artscapeレビュー
映像に関するレビュー/プレビュー
大林宣彦『この空の花 長岡花火物語』
3年前に劇場で見て以来、DVDで大林宣彦監督の映画『この空の花』を再度鑑賞する。やはり何にも似ていない、圧倒的にユニークな作品だ。結局、あれから4年が過ぎたが、これを超える3.11映画は出てないのではないか。長岡の花火が時空を超えて、さまざまな歴史と記憶にめくるめく接続する。そして日本の状況が大きく変わり、幾度も繰り返される「まだ戦争には間に合う」の言葉は、むしろ最初の上映時より現在のほうが切実になった。
2015/07/05(日)(五十嵐太郎)
マッドマックス──怒りのデス・ロード
『マッドマックス』の新作を見る。いやはや、ほとんどノンストップで、最初からすべて見所の、ただ行って帰るだけの、これ以上なくシンプルな物語ながら、各キャラの背景も想像させて、呆れるほどにすごい。3Dで見たが、その必要はないだろう。脳内で完全に3D化される。監督が老いてますます若返ったような映画だ。この作品は間違いなく、映画というメディアに固有な面白さを抱えており、近年のCGを過剰に使う流行が馬鹿らしくなる。
2015/06/24(水)(五十嵐太郎)
プレビュー:ヴォルフガング・ティルマンス Your Body is Yours
会期:2015/07/25~2015/09/23
国立国際美術館[大阪府]
ドイツ出身の写真家ヴォルフガング・ティルマンスの、西日本では初となる大規模な個展。ティルマンスの作品は、自身を取り巻く日常的な光景、友人、街頭の若者などを主なモチーフとし、セクシャリティやジェンダーといった今日的な問いかけを孕んでいること、それらをインスタレーションとして展示することで知られている。また、近年の写真集『Neue Welt』(新しい世界)では、政治経済の問題や技術の進歩など地球上で繰り広げられているさまざまな出来事に対して自身の見解を表明するなど、新たな展開を見せている。本展では、ティルマンス自身が設計した展示空間で日本初公開となる多数の写真作品を展示する他、2台のプロジェクションによる映像インスタレーションも発表。日本の美術館では2004年の東京オペラシティアートギャラリー以来11年ぶりの個展であり、国立国際美術館1館のみでの開催となる。
2015/06/20(土)(小吹隆文)
プレビュー:他人の時間 TIME OF OTHERS
会期:2015/07/25~2015/09/23
国立国際美術館[大阪府]
東京都現代美術館、国立国際美術館、シンガポール美術館、クイーンズランド州立美術館|現代美術館(オーストラリア)を巡回する国際現代美術展。各館のコレクションを含めたアジア・オセアニア地域の若手を中心としたアーティストを紹介し、現代における「他人」との関わり合いについて考察する。先に開催された東京都現代美術館に続く2番目の会場となる国立国際美術館では、4会場中最大となる20名の作家を紹介。大阪から合流するヒーメン・チョン、キム・ボム、加藤翼の3名は日本初公開の作品を出品し、東京でサウンド・インスタレーションを発表したmamoruは、大阪では1日限りのレクチャー・パフォーマンスを行う。また、東京展とは展示構成を変えることにより、いかにして隔たりのあるものに手を伸ばし、「他人」にアプローチするかという問いにフォーカスする。
2015/06/20(土)(小吹隆文)
プレビュー:堂島リバービエンナーレ2015「Take Me To The River 同時代性の潮流」
会期:2015/07/25~2015/08/30
堂島リバーフォーラム[大阪府]
今年で4回目となる国際現代美術展。過去3回は南條史生、飯田高誉、ルディ・ツェンがアーティスティック・ディレクターを務めたが、今年は英国よりトム・トレバーを招聘。前例がないほど多様化、グローバル化し、流動的なネットワーク・カルチャーに依拠したセルフ(自我)が現れている今、アートはいかに機能し、状況に変化をもたらし得るかを検証する。展覧会タイトルの「Take Me To The River」は、ソウル歌手アル・グリーンとギタリストのメイボン・ティーニー・ホッジスにより1973年に発表されたR&Bの名曲であり、「River」は現代の流動的な状況の比喩と思われる。出品作家は、アンガス・フェアハースト、ピーター・フェンド、サイモン・フジワラ、池田亮司、メラニー・ジャクソン、下道基行、プレイ、笹本晃、島袋道浩、照屋勇賢、フェルメール&エイルマンスなど。
2015/06/20(土)(小吹隆文)