artscapeレビュー
映像に関するレビュー/プレビュー
ドラキュラZERO
映画『ドラキュラZERO』(ゲイリー・ショア監督)を見る。タイトル通り、ドラキュラの始まりの物語だ。想像以上に面白かった。オスマン帝国から攻撃される15世紀のトランシルバニアを舞台とし、ドラキュラのパワーを超人的なものと位置づけ、神に許されない、自らも滅ぼしかねない破壊的な人間最終兵器として活用したこと。人間からドラキュラになるまでの3日という猶予/移行期間を設けたこと。この2点の設定が、巧みに英雄/悲劇譚に導く。
2014/11/19(水)(五十嵐太郎)
神様の言うとおり
いきなりのダルマからコケシまでは、わりと原作に近いで進行するが、その後に展開するゲームの性格がだいぶ違う。どうせ三池崇史で残酷描写をやるなら、『悪の教典』くらいにぶっ飛んで欲しいのだが、後半は妙にヒューマンな心理戦になってしまう。また伏線も回収せず、不満である。こうした形式の漫画の実写映画版は難しいのだろうか。
2014/11/15(土)(五十嵐太郎)
Akinori UENO Miki eco echo ego
会期:2014/11/04~2014/11/16
GALERIE H2O[京都府]
壁面に2点の絵画がある。1点は植物を描き、もう1点は都市風景を真上から描いたものだ。やがてCG映像とピアノ音楽が始まり、絵画と混ざってファンタジックな世界をつくり上げる。植物には木漏れ日が差し込み、都市風景には無数の光の粒が浮遊する。画面からビルが立ち上がり、光りの雲に覆われたかと思うと、赤い光線が高速で動き回り、2点の絵画を包み込む。やがて壁面全体が光の粒に包まれ、草木がなびく草原へと変化し、再び光の雲に覆われたかと思うと、色鉛筆のような質感の無数の直線が走り、最後は水滴に覆われた画面が崩落して、静寂と共にもとの状態に戻るのだ。絵画と映像と音楽がこの上なくマッチした、4分45秒の小トリップであった。
2014/11/11(火)(小吹隆文)
レッド・ファミリー
映画『レッド・ファミリー』を見る。韓国/北朝鮮の政治状況でしか成立しえない、家族と国家がむきだしにせめぎあう戯画的な設定を決めた時点で、半分成功。そこにキム・ギドクのピエタにも通じる自己犠牲が重なり、クライマックスでの度肝を抜く演劇的反復を通じて、「家族」が完成する。お見事だ。
2014/10/26(日)(五十嵐太郎)
自由が丘で
ホン・サンス監督『自由が丘で』を見る。加瀬亮が思いをよせる韓国人女性と再会するために、ソウルで過ごす日々。カフェ「自由が丘」、ゲストハウス、路地と坂道などの限定された場所で、反復する会話や人の配置。出来事を伝える手紙がばらばらになったために、時間がシャッフルし、様々な効果を生む。
2014/10/26(日)(五十嵐太郎)