artscapeレビュー
映像に関するレビュー/プレビュー
DUBHOUSE:物質試行52/映画としての音楽
会期:2015/04/25~2015/05/08
K's cinema[東京都]
新宿 K's cinemaにて、七里圭の作品『DUBHOUSE:物質試行52』と『映画としての音楽』を見る。前者は鈴木了二との共同監督であり、DUBの記録映画でもある。特に作品の前半は、ほぼ真っ黒な闇の画面が続き、音だけが響く、強烈な体験だった。こうなると、自分が鑑賞している場そのものの音響や空間に対して鋭敏になる。後者は映画史をたどりながら、やはり音の圧倒的な存在感で迫ってくる。これはただ見る映像ではなく、モノとしての映画ではないだろうか。
2015/05/02(土)(五十嵐太郎)
寄生獣 完結編
映画『寄生獣 完結編』は、前編よりもよかった。人間に巣くう侵略者の説明がすでに終わっており、ひるがえって、人間とは何かを問う内容が多いからだろう。人間の方が地球にとっての「寄生獣」という認識さえ示される。そして、後編の主役になっていた深津絵里の怪演! が印象深い(特に赤ん坊をあやす、彼女の笑い)。ところで、コンクリート打放しの現代建築が、非人間たちの根城になっている。やはり、こういう空間は感情がない、冷たいイメージがあるということなのだろう。
2015/05/01(金)(五十嵐太郎)
バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』を見る。最初から最後まで、ワンカットのように延々と続くカメラワークは、初日を控えた閉鎖的な舞台の空気感をかもし出す。一方、まさかの超現実的なSF風の描写は、マイケル・キートンの内面世界を表現し、ドラムのみの演奏によるバックグラウンド・ミュージックは緊張感を高める。それにしても、娘役エマ・ストーンの目力がすごい作品だ。
2015/05/01(金)(五十嵐太郎)
國府理の仕事と仲間たち
会期:2015/05/01~2015/05/30
ARTCOURT Gallery[大阪府]
昨年4月に急逝した國府理を偲んで、彼の作品15点と、彼と交流のあった仲間たちの出品物65点(作品37組、文章28名)から成る展覧会が開催された。筆者と國府の出会いは、彼が1994年に発表した《電動三輪自動車》にさかのぼる。その後も機会があるごとに作品を見てきたが、このように改めて彼の仕事を振り返る機会を得ると、やはり感慨を禁じ得ない。國府の作品は、前述した《電動三輪自動車》の他、《ROBO Whale》、《Sailing Bike》、《Parabolic Garden》などが展示された。それに花を添えたのが、仲間たちの65点である。國府理というアーティストが、どれだけ多くの人に愛され、影響を与えたかがよく分かる。今後は同輩や後輩のアーティストが、彼のスピリットを継承してくれるであろう。
2015/05/01(金)(小吹隆文)
石田尚志「渦まく光」
会期:2015/03/28~2015/05/31
横浜美術館[神奈川県]
彼のドローイング・アニメーションの作品を、あちこちで見てきたが、それらが集合しており、まとめて見ることができた。バッハなど、音楽を視覚に変換した作品(制作のための資料がすごい)、窓を効果的に使う作品など、興味深い映像が多い。部屋の壁に絵を描き続けて、それをアニメ化する現在のスタイルを確立した労作だが、見覚えある窓だと思ったら、なんと東大の駒場寮で制作したものだった。
2015/04/25(土)(五十嵐太郎)