といったところ。当日は悪天候で、会場の空調設備が貧弱だったため蒸し風呂のような状態になったが、4組とも良質なコラボレーションを展開してくれたおかげで濃密な一時を過ごすことができた。10月19日には千葉県柏市のキネマ旬報シアターでも公演が行なわれる。首都圏の方におすすめしたい。
2014/09/06(土)(小吹隆文)