artscapeレビュー
映像に関するレビュー/プレビュー
アンブロークン
エミレーツ航空で、アンジェリーナ・ジョリー監督『アンブロークン』を見る。不屈のイタリア男のオリンピック(ドイツや日本との関わりにも触れる)、1カ月半の過酷な海上漂流サバイバル生活、そして日本軍の虐待が、物語の骨格となっている。が、これで反日映画とされ、公開中止か? という状況に改めて驚く。ただ、映画作品としては必ずしも傑作でない。
2015/06/18(木)(五十嵐太郎)
MONSTER Exhibition 2015
会期:2015/06/04~2015/06/08
渋谷ヒカリエ 8/COURT[東京都]
渋谷ヒカリエの8階にて、MONSTER exhibition2015が開催された。被災地の仙台で企画された怪獣をテーマにした公募であり、デザインやアートが同居する異種格闘技の雰囲気は、以前審査を担当したキリン・アートアワードを思い出す。今回は造形としてのデザインよりも、精神的な脅威としての怪獣性に注目し、児玉龍太郎の13分の不穏な短編映画『小僧枯』が気になった。本展はニューヨークに巡回する予定だが、『ゴジラ』や『チャッピー』など、日本リスペクトの映画が海外で次々と発表されるなか、本家の怪獣に対する創造力を見せてほしい。
2015/06/03(水)(五十嵐太郎)
セッション
映画『セッション』を見る。確かに、手から血がにじみ出るほど、凄まじいドラムの練習シーンは、リアリズムの描写ではなく、かなり戯画的で、スポ根・マンガのようだ。特にラストの演奏が、ハイライトになる音楽バトルの映画だが、果たして天才を育てることは可能なのか、という教育論としても見ることができるだろう。もっとも、天才になるためには、常人の俗な生活をしていてはダメという極論を示しているのだが。
2015/06/01(月)(五十嵐太郎)
プレビュー:声が聴かれる場をつくる──クリストフ・シュリンゲンジーフ作品/記録映画鑑賞会+パブリック・カンバセーション
会期:2015/07/20、2015/08/08、2015/9/27
アートエリアB1[大阪府]
映画、舞台演出、美術、テレビ、選挙運動など、多様なメディアと社会領域を横断する活動を行ない、2011年のヴェネチア・ビエンナーレでは、ドイツ館の構想半ばで逝去するも金獅子賞を受賞したクリストフ・シュリンゲンジーフ。多様な社会層の参加と議論の喚起によって成立する彼のアクション/パフォーマンス作品の記録映画を上映する試みが、〈声なき声、いたるところにかかわりの声、そして私の声〉芸術祭III PROJECT(8)「ドキュメンテーション/アーカイヴ」として企画されている。
今回上映されるのは、『友よ!友よ!友よ!』『失敗をチャンスに』『外国人よ、出ていけ!』『フリークスター3000』の4作品であり、鑑賞後にはファシリテーターの企画によって対話の場が設けられる。『失敗をチャンスに』は、シュリンゲンジーフが1998年のドイツ総選挙に向けて設立した政党「チャンス2000」の選挙運動のドキュメンタリーで、俳優、失業者、障害者らが国会議員候補となって、ドイツ全国で街頭演説を行なった。また、外国人排斥を掲げる極右党の政権入りを背景にした『外国人よ、出ていけ!』は、12人の「亡命希望者」をコンテナハウスに居住させ、内部の様子をネット中継し、「観客」の投票によって国外追放する外国人が1人ずつ選ばれていくという過激な仕立てのパフォーマンスの記録である。
「演劇」という虚構のフレームを用いて、社会に潜在する矛盾や差別意識をあぶり出すとともに変革の可能性を提示するシュリンゲンジーフ作品の記録上映を通して、パフォーマンスとドキュメンテーションのあり方のみならず、参加型芸術と現実社会の関係、社会の多声性をいかに拾い上げるか、民主主義、同質性と排除の力学などについて再考する機会になればと思う。
2015/05/31(日)(高嶋慈)
チャッピー
映画『チャッピー』を見る。ニール・ブロムカンプ監督の『第9地区』に続く傑作である。パトレイバーやアップルシードなど、日本の漫画・アニメをリスペクトするSFの意匠をまといながら、オタク・ガジェットの実写にとどまらず、教育、成長、親子をテーマとした普遍的な物語になっている。最後は、精神/データ的な存在を扱い、映画で設定されているSFの次元が変わってしまうのは気になったが、これは中身が大事という劇中の台詞に通じてはいる。難を言えば、悪役の造形・動機が理解しづらく、あまり深掘りされていないことか。
2015/05/25(月)(五十嵐太郎)