artscapeレビュー

パフォーマンスに関するレビュー/プレビュー

劇団、本谷有希子 第16回公演『遭難、』

会期:2012/10/02~2012/10/23

東京芸術劇場シアターイースト[東京都]

劇団、本谷有希子の『遭難、』を観劇する。戯曲としては数年前にテキストで読んでいたが、上演が進むにつれ、かつて文字で読んだ記憶が生身の声でよみがえる不思議な体験だった。いじめ問題が騒がれる現在、少し違う視点の物語が再演された。観客席と舞台を仕切る学校の窓が上昇したり下降したり、わりとリアルな舞台などの美術も興味深い。

2012/10/08(月)(五十嵐太郎)

ニュイ・ブランシュ KYOTO 2012

会期:2012/10/05

京都国際マンガミュージアム、アンスティチュ・フランセ関西、ヴィラ九条山、吉田神社、京都芸術センター、京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA、地下鉄烏丸御池駅、常林寺、京都市内のギャラリー[京都府]

「ニュイ・ブランシュ」とは、フランス・パリで毎年10月の第1土曜日夜から翌朝にかけて行なわれる現代美術の祭典のこと。その京都版として昨年から始まったのが、この「ニュイ・ブランシュ KYOTO」だ。今年は、美術館、画廊、アートセンター、駅、寺社など17会場がエントリー。規模の大きさは本家と比べるまでもないが、昨年の4会場と比べたら大幅な拡大だ。正直、会場を訪れるまでは一種の外国かぶれと思っていた筆者だが、いざ出かけてみると、平日夜の画廊に多くの人が訪れている様子を見て評価が変わった。普段はアートとの接点が少なそうな人たちも大勢来ていたし、あちこちで自然と歓談の輪が広がっていたからだ。予算や運営面等の裏事情は知らないが、きちんと育てればきっと風物詩的なイベントになるだろう。他エリアでも真似をしたらいいと思う。

2012/10/05(金)(小吹隆文)

音楽劇「ファンファーレ」 柴幸男(ままごと)×三浦康嗣(□□□)×白神ももこ(モモンガ・コンプレックス)』

会期:2012/09/28~2012/10/14

シアタートラム[東京都]

あいちトリエンナーレ2013に参加する柴幸男のほか、□□□+白神ももこによる「ファンファーレ」を観劇した。物語の内容は単純だが、実験的な音楽劇である。ソラから生まれた「ファ」と「レ」の音しか歌えない主人公ファーレ。音と台詞と名前が連動して縛ることで、ふるまいに制限=ルールを与えている。音要素になった個。ある意味において、ばらばらでデタラメのキャラクターを、音楽のアンサンブルに仕立てあげる演劇だ。

2012/10/01(月)(五十嵐太郎)

プレビュー:アンドロイド版『三人姉妹』

会期:2012.10.20~2012.11.04

吉祥寺シアター[東京都]

先のレビューで触れた砂連尾理らの公演、あるいはパラリンピック、あるいはEテレの番組『バリバラ』などを見ていると、五体満足なエリート的身体以外の身体を見る面白さに気づかされる。優劣ではなく個性を見るというとありふれた言い回しだが、各身体の性能に注目し、驚いたり、思いがけない魅力に気づかされたりすることは、純粋に楽しい。さて、これが人間ではなく機械の身体であったら、どうだろう。平田オリザがロボット研究者の石黒浩と続けてきたロボット演劇あるいはアンドロイド演劇は、演劇のなかで身体がどう扱われてきたか、そして今後どう扱いうるのかをめぐる大胆なプロジェクトだ。舞台に立つのが役者(人間)ではなくロボットでもいいんだという衝撃は、ロボットの社会的活用といったテーマ以上に、人間とはなにかそして演劇とはなにかを照らし出す。今回のアンドロイド版『三人姉妹』(10月20日~11月4日@吉祥寺シアター)でも、そうした目の醒めるような衝撃を期待したい。

2012/09/28(金)(木村覚)

悪魔のしるし「倒木図鑑」

会期:2012/09/27~2012/09/30

KAAT 神奈川芸術劇場[神奈川県]

建築学科出身の危口統之が主宰する悪魔のしるしの「倒木図鑑」を観劇した。これもKAATという場を生かした建築的な舞台装置(神社に見立てたKAAT、あるいはシーソーの構造によって3人の特別観客席とバランスをとる劇場。そして観客が去り、平行が崩れ、壊れる劇場)や物語の設定、また建物の用途の読み替えや結婚式/葬儀の形式性がおもしろい。一方、筆者にとっては、物語の推進力が弱かった。内容やエピソードが普遍化しづらい内輪の印象があり、やや混乱気味で、もうちょっと整理できたのではかと思う。

2012/09/27(木)(五十嵐太郎)