artscapeレビュー
パフォーマンスに関するレビュー/プレビュー
The Iron Maidens Japan Tour──Metal Respect Party 2015
会期:2015/06/12
The Iron Maidensは、アイアン・メイデンの公式の女性トリビュート・バンドだが、ほとんどが最初の5枚、神アルバムからの演奏だった。彼女らのCDも聴いたが、ライブのほうがいい。ともあれ、昔学生のときにバンドで最もコピーしたあたりであり、アイアン・メイデンだけで2時間近いレパートリーがあったから、どの曲も懐かしい。彼女らのオープニング・アクトが、Mary's BloodとHATTALLICAだった。後者は名前から想像されるように、メタリカのコピーだが、前者のガールズ・メタルバンドは、まさかのツインテール(+赤リボン)×ツインギターで登場した。なにごとかと思いきや、最後にBABYMETALの「イジメ、ダメ、ゼッタイ」をカバーし、納得する。
2015/06/12(金)(五十嵐太郎)
唐組・第55回公演「透明人間」

花園神社[東京都]
ジャンル:パフォーマンス
水を怖がる犬のイメージが、めくるめく飛翔し、戦時下の中国と行き来しながら、水につかれた幻想の世界に誘う演劇である。赤テントの仮設構築物ゆえに、ラストはパンと舞台がはじけて、屋外の空間と一気につながり、爽快な開放感を味わう。水がテーマであり、実際に大量の水も使うだけに、この演目ならば、雨の日に観劇するのも、悪くないかもしれない。
2015/06/07(日)(五十嵐太郎)
山縣太一×大谷能生『海底で履く靴には紐が無い』

会期:2015/06/02~2015/06/14
STスポット[神奈川県]
永らくチェルフィッチュを役者として牽引してきた山縣太一が自ら脚本・演出を務めた本作、間違いなく誰もが驚いたのはその主演が大谷能生であったことだろう。台詞や出演時間を考えると大谷のパフォーマンスは1時間を少し超える舞台の約8割を占めていた。それどころかもっとびっくりさせられたのは、大谷の身体所作が奇妙なメソドロジーを背景にしているということに違いあるまい。初期のチェルフィッチュのようだと形容されもしよう。いやしかし、その根底にあるのは岡田利規の存在以上に、パフォーマーの手塚夏子の存在が無視できない。山縣本人もアフタートークで口にしていることだが、手塚夏子が15年ほど前に同じSTスポットで『私的解剖実験2』という舞台を上演したことは、山縣の役者活動に大きな影響を及ぼしたという。身体のある一部に極端に注目すると、その意識は身体のその他の部位へと波及し、身体は自走の状態になる、手塚はこの作品でそうした発見を「実験」と称して上演した。山縣はこの舞台を見ながら「なんで手塚さんは自分の身体のことがわかるのだろう」と思ったという。ひとつの衝撃が形を結ぶまで15年かかるのか。長いようでも短いようでもある。ともかく、過去は未来を温存しているのだ。役者となった大谷は稽古に6カ月ほどをかけ、独自の「太一メソッド」を体現した。驚くのは「体現」といえるほど十分に、大谷の身体が変身を果たしていたと言うことだ。そこには、手塚を通して感じていた独特のグルーヴがあった。ゆえにこの舞台はダンス公演でもあった。さて、問うべくは、この舞台を現在の観客たちがどう評価するかという点だろう。懐古趣味に映る? そういうことも否定できまい。ようは、この独自の身体性の価値を、今後山縣がどう社会に訴え続けるかにかかっているだろう。まるで山縣の分身とも映る主人公の男は、繰り返し、「ねえ、ぼくの話を聞いてくれる?」と飲み屋で、会社の若手社員2人にそう話しかけるが、無視され、一向に望みは達成されない。しかし、今作で人々は山縣の思いを結構ちゃんと受けとめてくれたはず。だからこそ、今作で終わりにせず、腰を据えて、自分のメソドロジーを継続的に社会に訴え続けてほしい。
2015/06/05(金)(木村覚)
夏果て幸せの果て
会期:2015/06/03~2015/06/09
東京芸術劇場 シアターイースト[東京都]
東京芸術劇場にて、大森靖子×根本宗子「夏果て幸せの果て」を観劇した。コンビニのエアコン修理で邪念を払うバイトたち/彼氏と連絡がつかず、バイトを欠席し、妄想にふける女性=大森/根本の部屋が、上下で同時進行する物語だ。独特の空間演出だが、笑いありで面白い。野外のフェスで大森の歌を聴いたときより、このサイズの室内でアコースティック・ギターだと、もっと強く歌が響く。
2015/06/04(木)(五十嵐太郎)
プレビュー:声が聴かれる場をつくる──クリストフ・シュリンゲンジーフ作品/記録映画鑑賞会+パブリック・カンバセーション

会期:2015/07/20、2015/08/08、2015/9/27
アートエリアB1[大阪府]
映画、舞台演出、美術、テレビ、選挙運動など、多様なメディアと社会領域を横断する活動を行ない、2011年のヴェネチア・ビエンナーレでは、ドイツ館の構想半ばで逝去するも金獅子賞を受賞したクリストフ・シュリンゲンジーフ。多様な社会層の参加と議論の喚起によって成立する彼のアクション/パフォーマンス作品の記録映画を上映する試みが、〈声なき声、いたるところにかかわりの声、そして私の声〉芸術祭III PROJECT(8)「ドキュメンテーション/アーカイヴ」として企画されている。
今回上映されるのは、『友よ!友よ!友よ!』『失敗をチャンスに』『外国人よ、出ていけ!』『フリークスター3000』の4作品であり、鑑賞後にはファシリテーターの企画によって対話の場が設けられる。『失敗をチャンスに』は、シュリンゲンジーフが1998年のドイツ総選挙に向けて設立した政党「チャンス2000」の選挙運動のドキュメンタリーで、俳優、失業者、障害者らが国会議員候補となって、ドイツ全国で街頭演説を行なった。また、外国人排斥を掲げる極右党の政権入りを背景にした『外国人よ、出ていけ!』は、12人の「亡命希望者」をコンテナハウスに居住させ、内部の様子をネット中継し、「観客」の投票によって国外追放する外国人が1人ずつ選ばれていくという過激な仕立てのパフォーマンスの記録である。
「演劇」という虚構のフレームを用いて、社会に潜在する矛盾や差別意識をあぶり出すとともに変革の可能性を提示するシュリンゲンジーフ作品の記録上映を通して、パフォーマンスとドキュメンテーションのあり方のみならず、参加型芸術と現実社会の関係、社会の多声性をいかに拾い上げるか、民主主義、同質性と排除の力学などについて再考する機会になればと思う。
2015/05/31(日)(高嶋慈)


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