artscapeレビュー
パフォーマンスに関するレビュー/プレビュー
ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2015「Wonder Future」
会期:2015/08/24
鎌倉芸術館 大ホール[神奈川県]
建築家の光嶋裕介が、直方体を組み合わせ、街に見立てたステージセットをデザインしている。新作アルバムからの楽曲では、彼の描いた幻想建築が動いたり、変化するイメージを投影し、各メンバーの立ち位置を固定したPVのようだ。モニターの置き場がない空間なので、全員がイヤーモニターを使用している。アジカンはわずかなMC、ライブ的な曲のシメも入れず、間髪入れずに次曲に続く展開だが、最初から総立ちのクールで熱いライブだった。ベタなラブソングなどない、独特の世界観の歌詞は絵画のような舞台とよくあう。メンバー退場の終演時のみ、音を出しっ放し。最近見たライブのなかでは凛として時雨、アレクサンドロスもやっていた。
2015/08/24(月)(五十嵐太郎)
WORLD HAPPINESS 2015
会期:2015/08/23
夢の島公園陸上競技場[東京都]
ベストアクトは筋肉少女帯だった。おしゃれフェスにアウェイ感たっぷりのお笑いメタルで殴り込み、大槻の天才的MC+橘高の超高速ギター+走るkeyで聴衆を取り込む。さらに「テクノライディーン」の封印を解除し、ホームに変えた。ちなみに、続くスチャダラパーのBOSEとは、以前なぜか座談会したことがある。
2015/08/23(日)(五十嵐太郎)
マクベス
会期:2015/08/22~2015/08/23
KAAT 神奈川芸術劇場[神奈川県]
アンドリュー・ゴールドバーグ演出「マクベス」@KAAT。精神病院を舞台に、佐々木蔵之介のほぼひとり芝居である。そのほかは三台の動く監視カメラ(=三人の魔女か?)、医者と看護婦のみが登場する。ひとりで20役を演じ分けるのに、鏡、浴槽、椅子、衣服、人形など、小道具を巧みに扱う演出だった。ただ全体的に少し台詞が聞きづらかったので、原作を知らない人には難しいかもしれない。
2015/08/22(土)(五十嵐太郎)
庭劇団ペニノ『地獄谷温泉 無明ノ宿』
会期:2015/08/27~2015/08/30
森下スタジオ[東京都]
この3年ほど海外公演が続いた庭劇団ペニノ。久しぶりの日本公演ではなかろうか。幕が上がると、森下スタジオに小さな田舎宿の玄関が出現している。マメ山田扮する父と50才くらいに見える息子。人形劇の依頼があり、宿に来てみたが、依頼主は現われず、主不在の宿に住む老女も要領を得ない。事故で盲目となった青年の暮らす部屋に一晩居候させてもらう。舞台で描かれるのは2人が翌朝に宿を出るまでの時間だ。いつものこととはいえ、驚かされるのは舞台美術。古びた宿の臭いを嗅いでしまうかのようなリアリティは、お話の筋を追うのとは別種の、お話の底に漂う、〈人間の皮を剥いだところにある何か〉を感じさせる。それにしても圧巻だったのは、暗転した30秒後に、玄関が盲目青年の部屋へと瞬時に転換していたことだ。後でわかるのだが、これは回り舞台で、玄関→部屋→脱衣所→風呂場と90度角の空間が四つつくられていた。この順で回転していけば、人間が次第に自分を露出して、最後には裸体になるという格好だ。登場人物たちは、親子と老女、盲目の青年のほかに、三助(銭湯の使用人)と中年・初老の温泉芸者2人。誰もが見事に常識から外れていて、観客の心を不安定にする。この温泉「地獄谷」は、人間の隠された部分をやさしく開陳させる世界だ。観客はそこで、エロティックな解放感を得る。それがいわば戯画的に展開されるのが、風呂場でのシーンで、そこで登場人物たちは三助以外全員が全裸となり、文字通り剥き出しにされる。マニ車みたいに、くるくると舞台は回り、登場人物たちが自分を露出していくと、観客のなかでなんともいえない、禁じられていていつもは蓋がされている快楽が広がっていく。主人公は50才ほどの息子なのだが、小学校すら通わず、父の人形劇の助手となり、この年まで生きてしまった。自由を奪われた人生を哀れに思いつつ、観客はそこに自分を透かし見るだろう。そして、そのとき、主人公から受ける痛がゆいような感触が、急にすべての人間を映す鏡として立ち現われてくるのである。
庭劇団ペニノ「地獄谷温泉 無明ノ宿」trailer
2015/08/20(木)(木村覚)
プレビュー:WAKAYAMA SALONE 2015
会期:2015/09/13~2015/10/12
和歌山市、海南町、高野口町、高野山の15会場ほか[和歌山県]
現代アートの動きが乏しかった和歌山で、「アート」と「旅」をキーワードにした地域アートイベントが初開催。和歌浦、加太、和歌山城、高野山といった観光名所を含む会場を巡りながら、アート、クラフト、デザイン、プロダクト、建築、インスタレーションなどの展示を楽しむことができる。また、クラフトビールフェア、ナイトマーケット、音楽ライブイベント、映画上映会など、夜間にも関連イベントが行なわれるとのこと。出品作家は、金氏徹平、西光佑輔、contact Gonzo、伊藤彩、河合晋平、永沼理善、エリカ・ワード、リッカルド・ピノバーノ、和歌山建築チームなど、国内外の30組以上を予定。
2015/08/20(木)(小吹隆文)