artscapeレビュー
映像に関するレビュー/プレビュー
手塚治虫×石ノ森章太郎 マンガのちから
会期:2014/05/31~2014/07/27
宮城県美術館 本館展示室3・4[宮城県]
宮城県美術館にて、手塚治虫と石ノ森章太郎の二人を比較する「マンガのちから」展を見る。去年の東京都現代美術館ですでに訪れたので、二度目だ。言うまでもなく、この二人は、映画などの影響を受けつつ、漫画の文法やジャンルを創造した。展示ではトキワ荘が3/4で再現されている。そのせいもあるかもしれないが、室内の畳の上の机が、座って使うタイプのものとはいえ、おそろしく低い。漫画家の身体スケールを正確に知りたいのだが、内部も3/4なのだろうか。ところで、宮城県美でサブカルチャー系の展示はめずらしいが、石ノ森が宮城県の出身だからなのかもしれない。ちなみに、手塚は1928年生まれで槇文彦、石ノ森は1938年生まれで渡辺豊和と同じ年だ。いかに漫画家が早熟なのかがよくわかる。
2014/06/27(金)(五十嵐太郎)
ノア 約束の舟
もうひとつ歴史ものの映画『ノア』は、神との約束か、人間の意志かをめぐる激しい葛藤の物語だった。神を信じない人にとっては、人間に対するノアの言動が怖すぎるだろう。世界最初の動物園というべき、ノアの箱船は、133m×22m×13mの直方体で、三階建の木による構造物だった。船というよりは、海に漂う巨大な箱である。でも、動物はずっと眠らされていた。全体的に映画の尺がちょっと長過ぎかもしれない。
2014/06/22(日)(五十嵐太郎)
ポンペイ
映画『ポンペイ』を見る。廃墟の遺構が残るだけに、建築の表現は、垂直性を強調した『グラディエーター』や『テルマエ・ロマエ』に比べても、基本的にはちゃんとしているのだが、災害と破壊の描写はスペクタクル感をだすためだろうが、派手過ぎだった。いくらなんでも、あそこまでの津波はないのではと思う。また闘技場以外の普通の生活空間をもっと見たかった。例えば、都市住宅における2つの中庭アトリウムとペリスタイル、集合住宅のインスラなど、そうした場所を生き生きと描いて欲しかった。
2014/06/22(日)(五十嵐太郎)
フォトフォビア アピチャッポン・ウィーラセタクン個展
会期:2014/06/14~2014/07/27
京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA[京都府]
タイを拠点に活動する美術家で映画監督のアピチャッポン・ウィーラセタクン。彼の、映像、写真、絵画など約40点が展示された。主たる出品作品は映像で、日記的な小品から上映時間約20分の大作まで、さまざまな作品が見られる。多くの作品に共通するのは、彼が住むタイ東北部の風土、習俗、伝承をベースにしていることと、論理的なストーリー展開を半ば意図的に無視していること、現実の社会問題を想起させるイメージも挟み込まれるが、決してジャーナリスティックではないこと、などである。つまり、現実と夢の境界を写し出したかのような映像世界であり、その流れに身を浸すような鑑賞態度が求められるということだ。筆者のお気に入りは《ASHES.》という上映時間約21分の長尺作品。作品を見るうちに一種の喪失感に包まれ、深い感慨を覚えた。
2014/06/17(火)(小吹隆文)
建築の皮膚と体温 ──イタリアモダンデザインの父、ジオ・ポンティの世界──展
会期:2014/06/06~2014/08/19
LIXILギャラリー大阪[大阪府]
LIXILショールーム大阪にて、「建築の皮膚と体温:イタリアモダンデザインの父、ジオ・ポンティの世界」展を見る。ミラノ駅前のピレリ・ビル以外にも、住宅、教会、プロダクトなど、彼が生涯に手がけてきた多くの作品を紹介するが、日本ではその全貌があまりちゃんと知られていないことが改めてうかがえる内容だった。開口やタイルなど、建物の表面へのこだわりが、大きな特徴と言えるだろう。心憎い遊び心で、モダニズムを消化したデザインが楽しい。常滑のINAXライブミュージアムに続き、大阪会場でも展示デザインを担当したトラフは、ポンティのテイストに応えている。
2014/06/16(月)(五十嵐太郎)