artscapeレビュー
パフォーマンスに関するレビュー/プレビュー
かえるP『Color babar』

会期:2015/05/15~2015/05/18
こまばアゴラ劇場[東京都]
桜美林大学出身の大園康司と橋本規靖が振り付け、演出を行なうかえるPの第6回公演。印象的なのは、ポップソングにあわせて踊るシーン。とくにビリー・ジョエルの「ピアノ・マン」をバックに20代の男3人が激しく踊るところは鮮烈だった。腹を「ピシッ」と叩くしぐさなどコミカルな振りもあるけれど、こわばり、力の出しどころが見当たらないかのような、もどかしい身振りになにより惹かれる。モーリス・ベジャールのソロにも似ていなくはないけれど、芸術系よりは、ジェローム・ロビンスやボブ・フォッシーなどのミュージカル映画系のダンスになぞらえたくなる。絶対にいわゆる〈美しい振り付け〉はしたくない。既存のダンス・テクニックとも距離を置きたい。身体がここにあることを伝えたい。できたらその身体が嘘っぽくなく躍動していてほしい。そんな思いがこちらの胸に飛び込んでくる。タイトルは「からあ・ばばあ」と読める。なるほど、老人の身体なのか、腰を屈めた姿勢でうろうろするシーンがあり、そんなところでは「コンセプトだけ知っているけど見たことないままに舞踏を踊ってみたひと」みたいに見えた。正直、なぜこの角度のセンスなんだろうと理解できない部分もあるが、それは近年の若者ロックに思うのと同じような疑問で、99パーセント筆者が年をとった徴だろう。ただ、できることならば、2人の審美性がもう一歩だけ観客に近づいて伝わりやすい部分が増すならば、ダイナミックな展開が始まるのだろう。そんな予感に満ちた作品だった。
2015/05/17(日)(木村覚)
プレビュー:大谷能生×山縣太一『海底で履く靴には紐が無い』

会期:2015/06/02~2015/06/14
STスポット[神奈川県]
ハイバイの岩井秀人演出で『再生』を快快が上演するなど(KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ、2015年5月21日~30日)、話題の公演が目白押しのなか、今月ぜひとも紹介したいのはこの1本。チェルフィッチュで活躍する役者・山縣太一が脚本・演出を行ない、主演をミュージシャンで評論家の大谷能生が務めるという謎めいた企画なのだが、本人たちはいたってまじめに演劇の更新を目指している。ひとつの注目点は、はたして40歳を超えた大谷が半年ほどの稽古で役者へと変貌できるのか?にあるのだが、それは同時に、どんなひとでも集中して稽古すれば役者になれるのか?という問いに答える実験でもある。ある意味演劇版「ライザップ」みたいなところもあるけれども、もっと注目すべきは、チェルフィッチュの演劇を体現し続けてきた山縣が、自分の蓄えてきた身体への思考を炸裂させようとしている点だろう。山縣の身体に宿っているのはじつはチェルフィッチュだけではない、彼が師匠と仰ぐ手塚夏子の身体論こそ、この演劇を動かす原動力となっている。毎夜、豪華なゲストを招いたアフタートークが用意されているのも気になるところだが、大谷と山縣の思いとしては、ゲストとしっかり演劇やパフォーマンスなるものについて議論したいのだそうだ。そうした模様は、ぼくがディレクターを務めるBONUSサイト上にて随時まとめる準備をしている。そう、この企画にはいつのまにかぼくも一枚噛んでおり、すでに公開しているインタビューなど、この企画をフォローする役回りを担当している。先日も稽古を見に行ってきたところだ。ぼく個人は、役の与えられるのを「待つ」という意味で基本的に受け身の役者が、主体的に演劇を「作る」側に回ったことに興味を惹かれている。さて、その顛末やいかに。
稽古場インタビュー:大谷能生×山縣太一「海底で履く靴には紐が無い」(ウェブサイトBONUS)
2015/05/15(金)(木村覚)
イキウメ「聖地X」
会期:2015/05/10~2015/05/31
シアタートラム[東京都]
世田谷のシアタートラムにて、イキウメの「聖地X」を観劇する。前に見た原発の寓意とも解釈しうるようなイキウメの作品「獣の柱」がとても面白かったので、再び足を運んだが、「聖地X」も人間の記憶/情報/思いがそのまま物質化する場というSF的な設定と超越的な不思議さを共有している。しかも、この作品は日常的な笑いの要素がとても多く、文句なしによかった。特に山田輝夫役の安井順平の演技がツボだった。
2015/05/10(日)(五十嵐太郎)
ふじのくに⇄せかい演劇祭 公演「ふたりの女 平成版ふたりの面妖があなたに絡む」
舞台芸術公園野外劇場「有度」[静岡県]
源氏物語やチェーホフに触発された、唐十郎原作、宮城聰演出の「ふたりの女」を観劇する。冒頭はアングラ感が全開でついていけなかったが、途中から笑いの要素で解きほぐされていく。精神科医としての光源氏、6号室の患者「六条」、そして生霊に憑かれる/錯乱する葵の関係性は、古典の作品をうまく現代的に再解釈しており、感心させられる。晴れた夜の屋外舞台は気持ちがよい。
2015/05/06(水)(五十嵐太郎)
ふじのくに⇄せかい演劇祭 公演「小町風伝」
会期:2015/05/04~2015/05/06
舞台芸術公園屋内ホール「楕円堂」[静岡県]
小野小町の伝説に基づく太田省吾の原作、イ・ユンテク演出、演戯団コリペの「小町風伝」は、日韓を融合した世界を出現させる。緊張感のある最初と最後、コミカルな中間、あるいは建具や家具を持ち込み、左右に部屋を設置したり、解体する場のつくり方などで飽きさせない。磯崎新が設計した楕円堂の空間と外部の関係を効果的に使うラストの演出も印象的だった。
2015/05/06(水)(五十嵐太郎)


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