artscapeレビュー

パフォーマンスに関するレビュー/プレビュー

プレビュー:やなぎみわ『ゼロ・アワー 東京ローズ最後のテープ』

会期:2015/07/18~2015/07/19

京都芸術劇場 春秋座[京都府]

やなぎみわが作・演出・美術を手がけた演劇作品「ゼロ・アワー 東京ローズ最後のテープ」。2013年に神奈川芸術劇場とあいちトリエンナーレで上演された後、2015年1~2月にかけて北米ツアーが行なわれ、今回はその凱旋公演となる。「ゼロ・アワー」とは、太平洋戦争中に日本政府が英語で連合国軍向けに発信していたプロパガンダ・ラジオ番組の名称。アナウンサーとして従事していた日系女性の中でも、特に魅力的な声の持ち主は、南太平洋で戦う米兵たちによって「東京ローズ」と呼ばれ人気を博す。本作はこの事実を踏まえつつ、「東京ローズ」の正体をめぐって対立する2人の男性(日本人の録音技師と日系2世の米軍通信兵)のドラマが展開される。
国内では2年振りの再演だが、北米ツアーと同様の演出で、英語での上演(日本語字幕付き)となる。また、キャストを一部入れ替え、ダンサーを採用することで、より身体性の強い演出になるのではと期待される。太平洋戦争終戦から70年という節目、集団的自衛権をめぐる同時代的危機感、またサブタイトルがベケットの戯曲『クラップの最後のテープ』を示唆するように、戦争や国家とメディア、メディアにのった声と身体性、声の操作・複製・拡散、案内嬢の制服をまとったアナウンサーたちが象徴する均質化・匿名化された女性身体、などさまざまなことを問いかける再演となるだろう。

2015/05/31(日)(高嶋慈)

プレビュー:村川拓也『エヴェレットゴーストラインズ』4バージョン連続上演

会期:2015/07/10~2015/07/12

京都芸術センター[京都府]

KYOTO EXPERIMENT 2014 にて上演された村川拓也の演劇作品『エヴェレットゴーストラインズ』のコンセプトを引き継ぎつつ、新たにつくられた4つのバージョンを連続上演する試み。
「出演者未定の演劇作品」である『エヴェレットゴーストラインズ』の基本コンセプトは、「演出家が出演者候補に前もって手紙を送る」「手紙には、劇場を訪れる時間と観客の前で行なう行為が指示されている」「当日劇場に来るかどうかは受け取った人が決める」というもの。ある一定の上演時間と舞台空間を設定し、入退場時のハケ方と舞台上で行なう行為を指定すること。村川は、演劇の構造的原理を「時空間の共有と行為の指示」へと還元し、裸形にして差し出しつつも、「手紙」という間接的な伝達手段やコントロールの放棄によって、再現(再演)不可能な一回性の出来事へと近づけていく。要請に応じた出演者たちが舞台上に現われる時間と現われない不在の時間が交錯し、上演ごとに揺らぎを伴った不確定性へと開かれていく。
さらに、今回の4バージョン連続上演の試みでは、Ver.A「赤紙」(初演時の出演者が手紙を別の人に渡し、受け取った人はさらに別の人に渡す)、Ver.B「顔」(ある死の記憶を共有する特定のグループ数名の出演者達による上演。一人につき何枚かの指示が配られるが、どの指示に従うかは当人次第)、Ver.C「記録」(記録にまつわる作業集団 “ARCHIVES PAY” との共同制作。あらゆる記録装置を舞台に持ち込み、現場の一回性とその記録によって生まれるもう一つの時間軸を内包させたまま上演が展開する)、Ver.D「集団」(ティッシュ配りの要領で、街に出て大量の手紙を不特定多数の人々に配る。もっとも不確定要素の強いバージョン)が予定されている。
新たな、そして複数の条件づけによって、観客はどのような出来事を体験するのか(あるいは体験できないのか)。スリリングな期待を抱かせるとともに、「参加」を要請する枠組みや従う/従わないの判断を巡って、「作品」に対する責任の所在やある種の権力関係についても考えさせる上演になるだろう。

2015/05/31(日)(高嶋慈)

プレビュー:ロロ『ハンサムな大悟』

会期:2015/06/04~2015/06/14

こまばアゴラ劇場[東京都]

ロロの新作があります。タイトルは『ハンサムな大悟』。80年代まんまなテイストのイラストがフライヤーで踊っています。三浦直之率いるロロとの出会いは『ボーイ・ミーツ・ガール』(王子小劇場、2010)で、そのときは猛烈に感動したのを覚えています。演劇が嘘を語るものだとしたら、その嘘でここまで跳躍できるんだ!と、三浦さんのはちゃめちゃなイメージの広がり方や演劇を信じる強さのようなものに圧倒されたのでした。その後も、何度かロロの舞台を見ましたが、奇跡を信じる無邪気さのようなものはさすがに落ち着いてきて、そのぶん、描かれる世界は豊かになり、しかしまたそのぶん、ぼくの心は少しロロから遠ざかってしまっていました。今作は見に行こうと思っています。結構強くそう思っていて、なぜそう思ったのかは自分でもよくわからないのですが、タイトルに惹かれているのは間違いありません。「ハンサム」であることは、モテモテであることを帰結するとして、モテモテの人生というのは人生における永劫回帰を悟らしめるものなのではないか? ハンサムではないのでぼくには想像しかできませんが、「ハンサム」であることの絶望から大悟はどう突破するのか? そう思うと、『ボーイ・ミーツ・ガール』でロロに一時中毒になったぼくのあのときの気持ちに、「第二章」を与えてもらえそうな気がするのです。

2015/05/31(日)(木村覚)

NICKELBACK NO FIXED ADDRESS TOUR ニッケルバック ノー・フィックスド・アドレス・ツアー

会期:2015/05/30

東京体育館[東京都]

ニッケルバック@東京体育館。ギター・ソロはほとんどがないが、とにかく声と曲がいい。そしてグルーヴ感のあるリズムが、ぐいぐいと引張っていく。最近、足を運んだインペリテリ@ TSUTAYA O-EASTとは、対照的なバンドだった。このときはヴォーカルとベースがほぼ見えない位置だったが、世界最速とされるギターのクリスだけは見える。このバンドなら、それで十分だ。演奏は思っていたよりも、タッピングが多い。

2015/05/30(土)(五十嵐太郎)

読売交響楽団 第80回みなとみらいホリデー名曲シリーズ

会期:2015/05/30

横浜みなとみらいホール[神奈川県]

読売交響楽団@みなとみらいホール。ユーリの指揮によって、それぞれに個性が強い三曲を楽しめた。最初のリムスキー=コルサコフ「シェヘラザード」では、日下紗矢子による異国情緒を感じさせる、艶やかなヴァイオリン独奏の音色。続いて、ラヴェルの「左手のためのピアノ協奏曲」は、タイトルどおり、戦争で片手を失ったピアニストのためにつくられた曲だが、河村尚子が力強く、片手だけを使い、演奏を行なった。そして「ダフニスとクロエ」では、難易度が高いフルートの長いソロである。

2015/05/30(土)(五十嵐太郎)