artscapeレビュー
パフォーマンスに関するレビュー/プレビュー
SPAC「真夏の夜の夢」
会期:2015/10/31~2015/11/03
にしすがも創造舎[東京都]
シェイクスピアの原作を野田秀樹が潤色したものを、さらに宮城聰が演出した。異なる時代とクリエイターが層をなし、過剰な台詞と飲み込む言葉に彩られたパワフルな作品に仕上がっている。録音された音ではなく、舞台の奥で生の音楽をずっと演奏していることも、作品の迫力を増す。またアフタトークにおける宮城の説明が、とてもうまいのに関心させられる。
2015/11/03(火)(五十嵐太郎)
METライブビューイング:ヴェルディ『イル・トロヴァトーレ』
会期:2015/10/31~2015/11/06
METライブビューイングのプログラムで、ヴェルディ『イル・トロヴァトーレ』を映画館で見る。火あぶりにされたジプシーの老女の呪い/復讐ゆえか、女性をめぐって引き起される兄弟殺しの悲劇である。闘病を感じさせないホヴォロストフスキーと、貫禄がついたネトレプコ、主役をつとめる二人の歌手が舞台を引き立てる。切り替わる回転舞台と、階段を伴う高さを生かした空間の演出である。
2015/11/03(火)(五十嵐太郎)
デボラ・コルカー・カンパニー『ベル』
会期:2015/10/31~2015/11/01
KAAT神奈川芸術劇場[神奈川県]
貞淑な妻と高級娼婦という二面性を描く物語「昼顔」をモチーフとし、冒頭はダンサーたちの動きがピタッとそろったバレエで始まり、途中からは仮面をつけた男が参加し、やがて上下、奥行きの運動が激しくなる娼館で踊る。ステージ全体をおおう大きな布や舞台を仕切る膜を使い、シルエットやボディラインだけを見せる演出が美しい。
2015/11/01(日)(五十嵐太郎)
プレビュー:岡田利規『God Bless Baseball』
会期:2015/11/19~2015/11/29
あうるすぽっと[東京都]
フェスティバル/トーキョー(F/T)をはじめとして、この時期は舞台芸術ラッシュなわけだけれど、もっとも見逃してはならないのは岡田利規の『God Bless Baseball』だろう。岡田作品なのはもちろんのこと、舞台美術に高嶺格、また『Urban Folk Entertainment』の記憶も新しい舞踏家・捩子ぴじんの参加など、話題性はふんだんにあり、また韓国の出演者たちとのコラボレーション、光州での初演といった東アジアとの交流のあり方を考える良い機会であることも注目すべき理由のひとつだ。それにしても、「野球」というテーマが気になる。もちろん、自国の優勝決定戦をワールドシリーズと呼んでしまうアメリカ合衆国の野球界から日韓に持ち込まれたスポーツであることは言うまでもない。その「野球」にどこまで深いメタファーがちりばめられているのか、その深さが今後の日本の舞台芸術の指針になることを期待したい。
岡田利規『God Bless Baseball』フェスティバル/トーキョー15 トレーラー
2015/10/31(土)(木村覚)
カンパニー マリー・シュイナール「春の祭典」「アンリ・ミショーのムーヴマン」
会期:2015/10/24~2015/10/25
KAAT神奈川芸術劇場[神奈川県]
「春の祭典」は、ニジンスキーにさかのぼり、その多重化のようなエネルギッシュな舞台だった。それにしても、これはさまざまなカンパニーがしばしば使うように、ダンサーに愛される曲だ。後半の「アンリ・ミショーのムーヴマン」は、スクリーンに次々と投影される原初的な人のようなイメージを、瞬間的に身体で三次元化しながら表現する。息もつかせないスリリングな展開だった。
2015/10/25(日)(五十嵐太郎)