artscapeレビュー
パフォーマンスに関するレビュー/プレビュー
にっぽんど真ん中祭り
会期:2012/08/24~2012/08/26
久屋大通公演会場、大津通パレード会場ほか[愛知県]
名古屋の久屋大通公園会場にてどまつりを体験したが、人工的につくられた現代の祭りとしてよくシステムが出来ている。セミファイナル、ファイナルなどの段階が設けられ、卒計日本一戦との共通点もある。東海圏だけではなく、北海道、大阪、京都、長野のほか、仙台から宮学/MGのチームも踊りにきていた。セミファイナルになると、それまでのパフォーマンスのレベルにばらつきがなくなり、さすがに各ブロックの二位通過は迫力がある。ダイナミックな動きに統一感があり、もっとも良いと思った「笑゛(じょう)」が、大賞を受賞した。ともあれ、全体に共通する、日本人によるネオジャパネスクの感覚、郷土愛の雰囲気、気合いと根性は、まさにヤンキー的なものである。その直後、アートラボあいちにて、アーティストによる自主運営ギャラリーGOHONの2年間の活動を振り返る展覧会のオープニングに顔を出したのだが、やはり全然人種が違う。
2012/08/26(日)(五十嵐太郎)
チェルフィッチュ「女優の魂」
会期:2012/08/17~2012/08/19
STスポット横浜[神奈川県]
STスポット横浜にて、チェルフィッチュの「女優の魂」を見る。岡田利規の原作をもとに、佐々木幸子が一人芝居を行なう。役を奪ったと逆恨みされ、殺された女優がティッシュ箱を片手に、演劇論のような内容を語りながら、身体はそれとは関係なく、空間を絶えず泳ぐようにたちまわる。そして終盤、死後の世界において、生前に会ったことがある自殺したアーティスト崩れの青年との会話を演じて、美術界vs演劇界もコミカルに描く。
2012/08/17(金)(五十嵐太郎)
チェルフィッチュ『女優の魂』
会期:2012/08/17~2012/08/19
STスポット横浜[神奈川県]
ちょっと不思議な公演だった。『美術手帖』(2012年2月号)に掲載された岡田利規の同名小説を舞台化したという本作は、これまでもチェルフィッチュの公演に出演してきた佐々木幸子のひとり芝居。タイトル通りテーマは「女優」で、主人公は、役を主人公から奪われた女に恨まれ、殺され、魂だけになってあの世に行く。不思議だったのは、女優であるとはそして演じるとはどんなことなのかといった女優論を、女優役である主人公が語りつつ、それを現実の女優が演じるという、輻輳的な状況だけではなかった。いや、確かにそれもまた一興で、「演技とはなにか」を演説しているその女優の演技が実際その演説通りの演技を行なっているのか?なんて問いが生まれるのは、そうした構造が舞台に置かれているからだし、そういう問いが役の女優と演じている女優のあいだの微妙なズレを感じさせるわけで、不思議な気持ちがそうした事態から引き起こされたのは事実だ。しかし、もっと不思議な気持ちにさせられたのは「これはチェルフィッチュの公演なのだろうか」と思わされたことだ。「ズレ」は「チェルフィッチュなるもの」と「舞台上の演技」とのあいだにもあった気がしたのだ。早口でとめどなくしゃべる分、沈黙をともなうあの独特の間がなくなってしまったからか、あるいはしゃべりの雰囲気がたとえば友近を連想させるような独自の魅力を発揮してしまっていたからか、佐々木の演技が「チェルフィッチュそのもの」というより「チェルフィッチュをよく研究したフォロワーのもの」に思えてしまった。演技が下手だということではない。一人二役をこなそうと体をあっちこっちと移動させる振る舞いなど、佐々木の演技には、漫談的面白さが顕著だった。だがそれは「それチェルフィッチュなの?」と目を疑う部分でもあった。会場であるSTスポットの開館25周年記念を飾る「特別プログラム」という名の余興ととらえるべきか、いや、これこそがチェルフィッチュによるチェルフィッチュの正しい活用実例ととらえるべきか、判然としない上演だった。
2012/08/17(金)(木村覚)
鈴木ユキオ『崩れる頭』
会期:2012/08/09
日暮里d-倉庫[東京都]
50分ほどのソロ作品。冒頭から、鈴木ユキオはひたすら踊りまくる。しかし、この踊りは「踊り」と言うにはぎこちなく、いや、そうとはいえ、ぎこちなさは不思議となめらかに進んでゆく。手業は巧みだが身体に障がいがあるゆえに人形の動きに独特の規則性が示される、喩えるならそんな人形使いに操られているような動きなのだ。謎は謎のまま、しかし、必然性を感じる魅惑的な動きが続いた後、不意にプロジェクターが光を放つと、舞台奥に鈴木の背中と思しき皮膚が大写しにされた。皮膚の上には、筋肉かさもなければ漫画の効果線のような線が描かれている。その線は、実際の筋肉のあり方を示唆するというより、未知の身体性を暗示するかのように無邪気に乱舞している。しかし、一層興味深かったのはこの後。鈴木がバケツとコップをもって現われると、コップから水をこぼし、濡れた床を拭く、そんな最中「信じるな」との声が「天の声」のごとく不意に舞台に鳴った。それと柔らかくつながるように、鈴木がバケツをくるりと回すと、水かと思いきや、カラフルな紙吹雪が床に散らばった。「信じるな」とは、目の前の出来事が生じた因果性を常識に委ねるなとの一言だろう、常識的にとらえるなら。とはいえ、そんな常識的な理解も「信じるな」の言葉に一蹴されそうで、そう勘ぐれば勘ぐるほど思考がぐらぐらする。いずれにしても、言葉がこう置かれることで、本公演は「論」の体裁を帯びてくる(今年2月の公演タイトルが『揮発性身体論』だったこととも相まって、そうした読みが誘発される)。そうではあるのだが、しかし「論」というメタレヴェルはダンス公演のなかに混ざり込んでいるわけで、説明の対象と説明の内容とが混交するさまが不思議だった。この不思議な感触が鈴木の新しい一歩を予感させた。
鈴木ユキオ・ソロ公演「崩れる頭」(2012.8.9)Trailer
2012/08/09(木)(木村覚)
プレビュー:鈴木ユキオ『崩れる頭』、黒沢美香&ダンサーズ『大きな女の踊り』、山田せつ子×安次嶺菜緒『アシミネ×ヤマダ=ニドメ』ほか
8月は、フェスの季節。ダンス・演劇関係でもあちこちでフェスしています。すでに「ダンスがみたい! 14──崩れる身体」(7月17日~26日@d-倉庫、8月9日~9月5日@die pratze)が始まっています。注目は、8月9日の鈴木ユキオのソロ『崩れる頭』。グループに振り付ける試行錯誤からちょっと離れて、鈴木のダンスを存分に楽しめる上演になる予感大です。ほかにも8月22日の黒沢美香&ダンサーズのによる『大きな女の踊り』(またタイトルが秀逸!)や、8月11日の山田せつ子と安次嶺菜緒による『アシミネ×ヤマダ=ニドメ』の年齢差のある2人のコラボに期待したい。横浜のSTスポットでも開館25周年記念企画として、ダンス・演劇公演が目白押し。なかでも8月17日~19日のチェルフィッチュ『女優の魂』は必見だろう。この25周年記念企画は、9月以降も舞台音響の第一人者・牛川紀政による企画「地上波──第二波」(9月8日~9日)が大橋可也&ダンサーズの男子3人「ダンシーズ」などの出演で面白くなりそうだし(ダンシーズ/皆木正純×山田歩×唐鎌将仁『WA・GA・SHI』)、10月中旬には山下残の新作上演(『ヘッドホンと耳の間の距離』)も控えているようだ。これも9月の話ですが、横浜ではKAFE9(9月7日~30日@KAAT)も待っています。快快、contact Gonzoなどのほか、We dance 横浜2012も。
鈴木ユキオ・ソロ公演「崩れる頭」(2012.8.9)Trailer
2012/07/31(火)(木村覚)