artscapeレビュー
その他のジャンルに関するレビュー/プレビュー
プレビュー:The Legacy of EXPO’70 建築の記憶─大阪万博の建築
会期:2017/03/25~2017/07/04
EXPO’70パビリオン[大阪府]
高度成長が頂点を迎える時期に開催され、戦後日本の記念碑というべき一大イベントだった1970年大阪万博(日本万国博覧会)。数々のパビリオンが立ち並び、さながら未来都市のようだった会場は、現在は公園となり(万博記念公園)、往時をしのぶ建築は《太陽の塔》などわずかしか残っていない。そのうちのひとつ《EXPO’70パビリオン》(元・鉄鋼館)で、大阪万博の建築をテーマにした企画展が行なわれる。展示物は、パビリオンの設計図、構想模型の写真、約14年の月日をかけて完成したエキスポタワー模型の初披露と、同タワーが解体される過程を記録した写真225点など。大阪万博は建築史的にも重要で、エアドームや吊構造などの新技術がふんだんに導入された。また、建築の価値観が重厚長大から軽く、小さく、動くものへとシフトするきっかけになったともいう。本展は、そうしたパビリオン建築の記憶をたどるとともに、現在に引き継がれているものを確認する機会となるだろう。
2017/02/20(月)(小吹隆文)
ヒスロム活動紹介展示、アートノード・ミーティング02
会期:2017/02/19
せんだいメディアテーク[宮城県]
せんだいメディアテークへ。7階では、身体系のアーティストと言うべきヒスロムの活動を紹介する小展示を開催していた。2018年に本格的な展示を行なう予定である。またKOSUGE1-16と甲斐賢治のトークでは、現地のリサーチをベースとした制作の手法、そして子どもの遊びを創出する、彼らの海外活動から仙台のアートノードで昨年末に発表した「アッペトッペ」までの軌跡を振り返る。
2017/02/19(日)(五十嵐太郎)
パロディ、二重の声 ──日本の1970年代前後左右
会期:2017/02/18~2017/04/16
東京ステーションギャラリー[東京都]
「パロディ」とはなんだろうか。広辞苑には「文学作品の一形式。よく知られた文学作品の文体や韻律を模し、内容を変えて滑稽化・諷刺化した文学。日本の替え歌・狂歌などもこの類。また、広く絵画・写真などを題材としたものにもいう」とある。筆者が「パロディ」というものを知ったのは雑誌『ビックリハウス』(正確に言えば、同誌の「日本パロディ展作品カタログ」)とアメリカのパロディ雑誌『MAD』でのことで、それらに掲載された「作品」からすると広辞苑の定義は至極納得のいくものだ。だが本展を見て、「パロディ」と称するものに上の定義にとどまらないものがあることに気づかされる。そのひとつは、白川義員の写真を利用したマッド・アマノの合成写真をめぐって争われた、いわゆる「パロディ裁判」の俎上に載せられた作品だ。山肌を下るスキーヤーたちの軌跡をタイヤの轍に見立てたコラージュだが、そこにあるのは見立ての面白さと環境問題に対する諷刺、ブラックユーモアであって、オリジナル作品が人々にとって周知のものであったわけではなく、表現のスタイルを模したものでもなく、白川の写真はコラージュの素材として借用されただけだ。マッド・アマノの作品群は基本的に同様の写真コラージュ(現在であれば雑コラと呼ばれるだろうもの)であり、オリジナル作品の形式模倣というスタイルではない。しかしながら、この作品が「パロディ裁判」として1971年から87年まで争われたことは、それが辞書的な定義でパロディと呼べるものかどうかとはまた別の話として、パロディという言葉で括られるなにかがひとつの表現形式として現れ、ブームとなり、そして収束していくまでの時代の空気を伝えるものであることは間違いない。実際、『ビックリハウス』は1974年に創刊し85年に休刊、名画やスターをモチーフにした河北秀也による営団地下鉄のマナーポスターシリーズは、1974年から1982年まで。この時期にパロディと呼ばれた表現に相当するものはそれ以前にもそれ以降にも存在するが、それらがパロディという言葉で括られたのは同時代的現象であったがゆえの「1970年代前後左右」なのだろう。
ではなぜ70年代(と、その前後左右)だったのか。成相肇・東京ステーションギャラリー学芸員は、この時代のパロディの標的の圧倒的多数が広告と雑誌であると指摘している(本展図録、12-24頁)。すなわち、広告や雑誌メディアの影響力の増大がパロディの源泉であった。興味深いことに、広告や雑誌は標的であると同時に、パロディ表現のメディアでもあった。『朝日ジャーナル』に掲載された「櫻画報」、雑誌『ビックリハウス』や営団地下鉄のマナーポスターなどはその顕著な例だろう。「日本パロディ展」入選作家のプロフィールにデザイナーやイラストレーター、デザイン専門学校生が多いことも、この時代を特徴付けているように思う。彼らはパロディの源泉となる素材を生み出しつつ、自らその替え歌を歌っていたのだ。
本展は1970年代(と、その前後左右)の文化を見せる展覧会であって、パロディ作品の展覧会ではない。とはいうものの、パロディに言及するテキストをステカンのスタイルで展示したり、図録を黒革の手帳のように仕立てたり──手帳に倣って14ページもの白紙の《MEMO》ページがある──、チラシにはゼロックス風のかすれ・潰れがあるなど、展覧会という形式に「二重の声」が仕込まれていることにもこっそり注目したい。[新川徳彦]
関連レビュー
ディスカバー、ディスカバー・ジャパン「遠く」へ行きたい|SYNK(新川徳彦):artscapeレビュー
2017/02/17(金)(SYNK)
アスリート展
会期:2017/02/17~2017/06/04
21_21 DESIGN SIGHT[東京都]
前回の「食べ物」を「見世物」にする企画展はリサーチ量も半端なく、とてもうまくいっていたと思うが、今回のもともと十分に「見世物」として大人気のスポーツを、あえて展覧会でもう一度「見世物」にするのはなかなかハードルが高いなと感じた。それぞれに工夫された展示ではあったが。
2017/02/17(金)(五十嵐太郎)
第4回ワークショップ「6年目のふるさとを考える」─原発型避難集落への改修による復帰─
朝日座[福島県]
南相馬で第4回ワークショップ「6年目のふるさとを考える─原発型避難集落への改修による復帰─」を開催。登録有形文化財の朝日座にて、リノベーション・改修をテーマに新堀学・豊田善幸・嶋影健一の講演・座談会を行なう。新堀学は、リノベーション手法の概論と被災地の事例を紹介した。豊田善幸は、震災後、解体の危機にあった古民家を自費で購入し、まちの人を巻き込みながら改修し、すでに存在する地域の資産を見直していく、いわき市でのユニークな活動を報告した。そして嶋影健一からは小高区の公会堂リノベーション案を発表した。座談会では、311後の福島における建築の状況を踏まえて、風景の断絶と連続、リノベーションの可能性などを討議する。最後に、東北大五十嵐研の塔と壁画のある集会所の建設プロセスやWSの成果をまとめた映像作品『風景の断絶に抗う』(学生の木下順平が監督)を大スクリーンで上映する。
2017/02/13(月)(五十嵐太郎)