artscapeレビュー

映像に関するレビュー/プレビュー

ジュラシック・ワールド

DNA操作によるハイブリッド型恐竜の暴走は、過不足なく、出来がよく、面白い。この作品にテーマパーク的なアトラクションを求めるならば、大満足である。一方、予想外のことがあまりにもない。22年前の一作目は新しい形式の発明だったと思うが、本作は発明なきバージョンアップというべきか。

2015/08/17(月)(五十嵐太郎)

ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション

『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』は、2時間超えだが、飽きさせない。情報機器の操作による現代的な遠隔地スリル(空中の扉開けや、水中のデータ入れ替えなど)も、旧来のバイクアクションも、期待を裏切らない。伏線の回収もよくできている。今回は特にファム・ファタル的に物語をかきまわす、イルサの存在が光っていた。

2015/08/14(金)(五十嵐太郎)

人生スイッチ

会期:2015/07/25

ヒューマントラストシネマ有楽町[東京都]

ペドロ・アルモドバル製作、ダミアン・ジフロン監督によるアルゼンチン映画。ささいなきっかけから不運の連鎖に巻き込まれ、人生の軌道から転落していく人々の悲喜劇を、6つの物語によって描いた。いずれの物語も短時間ながら、度肝を抜かれるほど思いがけない展開で、最後まで楽しむことができる。
通底しているのは、いわゆるブラック・ユーモア。山奥の田舎道で交通トラブルに直面した男が相手の男と死闘を繰り広げた末、「心中」してしまう話や、飛行機に乗り合わせた乗客がパイロットによって計画的に乗機させられていた話などは、腹の底から笑いつつも、喉元に一抹の後味の悪さが残る、きわめて良質の暗い笑い話である。
しかし、この映画で考えさせられたのは、ブラックユーモアの鋭さというより、その骨子である物語の強度についてである。例えば、ボンビーナこと爆弾男の話。ビルを爆破する解体職人の男は、駐車違反区域ではないにもかかわらず、路上に停めていた車をレッカー移動されてしまう。不当を訴えるが無視され、窓口で大暴れしたところ大々的に報道。すると妻から離婚を言い渡され、会社からも解雇され、再びレッカー移動。負の連鎖に苛まれた男は、ついに会社の倉庫から大量の爆弾を盗み出し、自分の車のトランクに仕掛ける。カフェで待ち構えていると、案の定、目の前で車がレッカー移動され、陸運局の駐車場に運ばれたところを見計らってスイッチを押す──。
この作品にかぎらず、多くの物語映画は現実と虚構の均衡関係のうえに成り立っている。ところが、本来的に物語映画は虚構であるにもかかわらず、昨今は現実の側に傾いてしまう作品が少なくない。せっかく虚構の世界を突き詰めていたのに、最後の最後で現実の規則に絡め取られる作品に興醒めさせられることが多いのだ。だが、ボンビーナの物語が優れているのは、虚構であることを最後まで貫き、虚構ならではの痛快なカタルシスを観客に存分に与えているからだ。窓口のガラスを粉々に粉砕しながら大爆発するシーンは、不条理なレッカー移動に対して観客の心中に鬱積していた憤懣をきれいさっぱり吹き飛ばしたに違いない。
むろん、とりわけ東日本大震災以後、あるいは昨今の政治状況を鑑みれば、「事実は小説よりも奇なり」と言わざるをえないほど、現実は虚構を圧倒していることは間違いない。けれども、だからこそ、虚構は虚構の力を再定義する必要があるのではないか。ことは映画にかぎらないことは、言うまでもない。

2015/08/12(水)(福住廉)

進撃の巨人 ATTACK ON TITAN 前編

実写版の『進撃の巨人』を見る。登場人物や舞台など、話題になった諸々の設定変更は、そもそも原作の物語構造がほかの状況でも通じる神話的な普遍性をもっているし、日本で実写の映画を制作するなら、これでもよかったと思う。中世ヨーロッパ風の街並みにこだわっていたら、むしろ悲惨な結果を招いたかもしれない。冒頭20分くらいまでのたたみかける特撮や、軍艦島を活用したシーンも悪くない。が、肝心の立体機動シーン、そして人物の造形、会話、行動はあまり感心しなかった。原作と違うからではなく、人間が描けていないからである。

2015/08/01(土)(五十嵐太郎)

試写「あえかなる部屋──内藤礼と、光たち」

会期:2015/09~(予定)

内藤礼を追いかけた映画。極度に繊細な(しかし強靭な)アーティストで、顔を出さないのが条件だったというが、途中で撮影を拒否されてしまう。それでも映画として成り立せるため、後半から5人の女性が出てきて豊島美術館を訪れる話になってしまう。いったい主役はだれなんだろう。内藤礼か、5人の女たちか、それとも豊島美術館なのか。主題がなにかを考える映画でもある。

公式ウェブサイト=http://aekanaru-movie.com/


映画『あえかなる部屋 内藤礼と、光たち』予告編

2015/07/31(金)(村田真)