artscapeレビュー
映像に関するレビュー/プレビュー
シン・ゴジラ
『シン・ゴジラ』は、1954年に初めてゴジラが登場した第1作の恐怖と崇高性を蘇らせた傑作である。津波破壊と原発事故後の想像力、安全保障をめぐる国内外の政治ドラマ、緩急の差が激しい動きと静止した立像、おそらく経済的な理由によるものだが、うんざりするほど続くスペクタクルではない限定的かつ効果的な見せ場などが印象的だった。特に自衛隊の攻撃には反応せず、アメリカ軍の攻撃で逆鱗に触れて、東京の高層ビルだけが集中的に破壊される深夜のシーンが美しい。これは家族や恋人の個人の物語に収束させない、現代日本の新しい怪獣映画である。
2016/07/31(日)(五十嵐太郎)
あの時みんな熱かった!アンフォルメルと日本の美術
会期:2016/07/29~2016/09/11
京都国立近代美術館[京都府]
1956(昭和31)年に来日した美術評論家ミシェル・タピエが伝え、日本で一大ブームを巻き起こした「アンフォルメル」(未定形なるもの)。その軌跡を、油彩画、日本画、陶芸、漆芸、書など約100作品で検証したのが本展だ。当時のブームはすさまじく、ジャンルや世代の枠を超えて多くの作家がアンフォルメルに傾倒した。本展ではその理由を、日本人の感性とアンフォルメルの親和性(例えばアクションペインティングと書、物質感と陶芸など)、戦中から占領下に海外の情報が閉ざされてきた反動などに求めている。なるほど日本人とアンフォルメルの相性は良かったようだが、ブーム後期になると作品はドロドロとした土俗性を帯び、タピエが唱えた国際性とは別の方向へと進化していく。このあたりは、舶来品を独自の味付けへとアレンジする日本人の特性が感じられて興味深かった。現代はあらゆる分野で細分化が進み、ジャンルや世代を超えたブームが起こりにくいと言われる。本展を見て、アンフォルメルに燃えた当時の人々を少し羨ましく思った。
2016/07/28(木)(小吹隆文)
プレビュー:あいちトリエンナーレ2016 虹のキャラヴァンサライ
会期:2016/08/11~2016/10/23
愛知芸術センター、名古屋市美術館、名古屋市内のまちなか、豊橋市内のまちなか、岡崎市内のまちなか[愛知県]
3年に1度、愛知県で開催される現代アートの祭典。3回目の今回は芸術監督に港千尋を迎え、「虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅」をテーマに、国内外100組以上のアーティストによる国際展、映像プログラム、パフォーミングアーツなどが繰り広げられる。またプロデュースオペラ「魔笛」の公演も行なわれる。テーマの詳細は公式サイトで調べてもらうとして、今回の大きな特徴は、豊橋市が会場に加わりますます規模が拡大したこと、キュレーターにブラジル拠点のダニエラ・カストロとトルコ拠点のゼイネップ・オズらを招聘し、参加アーティストの出身国・地域が増えたことなど、拡大と多様化を推し進めたことが挙げられる。この巨大プロジェクトを、港を中心としたチームがどのようにハンドリングしていくかに注目したい。個人的には、豊橋市が会場に加わることを歓迎しつつ、酷暑の時期に取材量が増えることにビビっているというのが正直なところ。前回は1泊2日で名古屋市と岡崎市を巡ったが、今回は1日1市ずつ3回に分けて取材しようかなと思っている。
2016/07/20(水)(小吹隆文)
辰野登恵子の軌跡 イメージの知覚化
会期:2016/07/05~2016/09/19
BBプラザ美術館[兵庫県]
一昨年に急逝した辰野登恵子(1950~2014)の業績をたどる展覧会。約70点の作品を前後期に分けて展示しているほか、映像や資料も紹介されている。筆者は1990年前後に辰野作品と出合ったため、当時の作品に愛着を覚えている。また、1970年代のミニマルな作品も見たことがあるが、2000年以降は詳しく知らない。彼女の作品は関西で見る機会が少なく、本展を知ったとき、ようやく全貌がわかると喜んだ。いざ展示を見ると、油彩画と版画がほぼ五分五分で並んでおり、辰野がいかに版画を重視していたかがわかった。また、版画作品の質感が、まるで油彩画のように重厚であることにも驚かされた。そして何より注目すべきは、本展出品作のほとんどが関西在住の個人コレクターの所蔵品であることだ。関西にこんな目利きがいたとは知らなかった。そしてよくぞこれだけのコレクションを形成してくださった。今後も積極的に公開してほしいが、これだけの規模の展示は滅多にないだろう。それだけに本展は貴重であり、後期も必ず見に行こうと決意を新たにした。
前期:2016/07/05〜08/07
後期:2016/08/09〜09/19
2016/07/15(金)(小吹隆文)
インデペンデンス・デイ:リサージェンス
20年後の「インデペンデンス・デイ」を見る。想定どおりに物語はバカで、ダサいデザインのエイリアンも、中枢の一撃で全隊が敗北する虫モデルの組織も相変わらずだ。しかしながら、3DのIMAXで映像の迫力を体験できることには十分な価値がある。重力の操作によって上げて落とすという単純な攻撃だが、なるほど破壊力は凄まじい。ハリケーンが通過した後のような破壊は見所である。最近のハリウッド映画のさまざまな作品の続編において、中国の存在感が目立つのは、本作も例外ではなかった。
2016/07/13(水)(五十嵐太郎)