2018年09月15日号
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artscapeレビュー

都美セレクション グループ展 2018 複数形の世界のはじまりに

2018年08月01日号

会期:2018/06/09~2018/07/01

東京都美術館[東京都]

「都美セレクション グループ展2018」を見る。世界5都市から集まったアーティストたちによる「蝶の羽ばたき」も、社会的役割としての性別とはなにかを考える「インビジブルな存在と私たち」も、グループとしては大きな意義があるが、作品としてピンと来るものがない。だが、最後に見た「複数形の世界のはじまりに」はピンと来た。グループとしての活動はよくわからないけど、そんなことはどうでもよくて、とにかく作品がおもしろい。

たとえば舟木美佳の《一千一秒物語》は、稲垣足穂の同題の文庫本を、間違って洗濯機にでも入れたかのように紙粘土状にしたもの。文字の読めない本の固まり。小野環の《再編/整頓/混沌》は、画集を切り刻んで小さな本や本棚をつくった「箱庭」。《粘土還り》も同じく画集を素材に、改修前の都美術館のまさにここギャラリーB周辺を再構築したもので、入れ子状になっているのだ。井上明彦の《ときの河原》も「この場所」を問題にした作品で、美術館の改修以前の床のタイルの目地に青いテープを貼り、拡張工事の記憶を甦らせている。これらの作品が、ギャラリー中央にしつらえたテラスの周辺にあたかも粘菌のようにはびこっている。このグループの名称は展覧会名と同じ「複数形の世界のはじまりに」というもの。つまりこの展覧会のために集まったグループであり、「ここで行う展覧会」そのものを主題にしているのだ。そこがおもしろいのだ。

2018/06/30(村田真)

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