artscapeレビュー

パフォーマンスに関するレビュー/プレビュー

ふじのくに⇄せかい演劇祭 公演「例えば朝9時には誰がルーム51の角を曲がってくるかを知っていたとする」

会期:2015/05/02~2015/05/06

池田地区周辺[静岡県]

鳥公園+大と小とレフの路上演劇は、観客が4グループに分かれ、異なるルートで、池田公民館周辺の住宅地、神社、大木などをめぐる。一見、平凡な街だが、リアルな世界は舞台美術では絶対につくることができない膨大な情報量をもち、楽しい体験だった。作品は、どこでも上演可能とすべく、物語の普遍性を意識し、架空の町を重ねていた。ただし、池田町の細部や歴史を掘り下げることで得られる具体性の深さから普遍性に向かう方が、僕の好みである。

2015/05/06(水)(五十嵐太郎)

ふじのくに⇄せかい演劇祭 公演「盲点たち」

会期:2015/04/25~2015/05/05

日本平の森[静岡県]

メーテルリンクの原作による「盲点たち」は、日没後、舞台芸術公園の森に誘導される趣向の野外演劇だった。異常に密接しつつ、ばらばらな方向に並べた椅子は、藤本壮介の空間デザインの手法を想起させる。そして置き去りにされた盲目たちという設定の演劇を、観客は「聴く」。役者は観客のあいだを歩きまわり、盲人にとっての木のような存在になる。これを演出したダニエル・ジャンヌトーは、舞台美術の出身である。以前、彼の演出による「ガラスの動物園」の上演後、トークをさせていただき、空間のつくり方に感心したが、「盲点たち」も空間の効果は抜群だった。

2015/05/05(火)(五十嵐太郎)

ふじのくに⇄せかい演劇祭 公演「聖★腹話術学園」

会期:2015/05/05~2015/05/06

静岡芸術劇場[静岡県]

ふじのくにせかい演劇祭へ。ベルギーのポワン・ゼロによる「聖★腹話術学園」は、ホドロフスキー原作の人形劇である。悪態をつく等身大に近いグロテスクな人形の生々しさもさることながら、俳優たちとの操る/操られる関係が揺らぎ、さらに演劇の場そのものにツッコミを入れるメタ感覚のコメディが面白い。また録音した音楽ではなく、ギターとドラムの生音効果もよい。

2015/05/05(火)(五十嵐太郎)

寺山歌劇★くるみ割り人形

会期:2015/05/02~2015/05/05

座・高円寺2[東京都]

楽塾「寺山歌劇★くるみ割り人形」@座・高円寺で見る。ホフマンの物語が、にぎやかなアングラ・寺山ワールドになっている。確かに力作だと思うが、同じく古典的な作品を素材とした蜷川によるシェイクスピアや、ナカフラによるモリエールでは感じなかった現代とのズレが最後まで気になった。くるみ割り人形では、高齢になった俳優たちが若々しく熱演していたが、無理をしている感もあり、むしろその老いた身体性を生かす演出はできないだろうか。

2015/05/03(日)(五十嵐太郎)

中野成樹+フランケンズ「ラブコメ改」

会期:2015/04/29~2015/05/03

シアターノルン[東京都]

蒲田のシアターノルンにて、中野成樹+フランケンズ「ラブコメ改」を観劇する。彼が得意の誤意訳によって、モリエールの作品「女房学校」の本質を残しつつ、現代の悲喜劇に変えたものだ。俳優陣がつくり出す独特の間もよく、大変に面白い。登場人物のなかで、女性と金が交換されていくプロットは強力である。また、大きなベッドを舞台とする舞台美術も興味深い。

2015/05/02(土)(五十嵐太郎)